オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
未知の地での新生活の始まり――『女子寮の寮長になった俺は、ご当地女子と青春できるだろうか』
タイトルが内容を説明しているので、細々と語る必要もない気がしますが、手短に行きましょう。
本作の主人公、五十嵐春人(いがらし はると)は入学早々、入寮するはずだった男子寮の崩壊に見舞われ、寮長を兼ねて女子寮に住むことになります。
女子寮で共に暮らすことになるのは、各地方から上京してきた4人の美少女たち。

自らも何かと騒ぎを起こしがちながら、「寮長」として彼女たちの新生活を支えるべく奮闘し、仲良くなっていく春人。
役職付きで女子寮に住むことになった男主人公……というと思い出すのは『ラブひな』でしょうか。
共有空間も多いところで共同生活という時点でいわゆる「ラッキースケベ」のネタにも事欠かない設定ですが、本作はその店に関しては標準的なライトノベル並(毎ページのようにサービスシーンのあった『ラブひな』と比較しても仕方ないかも知れませんが……)。
本文以上にイラストは控え目で、エロスのある場面にイラストが付いていないことが多く感じるくらいです。
本作の売りはやはり、方言を話す「方言女子」ということになりましょうか。
とは言え、常時方言が出るのは大阪出身の豊田璃子(とよだ りこ)だけで、他は普段は標準語主体だったり、そもそも口数が少なかったりしますが、それも現実的でしょう。琉球語とか本格的に喋られても分かりませんし、どうしても標準語を話すようになります。そもそも最近の若い世代は方言の度合いも下がっているんじゃないでしょうか。
(とは言え、私も最近、仙台の飲み屋で比較的若いサラリーマンと思われる一団がいかにもな東北弁で喋っているのを耳にしたばかりなのですが)
他にも郷土料理などの地域性を活かしたネタあり、彼女たちが東京観光に出てカルチャーショックを受ける場面ありで、上京して初対面と仲間たちと迎える新生活の楽しさを描いた作品という点では、まずまずではないでしょうか。
ただ……男の主人公が女子寮の寮長になるという展開の強引さに関しては、定番の「黒一点」とでも言うべきシチュエーションを作るための設定として、いずれにせよ多少の無理はやむなしとしましょう。
しかし、入ってカバンを置いた途端に男子寮の建物が崩壊するという場面に至っては、もうちょっと大人しい描写にできなかったのかと思います。建物に入る前に「想像以上の老朽化が発見されたので住むことは不可能になった」と言われる、とかでいけない理由はないと思うのですが。
本作がファンタジーでもスラップスティックでもないだけに、そういう細部の無理がどうにも気になるのです。
さて、目次ページには地域を塗り分けた地図を掲載。これを見ると、続巻では他の地方出身の女子を追加……などと期待したくなります。
設定上、次々と新メンバーを投入するのも難しそうではありますが(普通なら、新学期が始まった後に途中から入寮してくることはありません。あまり早い時期に転校生というのも不自然ですし)、作品のコンセプトとしてはありそうでもあり……

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