オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
傷付き、それでも戦い続ける女たち――『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ 6』
(前巻の記事)
今回、フス派のターボル軍は鉱山都市クトナー・ホラを拠点として十字軍を迎え撃ちます。
ここで十字軍の指揮官として立ちはだかるのは、フィレンツェ商人の息子から神聖ローマ皇帝ジギスムントの家臣に成り上がった軍略家フィリポ・スコラーリ。

(大西巷一『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ 6』、双葉社、2016、p. 12)
彼は騎馬民族クマン人の騎兵部隊を呼び、さらには捕虜とした女たちをも晒し物にして利用する非道な戦術で、ジシュカ率いるターボル軍を苦しめます。

(同書、pp. 16-17)

(同書、p. 54)

(同書、p. 25)
略奪され、嬲り物にされる女たち、その中でも強く戦う女たち……これは本作の変わらぬ主題です。

(同書、p. 29)
何も戦っているのは、ターボル軍の女たちだけではありません。
ターボル軍のフランチェスカは敵に捕らわれて後、クマン人の首領の娘エドゥアのお付きとして取り立てられるのですが、このエドゥアもまた、一族のため「女」としての自分をジギスムントに「売り込み」せねばならぬ立場でした。

(同書、p. 72)
さて、主人公のシャールカはというと、不思議な強さを持って戦い続けてきた彼女ですが、親友のガブリエラを亡くしてからはなかなか立ち直れずにいました。

(同書、p. 38)
あるいはリタイヤか……と思われた彼女の前に現れたのは――
そんな中、ついにターボル軍はクトナー・ホラを放棄して雪の中を散り散りに逃走。
その途中、ジシュカはジギスムントの皇后バルバラを捕縛するのですが、一緒に少人数で遭難する形に。
そこでのジシュカの決断は……

(同書、p. 101)
まだターボル軍に健在の兵たちは多く残っているものの、将の行方不明というのは士気に大きく関わります。

(同書、p. 174)
けれども、そんな瓦解寸前の軍に少女の声が再び力を与える――これもまた、本作ならではの見所です。

(同書、p. 178)
とはいえ、皆がギリギリのところで将の帰還を信じてまとまっていても、当の将たるジシュカがターボル軍を見切るか……という場面が描かれたとあっては、ターボル軍の命運も風前の灯火と思われるのですが……この戦争も終幕間近なのか、少女の声がまたも歴史の流れを動かす時が来るのか、それとも――
騎馬民族など、その時代・地域に存在した様々なモチーフを独自解釈やアレンジを加えて取り込み、活用する手腕、そしてこのハードな展開。今後も目が離せない作品です。
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