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大人だからこそ、子供を謳歌できる―『お前みたいなヒロインがいてたまるか! 2』

高野川に色々な鳥が集まっていました。
黒いのが(う)、白いのが(さぎ)、そして左端に何羽かいるのが(かも)です。

水鳥

京都の伝統ある蕪の漬け物・すぐき漬けの自販機。
時々見ていたのですが、商品が入っているのは初めて見た気がします。

すぐき漬け自販機

一つ買ってみました。

すぐき漬け

京料理らしく味はそれほど濃くありませんが、なかなか悪くないものです。丸ごとなので食べ甲斐もありますし。

 ~~~

それはそうと、今回取り上げる小説はこちら、女性向け「小説家になろう」作品書籍化レーベルであるアリアンローズから、『お前みたいなヒロインがいてたまるか!』の2巻です。


 (前巻の記事

乙女ゲームの悪役令嬢に転生、という定番中の定番ネタ作品ですが、本作の場合、転生先のゲームの世界も現代日本のパラレルワールドのようなものであるのと、他にも転生者がいる――とりわけ、ゲームのヒロインである美緒もそうで、しかもヒロインであることを鼻にかけるかなり性質の悪そうな性格であるのが味噌。
ちなみに主人公の椿は今のところ、恋愛をする気はさらさらなく、従兄弟でありゲームの攻略対象キャラの一人であった水嶋恭介に対しても、特に恋愛感情はありません。
ただ、美緒は彼女の異母姉妹であり、しかも美緒の母親は椿の母・百合子の実家である水嶋家に対する敵愾心から、百合子を倉橋と結婚させておいて、自分が倉橋の愛人として居座り、本妻である百合子を離れに追いやったという厄介な人物。彼女がまた百合子を傷付けようとするのは確実で――今回も早めに椿の前に彼女を登場させることで、危機は去っていないことを読者に確認させてくれます――、また美緒も恭介を狙っており――しかも、自分はゲームの「ヒロイン」だから恭介が自分のものになって当然と思っている――、あの性格では恭介を幸せにはしそうにない……という訳で、椿は母と恭介を巡るべく、幼少時から策を練っているわけです。

自分の好きな人を取り合っての争いではなく、しかもゲームのヒロインであった美緒が性質の悪い奴で、悪役令嬢の椿が家族を守るべき戦っているという捩れがポイント。
まあ母親と言えど、転生者である椿の中身は他人なのに……というのは転生者仲間である杏奈にも言われていることですが、家族としてずっと暮らしていれば情も湧きますし、そもそも美緒の母の狙い次第では、どこまで被害が及ぶか分かりません。考えて見れば百合子はまだ若く、20代前半で椿を産んでいると思われるのに対し、椿の前世はアラサーOL。
実質年齢では自分より年下の母親が可愛いのでしょう。

転生以外にファンタジー要素はないので、立ち回りは学校内でのポジション作りという地味なものですが、これがなかなかに楽しめます。
小学校入学時から、学年の女子のリーダー格である藤堂千弦(とうどう ちづる)を立てるため、あえて嫌われ者の悪役を買って出て、将来美緒に対抗すべく体制作りに務める椿。
結局、一周回ってやっぱり悪役をやっているわけですが……

今巻の前半3分の2は椿が小学生の初等部編
母・百合子の再婚により椿のハトコとなったドイツ人のレオン(ゲームには登場しないキャラ)との関係、ゲームでは攻略対象キャラであり同級生の佐伯貴臣(さえき たかおみ)との出会いと交流、そして(椿の意図によってですが)敵対していた藤堂千弦との関係の変化、という三つの交流が描かれます。
ただ、佐伯貴臣と千鶴の件については中等部進学直前の回想という形で描くことで、それぞれ初等部の中~高学年の数年間に跨るエピソードをキャラごとに分けて整理しており、叙述の順番に対して時系列は前後します。
まあ、ある意味で分かりやすいのは事実ですが、整理されすぎて味気ない、「あのキャラがここでまた出てくるのか」といった味わいがない感もあります。

そして中等部編に入り、ついに美緒が同じ学園にやって来ます。
様々な勢力の動きがあり、波乱の気配溢れる中等部編ですが……今巻の頁数にして2割ほどは書き下ろしの番外編エピソードになっているので、実際の中等部編は40ページかそこら。本番はこれからです。
