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幽霊がどんなものか誰が決めた

子供時代に出会った想い出の作品というのはあるものです。
しかも児童文学の良作というのは、実際今読んでも良いものだと思うことがしばしばで……

色々ありますが、小学校の教室の「学級文庫」で読んだ想い出深い作品の一つが、山中恒『ボーイフレンドはエッチなゆうれい』でした。



本作の主人公は小学4年生の女の子・八重垣チカ
3年生の頃から女子のリーダー格である佐藤ユリにいじめられており、4年生に進級してもユリと同じクラスになって憂鬱な思いでした。ところが不思議な男の子が現れ、彼女を守ってくれるようになる……というお話です。

今読むと、まず目次を見て「あれ、このエピソードが最後だった?」と思うくらい、最後は急な幕切れという印象はあります。
ただ、痛快で楽しい話なのは間違いありません。

3回の窓から飛び出して姿を消すなどの「ゆうれい」と思しき男の子の挙動に青ざめていたチカですが、彼が学習塾の勧誘をしていたお姉さんのスカートをめくるなどエッチでいたずら好きな子と知ると何だかおかしくなって、急に親近感を抱いて彼と普通に関わるようになる辺りなど、微笑ましくなります。やっぱり「子供らしさ」というのは強いですね。その子がこの世のものかどうかすらどうでもよくなる力があります。
主人公のチカも、真面目で聡明ないい子で、無口が愛想がなく、今まではいじめっ子に迫られると泣いて顔を伏せていたとありますが、「四年生になったら、もう泣くことだけはやめようと思っていた」(p. 10)とあり、なかなか強気に言い返しているところもあって、好感が持てます。

そして、謎のでべそネタ推し。
目次からして、「むかし、先生もでべそだった」という章タイトルがあって、「それがそんな重大な話題なのか」と意表を衝かれます。
自分のでべそを受け入れて大切にしているところも、チカに芯の強さを感じる所以でしょうか。

何より、「ゆうれい」の男の子がいじめっ子をやりこめるところが痛快です。
冒頭、本文の始まる前にに「ひとをのろわば、穴ふたつ」「いじめっ子のユリには、ふたつどころか、たくさんの穴ぼこがまちかまえています」(p. 3)とあって、やはりそこに主眼がある作品なのでしょう。

ついでに、普段はネコにしか話しかけないけれど、厳しく出ると怖いお祖母ちゃんがまた名キャラだったり。

さて――若干のネタバレと言えばネタバレですが、本作の何とも不思議なところは、件の男の子が「チカのお父さん(今も健在です)の子供の頃の幽霊」だという話。
しかもチカ自身、当初「あんなにはっきり、ものをいうなんて、おかしいわ。ふつう、ゆうれいっていうのは、夜、くらいところに、じとおっと立っているだけのはずなんだけど……」(p. 25)と考えている場面はあれど、「お父さんは子供の時に死んだわけじゃないのに、ゆうれいになるはずがない」という疑問を抱いている節はありません。
しかも、本人が明言するわけではないまま、男の子の正体についてかくのごとき推論に至っていく辺りが、また何とも不思議。

何やら「源頼朝公3歳の時の髑髏」を思わせる話ですが、よく考えてみると、死んだ人間のみが幽霊になるのだと誰が決めたのか。
生き霊というのもありますし(※)。
そもそもよく見ると、本作における「ゆうれい」という表現自体、神出鬼没である、他人には見えない、もちろんどこにも在籍していないetc... の特性を持った存在を指した仮の名称です。
そこに「幽霊とはこういうものであるはず」という固定観念を押し付けることが、多分筋違いなのでしょう。

「その世界で“そういうもの”として成立している事柄をそれとして受け入れて読むこと」をこの作品から学んだような気もします(少し大袈裟ですが)。

※ 鳥山石燕『画図百鬼夜行』では、「生霊」「死霊」「幽霊」の三者を区別しているものの、ただやはり「幽霊」はやはり死者の霊であろうと思われますが。

ちなみにさらなる余談ながら、担任の小林先生(中年男性)が昔は中川姓で「結婚して姓が変わったのかもしれない」という箇所も、女の方が改姓するのが当たり前だと思っていた子供時代にはなかなか難しかったり(私が無知だっただけか)。そこを理解するチカはやはり聡明な子です。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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