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『電撃文庫MAGAZINE』Vol. 48

さて、ここ数号は取り上げていませんでしたが、今月は隔月刊『電撃文庫MAGAZINE』の発売日です。



毎号ポスターにフィギュア、あるいは枕カバーやらタオルやらのグッズ……という付録が付いてくるのがお馴染みになっていた雑誌でしたが、今回は少し様子が違います。
まずいつも通りの付録として、『デュラララ!!』クリアファイル(3枚)と『ソードアート・オンライン』ポスターは付いてきます。

付録

クリアファイル

ポスターは縦80cmくらいあります。

ポスター

しかし今回はフィギュアの類はなく、その代わり、100ページを超える冊子『“まるごと1冊”第22回電撃小説大賞受賞作』が付いてきます。

まるごと1冊第22回電撃小説大賞受賞作

毎年、新人賞作品の発売時期である2月には本誌で新人賞作品の特集――作品紹介、受賞者インタビュー、発売される作品の短編掲載――などがあるのですが、今回はそれを雑誌本体から切り離して付録冊子としてまとめた格好です。

今回の受賞作は大賞2本、金賞2本、銀賞2本、メディアワークス文庫賞1本、電撃文庫MAGAZINE賞1本の計8本です。
毎年2月が新人賞作品の発売時期でしたが、去年から2月3月に分かれての発売となったため、同時に電撃文庫から単行本が発売されるのは『ただ、それだけでよかったんです』(大賞)、『ヴァルハラの晩ご飯』(金賞)、『俺を好きなのはお前だけかよ』(金賞)の3本です。『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』(大賞)、『恋するSP 武将系男子の守り方』(銀賞)、『チョコレート・コンフュージョン』(メディアワークス文庫賞)の3本は今月25日にメディアワークス文庫から、そして『血翼亡命譚I ―祈刀のアルナ―』(銀賞)と『俺たち!! きゅぴきゅぴQ ピッツ!!』(電撃文庫MAGAZINE賞)は来月に電撃文庫から発売予定です。
なお、今回は電撃文庫MAGAZINE賞作品も特に雑誌に先行掲載ということは無し。賞の名前は一体何なのでしょうか。

この内で、『恋するSP 武将系男子の守り方』だけは導入部をはじめとする本文の抜粋ですが、他の7作品に関しては書き下ろし短編が『“まるごと1冊”第22回電撃小説大賞受賞作』に収録されています。
ただ……たとえば伏線を張っての謎解き、どんでん返しなどは、短編で長編と同じようにやることはできません。それどころか、勢い任せに飛ばすだけでも、長編と短編では大きく感覚が違ってきます。
いままでの事例から言うと、短編ではその作品の持ち味を十分に出していないように思われる事例も、ままありました。そもそもが新人作家、短編と長編の呼吸の違いも、自分の持ち味もよく分からないまま、とりあえず受賞作の設定とキャラを利用して1エピソード、ということもありそうですし。
キャラと文章の雰囲気を見せておけばとりあえず作品紹介としては良し、と思われているのか――いや、実際そう思っている向きは多いのかも知れませんが。

今回がどうなのかは、当の作品と呼び比べてみないと何とも言えませんが。


さて、そうやって新人賞特集を切り離しても雑誌本体のボリュームは相変わらず――いえ、正確には普段よりやや薄いのですが、それでも約400ページあります。
単行本刊行中作品の読み切り短編あるいは連載もたくさんありますし。

そして、今回から始まった新企画が「妄想N高校」。
特設サイト↓も作られていますが、「電撃の6メディアが合同で」、様々な作家により「理想の」「架空の高校」を作るプロジェクトだとか。

 電撃☆N高校

……と言いますが、「作家の妄想力」により架空の高校を作るのは、企画するまでもなく日常的に行われているでは、と思わずにはいられません(主人公にとって都合のいい世界であっても、それが「理想の」高校なのかどうかという問題は別にするとしても)。
何でも読者投稿のネタも受け入れているようで、それが一つの「企画」としての売りなのかも知れませんが、どうもシェアドワールドのように合同で共通の世界観を作ろうという話ではなく、各作家が「好き勝手に」やるという触れ込みです(少なくとも煽り文句の上では)。
何だか、編集部の企画能力に不安を感じるには十分な話です。

とは言え、読んでみたところ作品そのものは悪くありません。
今回、先陣を切るには入間人間氏と土橋真二郎氏。

入間氏の「学校相談会」は、高校を中退して引きこもっていたが、通信制の高校に行きたいと言い出した息子を持つ父親視点の話でした。イラストはloundraw氏。

学校説明会

しかし本校が沖縄にある通信制の高校って、これはどう見ても角川ドワンゴ学園が今年から開校予定の「N高等学校」なのでは……
たしかに、「電撃☆N高校」のサイトもよく見ると下記の注意書きがあるのですが、

