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本を「読む」とは何か

そう言えば、今年度の『このライトノベルがすごい!』は例年通りの投票の他に、「どんなジャンルのライトノベルが読みたいか」「紙と電子書籍どちらか良いか」等のアンケートも付いていました(結果発表は巻末の総括の所に)。

私としては実のところ、前者の質問に関しては、「あまりライトノベルで流行っていないジャンルが出てきても、クオリティに期待できるかどうかは分からない」という思いがありました。私と同様に考えた人がどれくらいいるのか分かりませんが、だからこの手おアンケートで「ファンタジー」のような流行りのジャンルがなおも人気であっても、「まだこれが求められている」「飽きられていない」と考えるのは早計だということです。
そして、後者に関しては当然、私は紙推しです。
電子書籍は読みにくいし、不便だから……と言うと、下記のような記事がありました。

 まだ電子書籍で消耗してるの?--電子書籍が嫌われる3つの理由を考えてみた

この記事の著者は、「読みにくい」理由を「液晶画面は目が疲れるから」ということに見出し、液晶ではなく「電子ペーパー」ならばその問題を解消できるのではないか(電子ペーパーが目に優しいかどうか、結論は出ていないと断りつつ)、と述べています。
ところが問題は、この後。

 あと、液晶と比べた決定的な弱点は、表示・反応速度が少し遅いこと。タッチ操作に一瞬遅れて画面が切り替わったりするので、マンガなど、ページ送りを頻繁にするようなコンテンツには向いていないといえます。


表示が遅いものをどうやって“読む”のか、と激怒しそうになりましたが、まあここで画面に向かって怒鳴っても始まりません。
この続きを見ると、どうもこの著者は、単に順番通りにページを繰って進んでいくことを「読む」ことだと考えているようです。

 ただし、文芸、評論など、文字ものを読むときは、この「鈍重」さが逆に功を奏する感じもあります。スマートフォンなどと違って、SNSやゲームなどができないのも美点です。


私に言わせれば、「文芸、評論など、文字ものを読むとき」こそ、前に戻って確認したりすることがあるので、ページを繰る頻度は上がります(下線を引いたり書き込みをしたりという可能性を考えた場合、電子書籍はさらに根本的な問題を抱えていますが、それを度外視しても、です)。
0.3秒で100ページでも200ページでもめくることができ、特定のタームが載っているかどうかを確認数だけなら1秒に5ページくらいのペースで目を通すことができる、これは必要条件です(本の装丁や文字組みによって数値に多少の差異はありますが)。
前者の「多くのページを移動する」ことに関しては、電子書籍のスクロールバーでも可能ですが、手先でページを繰る感覚は、スクロールバーよりもはるかに精妙です。ページを開いて手で持った時の感覚で、どのくらい読み進めたかもすぐに分かります。
上の記事では「慣れ」も問題にしていますが、これは明確な利便性の問題であって、「慣れ」だけではありません。

これは私が学術書基準で考えているせいかも知れませんが、少なくともそういう入念な読みに馴染みのある人は少なくはないわけで、論文はWEB上でオープンアクセスになっていても、印刷しなければ読む気にならないという人はたくさんいます。

こういうことを言うと、「紙だって歴史的にはそう古いものではなく、それ以前には羊皮紙等が使われていた。紙もまた新しいものに取って代わられるのは当然だ」といった主張により、紙にこだわる私のような者が「守旧派」だと見なされることがありますが、そうした議論は全て電子書籍が「新しい」ことを前提しています。
しかし、上述のように、紙の綴じ本を「めくる」ことの利点をわざわざ手放すのは逆行であって、少しも「新しく」はありません。スクロールバーを見ていると、巻物を思い出してしまうのですが。
そもそも、しつこいようですが、電子書籍の購入というのは閲覧権を買うだけで、出版社が引き上げてしまえば読めなくなります。
これでは、本を量産することで多くの人が本を「所有する」ことができるようになった活版印刷以前への退行ではありませんか。
グーテンベルグの革命の意味は、未だ理解されていないと実感する次第です。

これで改めて思ったのですが、「読む」と言いつつ紙面を「眺めて」いるだけの人が結構いるように思われます。

だから、「活字離れは起きているか否か」といった議論は、根本的に無意味なのでしょう。
ある人が本を「読んでいる」かどうかなんて、客観的に確認できることではありませんから。
いや、仮に一人の人については検証可能だったとしても、大量の人について調査して統計を取るのは無理です。

まあ、とりあえず電子ペーパーの電子書籍端末など買わなくて本当に良かった、と分かっただけで収穫としましょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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