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「聖地巡礼」としての異世界冒険――『レベル1落第英雄の異世界攻略』

今回取り上げるライトノベルはこちら、気が付けば月が変わってしまいましたが、先月の電撃文庫の新作です。



作者の真代屋秀晃氏は昨年『韻が織り成す召喚魔法 ―バスタ・リリッカーズ―』で第20回電撃小説大賞の金賞を受賞してデビューした作家。デビュー作シリーズも3巻で完結し、今回は第2作となります。

本作はいわゆる異世界召喚系ファンタジーであり、くだらない理由(というか事故)で異世界アストラフトに召喚されてしまった現代日本の高校生・朝霧啓太(あさぎり けいた)……なのですが、この異世界におよそ現代日本とほとんど変わらない学校があり、冒頭は異世界と分からないような学校生活の風景から始まります。
「現代的なものが揃っているファンタジー世界」そのものは今や定番の設定ですが、あえて異世界と分からないような描写から始めるのは意図あってのことと見ていいでしょう。実際、きわめて現代日本的な異世界でなければならない理由があるのです。

実は、啓太の父・(みつる)は16年前にアストラフトに召喚され、邪神を倒して世界を救った英雄です。
息子の啓太の方は、そんな邪神を倒すとかいう使命を帯びて呼ばれたわけではありませんが、元の世界に帰るためには「天空の遺跡(アルガニフタ)という場所に行き、異世界との間を行き来できる魔導書を手に入れねばなりません。
そんなわけで、彼は英雄として「天空の遺跡」に行ったという父・充の足跡を辿るのですが、実はこの世界で充の冒険をもっとも正確に記録した一次資料というのが、充を主役にしたゲーム――RPG――なのです。

かくして、学校のゲーム部でゲームをプレイしては、それに沿って現実にこの世界を「攻略」しに出かけるという日々。
ゲーム中毒で引きこもり気味のリゼラ、あくどい商売をしている商人の娘マレッタ、魔族のハーフで悪を標榜しているナルミエとゲーム部に集うのはどこかに難ありの美少女たち、というのも定番ですね。

ポイントなのは、ゲームの内容が全て現実の舞台と出来事を下敷きにしていて、ゲームをプレイしたらゲーム中に出てきた場所に実際に行ってみることが可能だ、ということでしょう。いわゆるオタク用語でいう「聖地巡礼」の感覚です。
しかも、戦って経験値を溜めることでレベルアップするなどのRPG的システムもこのアストラフトという世界のものであって、RPG風の異世界で基本は部活日常ものを展開、その中で聖地巡礼感覚で現実の冒険あり、という独特の塩梅が本作の売りです。

ちなみに、「レベル1落第英雄」と主人公の弱さを強調するタイトルも今やどれだけ量産されているのかという代物ですが、本作の啓太もこの手の作品の例に漏れず、父譲りのスキルと便利なアイテムを持っていますし、何よりリゼラがかなり強力なスキルを備えていたりします。
ただ、それで「最弱と想わせて実は圧倒的な強さ」を見せるのかと思いきや、それだけあっても戦いに勝てるわけではなかったり、長所を打ち消すマイナスもあったりで、むしろ(意外にも)後半になるほど現実世界の「攻略」の方は停滞していたりしますが。

後、それはそれとして、この1巻の途中で早くもタイトルに反してレベル2までは上がっていたりしますが。まあ1が2になっても些事といえば些事ですけれど。

それから気になるのは、啓太が「RPG」という言葉を知らないほど全くゲームに無知なこと。
まあ、主題となるポップカルチャーに疎遠な堅物の主人公がその分野に引き込まれていく、という構造は同作者の前作と共通しているところですが、ただ父親の充はゲームマニアで、そもそもアストラフトにゲームを持ち込んだ人物という設定。
ろくでなしの父親への反感からゲームを嫌悪している、というのなら分かりますが、「興味ない、知らない」というのはいささか不思議でした。

まあ、そういう点に引っ掛かるものはあるものの、総じてポップで楽しい作品ではありました。
この作者の作品は結構バカバカしい設定も多いのですが、強烈に笑えるギャグというよりも、全体としては「楽しい」青春模様というのがしっくり来ます。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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