「電撃☆N高校」は、来年4月に沖縄伊計島を本校として設立予定の実際に存在するN高校とは、
「たまたま」名称が一致しているだけで、一切の関係はございませんので、ご留意ください。


親会社が同じグループで時期も同じなのに「たまたま」とは――

続く土橋氏の作品は既刊作品『OP-TICKET GAME』の短編。

OP-TICKET GAME

こちらの設定は現実の高校とはあまり関係なさそうであるものの、やはり――仮想世界での高校生活という一歩も二歩も進んだ形で――通信教育を題材にしており、「あまりネット授業を茶化す感じになるとまずい。私がではなく、なんていうかね……」(p. 63)などというネタがありました。
と言っても、こちらは仮想世界と現実とが何重にも交錯する――内容は「おっぱいチケット」というくだらないものだけれど一種幻想的な――メタ構造の作品で、これも作中作において作中人物を意識したメタネタなのですが。

表向き関係ないと言いつつ、現実の高校と連動した企画になっているのか、作家が勝手に名称の一致を気にしてネタに取り込んでいるのかは定かでありませんが、ただこれがPR作品だとしても、彼らがそれほど素直な作家でないのも事実。入間氏の作品の方も、よく見ると結構不穏なのです。

だいたい、「理想の高校」というキャッチコピーで編集者が考えているのは(具体例を見ても)もっぱら通う生徒視点で「楽しい」「気持ちいい」「刺激的な」もののようですが、そこで親視点の話を書く辺りがすでに捻くれています。とは言え、通常子供が学校に通うには親の同意が必要なもの、「理想の」学校を語るならこの視点は外せないのかも知れません。
「通信制」というあり方に対して、部屋に籠もってネット授業だけ聞いていて教育になるのか、と不信を抱いていたお父さんが息子の肯定的な変化を目にして、その高校を素晴らしいと思うに至る過程の描写は、なかなかの迫真性と味わいがあります。
「やってみたらこんなに素晴らしかった」という進研ゼミの宣伝漫画のノリの、親視点バージョン。

しかし、実のところどのような教育が行われてその成果が出たのかは、謎のままです。説明がどこかお茶を濁しているような不審さもあります。
生活態度に肯定的な変化が出ているのは事実なので、悪くは言いにくいのですが、しかしこの「教育」が長期的に見て息子にとってどんな意義を持つのかも、それこそ後になってみなければ分かりません。
当初は息子の将来のことを気にしていたお父さんが、次第にそうしたことを忘れて、この学校の素晴らしさに乗せられる、悪く言えば洗脳されていく様は、どこか不気味でもあります。

表向きは学校のPRのような、しかし視点を変えるとどこか変だ、というこんな作品を「理想の高校」というお題で書いてしまうセンス、やはり大したものです。

ところで、入間氏の公式サイトでは先月に、「妄想N高校」の宣伝があった後、

その第一弾、2/10発売の「電撃文庫MAGAZINE」にて、
入間さんの連載がスタートです!


とあったのですが、この「学校説明会」には特に「つづく」とは書いていませんし、企画からしてもどんどん次の作家にバトンタッチしていくスタイルだと思われます。
それとも、「その〔=『妄想N高校の』〕第一弾〔が掲載される〕、2/10発売の「電撃文庫MAGAZINE」にて、入間さんの〔それとは別の〕連載がスタート」という意味なのでしょうか。ややこしい。
というのも、今回、入間氏はこの企画とは別に新作小説「お隣さん交流記」を掲載している、つまり2本立てだからです。
イラストは植田亮氏(彼も上述の「OP-TICKET GAME」と掛け持ちです)。「前編」とあるので、前後2話予定でしょうか(だとすると、こちらも「連載」と言うには微妙なところですが……)。

お隣さん交流記

イラストが植田氏で、アパートの隣人との交流……というと『神のゴミ箱』を思い出しますが、こちらは女子大生が主人公で、隣家の不機嫌な女子高生と交流する別物。近年は女主人公・百合作品も目立つ作者ですが、百合というほどになるかどうかは不明です。
ただし、『神のゴミ箱』の主人公の神喜助への言及は少しあります。主人公が神の元彼女なのだろうと思われますが、何にでも名前を書きたがるという癖が出て来なかったのが惜しい。
公式サイトによれば年内に『神のゴミ箱』の続刊を出す意図のようですから、連動でしょうか。

さらに、入間氏の作者コメントによれば前号と前々号に掲載された「サムライ・デッドエンド」の単行本を春に刊行予定、公式サイトではWEB連載に移行した「おともだちロボ チョコ II」(単行本の続き)が2ヶ月半振りに掲載、と新作ラッシュです。『安達としまむら』の6巻もほぼ予定は内定しているようですし。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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