オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
具体的な強さを摑むということ――『修羅の門 第弐門 18』
まあ開催期間は昨日までですし、祭が終わってからレポートするのも一歩遅れている感じはしますが……
しかし行ってみてびっくり、今年は講義棟が改築中でした。

例年なら講義棟の下に店舗が並ぶのですがそれができず、毎年やっている店も大幅な配置の変更を余儀なくされました。
もちろん、私の出身である芸術学の店舗も例外ではなく。
そして毎年お馴染みデザイン専攻作の段ボール遊具。今年はとりわけたくさん遊んでいる子供を見た気がします。




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さて、それはそうと今回取り上げる漫画はこちら、いよいよこれで完結の『修羅の門 第弐門』18巻です。
第弐門が、というだけでなく、『修羅の門』という作品自体がこれで完結と見ていいでしょう。
(前巻の感想を含む記事 ただしどこか別のところで触れるつもりだったのか、抜粋にも入れていませんが)
実はこのレビューは先日の読書メーターまとめの抜粋に入れようかと思っていましたが、結構書けることがあったので別にしました。
そんなわけで、まずは読書メーターに書いたレビューの転載から。
海堂晃との決戦、そして完結。結局「海堂はどう強いのか」という具体的イメージのは無印時代から作者にとっても難題だったということか。読者にとってもそうだったからよく分かる。その結論が「空」としての空手。内容的には言ってしまえばシンプルだが、四門まで出し尽くした後で最強の敵との激戦に相応しいレベルの高さと凄まじさは伝わった。最後は宿題回収で精一杯だった感じもあるが相応の内容は見せてもらった。この完結を見届けて悔いはない。『刻』は後どれだけやるのかな……
今更の話になりますが、『修羅の門』という漫画はかなり筋道が通っているというか、それぞれのキャラが「どのように、どれくらい強いのか」かなり明晰な漫画で、その点について読者の間で強さ議論をしても、大きな混乱は比較的少ないはずです。
ただ、無印第一部のラスボスであった海堂晃(かいどう あきら)に関しては別でした。序盤でまだまだこなれぬところも多かったとは言え、「海堂はどう強いのか」、今一つ伝わらないものがあったのです。
第二部の神武館トーナメントで登場した片山右京(かたやま うきょう)に関して九十九は「オレは海堂さんには〔奥義の〕無空波を使って勝ったけど、片山には使わないで勝つ。だから片山は海堂よりは強くない」旨を言っていましたが、これに納得しない読者は多かったのではありますまいか。というか、海堂自身が納得していませんでした。九十九の台詞は「無空波を使わないで勝ってみせる」という宣言としてなら演出は効いていますが、さて客観的な強さの評価として受け止められるかというと……という印象がどうしてもありました。
そして今回のあとがきで明かされる事実、無印の海堂戦は作者自身、描く前にイメージが見えず苦しかったと。読んで妙に納得した次第です。
とは言え、過去はどうあれ、この『第弐門』において新たな強さを得た海堂が片山を再戦で破り、そして九十九に再挑戦する、というのは既定路線だったわけですが、では海堂の「新たな強さ」とはどんなものなのか……やはり、これは作者にとってふたたびの難題となった模様。
元々無印の「宿題」回収を第一課題として始まった『第弐門』ですが、呂家編の終盤から宿題回収が優先している空気は感じていましたし、案の定というべきでしょうか(宿題回収しつつ魅せるものを描くのと、惰性で回収だけするのは全く違います)。
ここで惰性により「海堂は強いんだ」と設定では言い張りつつ具体的な描写でそれを伝えきれずに終われば、「最後は失速して終わった」という印象になったことでしょう。
しかし……作者にすら直前までイメージが見えなかったとしても、いざ本番となると、最後の最後で説得力あるものを描いて魅せてくれました。
さすがに40巻を超える大長編『海皇紀』を引き延ばしやダレなくきっちり完結させという稀に見る偉業を成し遂げた作者、只者ではない、と感服する次第です。
さて、現在『月刊少年マガジン』誌上では自称山田こと不破一族の現が活躍する番外編『修羅の刻』昭和編を連載中。
陸奥の先祖たちの活躍を描く『修羅の刻』は、後は平将門編や塚原卜伝編を描く予定があると聞いた覚えがありますが、どこまでやってくれるのでしょうか。
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