番外編はサブキャラ視点でのエピソード2本と、それに椿が学外のスイミングスクールで新たな友達と出会うエピソードなのですが……この最後の「スイミングスクールでの出会い」は、ゲームにおけるもう一人のプレイヤーキャラである夏目透子(なつめ とうこ)の存在についての布石を敷いています。夏目透子編は高等部からのプレイという話なので、彼女がやって来るのは高等部編からと思われますが……

さて、転生物となると、大人としての前世の記憶を持った主人公が幼少時から活躍する話が多いのですが、本作の特徴の一つとして、主人公の椿がまったく大人らしくない、という点があります。
幼少時には庭でターザンごっこをして恭介に心配され、遠足となれば草笛を吹いたり石投げをしたりで道草を食ってばかりの奔放さ。しかも、お菓子の取り分とかしょうもないことで恭介と喧嘩してばかりいます(本人は自分の行動に対して恭介にツッコミをいれさせて楽しんでいるようですが)。
まあ、大人を作るのは中身ではなく役割、子供として遊んでいいとなれば、こんなものかも知れません。むしろ、物理的にも人間関係的にも「してよいこと」と「すべきでないこと」の判断ができている分だけ、「いい」となればギリギリまで羽目を外せている節もあります。通常、子供は加減を知らない分、大人は大事を取って基準を設けておくものですから。
他方で、表向きはきちんとして令嬢、しかも学校では人を見下す悪役をきっちり演じているわけですが。

結局、大人になるというのは内奥の問題というよりは、外見の取り繕い方を覚えることです。
彼女はそれを身に付けているからこそ、二度目の人生を謳歌しつつ、周囲の人間関係を上手く操作して策を巡らせることができるわけです。これも地味ですが、まさしく「転生して前世の知識でチート」の一種でしょう。

それに対し、今回は美緒の前世も(読者には)明かされるわけですが、こちらは前世では14歳で死んでおり、しかも内面的にはもっと幼い上に、転生後も我が儘を通すばかりで成長している気配がありません。
大人の視点から見通しを持った上で子供に戻って二度目の人生を楽しむ前世アラサーと、自分が世界の中心だと思う幼児性から成長してない前世14歳、この対比は残酷でさえあります。

普通なら、このままでは美緒は大したことはできないはずですが、周辺の動きはそのままにはさせておかないようで……
今後の波乱が楽しみです。


ついでながら、セレブに転生してしまったことによる生活感覚のギャップネタがしばしばあるのも、本作の楽しいところ。
こういうネタはどちらかというと、「金持ちの家に嫁いだ」という類の話に多く、通貨単位も生活水準も元より違う異世界転生だと、あまりそういうことは気にしなくなります。ところが本作の場合は転生先の世界も現代日本だけに、「子供の身で簡単に買って貰えるものが前世の給料何ヶ月分」なんてことを主人公が気にしてしまうのですね。

「済めよ! 誰のお金だと思ってんの!? いくらお金があるからって、こんなにホイホイと物を買ったらいけないんだからね! 貯蓄しろ!」
「さすが椿。しっかりしてるな」
 レオンに意図が全く伝わらなかったことで、椿はソファの肘掛けの側面をグーで殴った。
「気に入らなかったか? なら今度は別の物を贈ろう」
「問題はそこじゃないことに気付いてよ。頼むから」
「じゃあ、何なら良いんだ」
「三千円以内の常識的なセンスの物」
「……何も買えないじゃないか!?」
 買えるよ! 駄菓子詰め合わせとか和菓子詰め合わせとか洋菓子類とか買えるだろうが! しかもお釣りまで出るんだぞ!
 (白猫『お前みたいなヒロインがいてたまるか! 2』、フロンティアワークス、2016、pp. 61-62)


食べ物に関してはお金があるなら高いものを食べて贅沢するのもいいけれど、それ以外だと高い物を所持してどうするんだ、という感覚も、何だかすごくよく分かります。



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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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