オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
ここからは素直な流れで
昨日など授業で研究発表だったのですが、風邪で喉を痛めて声が出ずマイク使用、さらに途中で何度か喉スプレーを使用して乗り切りました。
そんな体調面の理由もあって、近々書かねばけない原稿もあまり進んでいなかったりするのですが、まあいいでしょう。
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それはそうと、本日は『マガジンSPECIAL』の発売日で、『絡新婦の理』コミカライズの第8話掲載です。
今回はさすがに予想通りの原作第4章、益田パートです。
神奈川県警の警察官を辞めて榎木津に弟子入り志願してきた益田龍一(ますだ りゅういち)青年が、探偵助手の採用試験としてまもなくやって来る依頼人の依頼を解決するよう命じられます。その依頼人というのは、失踪した夫の捜索を依頼する女性なのですが、夫は「目潰し魔」の連続殺人事件に関わっている可能性もあるということで……
1巻ラスト――第4話でこの依頼人の話が終わった後の場面が描かれていましたが、それはそれ、今回改めて省略なしで依頼人の話が描かれ、それゆえに1巻ラストの場面の反復が今回途中に入るという形になっています。
これは、早めに話を畳まねばならなくなったら話を省略する可能性も考慮して、さらに1巻の内に榎木津の顔見せを、という理由で一場面だけを先取りした結果でしょう。話数も余裕をもって構成できそうなので仕切り直し、という面も窺えます。
ただ、原作だと益田は原作『鉄鼠の檻』で初登場、その時に榎木津とも出会っていたのが今作での弟子入り志願のきっかけになっているのですが、この漫画版では順番を変更しており『鉄鼠』のコミカライズはまだです。
そのため、益田のそうした事情説明は当然と言うべきか無し。
代わりに冒頭では「探偵 榎木津礼二郎には一つの噂がある 普通の人間には無い不思議な能力で次々と事件を解決している――と」と世間評的な榎木津の説明が入り(本作のコミカライズから入る読者を想定するなら、この説明は必要でしょう)、その後に益田が「――という訳で、以前から榎木津さんの活躍を拝見していて」と登場する形になっています。

(京極夏彦/志水アキ「絡新婦の理」第8話、『マガジンSPECILA』2016年No.1、講談社、p. 540)
これだけ見ると、益田が榎木津とは初対面で評判を聞いていただけのようにも見えるのですが、「――という訳で」の内実を語っていないので、この後に『鉄鼠』をコミカライズしても筋は通る感じでしょうか。
いずれにせよ、益田は『百器徒然袋』と比べるとまだまとも。
それから、原作だと榎木津は益田に依頼解決を任せて自分は何をするとか一切告げないで去ってしまうのですが、この漫画版では(結果的に人捜しの依頼の方を益田に任せて出て行くのは同じであるものの)「そんな小さな依頼はどうでもいい! 僕が解決するのは目潰し魔事件の方だッ!!」と、刑事事件解決に向かうつもりで去っていきます。
これもやはり、1巻「名探偵には殺人事件が付き物だろうが」「この薔薇十字探偵榎木津礼二郎の出番のようだな!」を見得を切る形で榎木津を登場した影響でしょう。まあ、ストーリーには影響しませんが。
新キャラは依頼人の杉浦美江(すぎうら みえ)女史。
フェミニズムの運動にも参加しており、強気かつ気難しい印象がやや角張った感じの絵にも現れていますが、「所謂美人」だという原作の記述にも合致しており、イメージぴったりです。

(同誌、p. 544)

(同誌、p. 545)
それからこちらは新キャラではなく、『魍魎の匣』以来の再登場ですが、増岡則之(ますおか のりゆき)弁護士。
馬のように顔が長く、目鼻といったパーツも大くてそこに整然と配置されているという原作の記述通り。少し小林よしのりの自画像に似ていますが。

(同誌、p. 564)
2人目の依頼人として増岡弁護士がやって来るも、榎木津は入れ違いで出て行った後、話を聞きつつ相談するために益田は彼と一緒に中野の京極堂に向かう……というところで今回は引きとなります(単行本2巻もここで引きのはず)。
つまり、次回は原作第4章の後半です。二つの依頼、それに榎木津と京極堂の出番を前後に割り振った形で、ちょうどいいでしょうね。
そして、この漫画版ではすでに第5章と第6章前半を消化済みなので、その後はおのずと第6章(美由紀パート)の続きになります。
次に美由紀パートの続きを描けば、もう依頼を受けた榎木津が学院にやって来るところまで一気に繋がりそうですから、薔薇十字探偵社への依頼持ち込み → 以来を受けて動いた探偵が現地に登場という流れで、良い構成かも知れません。
それにしても、結婚することで(ほとんどの場合女性が)改姓しなければならないという問題は(原作通りなのでこのタイミングでのコミカライズはたまたまとは言え)あまりにもタイムリーでした。
榎木津のコメントは的確ではありますがね。人の名前を全く覚えない榎木津が言うとなおのこと説得力があります。
追記ではやや原作ネタバレです。
杉浦女史の探している夫――杉浦隆夫(たかお)は、実はすでに登場済みです。

(同誌、p. 544)
聖ベルナール女学院で賄いのおじさんをやっていました。

(京極夏彦/志水アキ『絡新婦の理 1』、講談社、2015、p. 33)
まあ、こうやって並べて見ると一目瞭然、表情などの印象もあえてそんなに変えていない印象ですが、出番が少なかったので気に留めていなかった人は思い出さないかも知れない、そんな微妙なラインです。
(というか、丸刈りで背広姿の写真の方がチンピラめいて見えるような……)
そもそも次回(つまり原作第4章後半)で彼が聖ベルナール女学院にいることはすぐに判明しますし、さらにこの漫画版ではその後美由紀パートに戻ることで、すぐにあの「賄いのおじさん」にも繋がる流れ。
気付く人は簡単に気付くネタバレはあえて避けず、その代わり引っ張る期間を短くした、というところでしょうか。
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