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多重構造の事件の幕引きに向けて

時の経つのは早いもので、今月も『マガジンSPECIAL』の発売日となりました。
『絡新婦の理』コミカライズの第16話掲載です。



当然ながら、前回の続きで引き続き原作第8章の内容です。
前回は益田が京極堂を訪れてここまでの展開を報告していましたが、今回そこに京極堂の妹・敦子、ついで青木刑事がやって来て、それぞれの報告をします。

絡新婦の理第16話1
 (京極夏彦/志水アキ「絡新婦の理」『マガジンSPECIAL』2016年No. 10、p. 427)

青木の方はこれまで木場が当たってきた目潰し魔事件の報告ですが、敦子の方は京極堂から依頼された調査事項があったようで……

絡新婦の理第16話2
 (同誌、p. 433)

無差別連続殺人と思われた目潰し魔事件の被害者について、何とも意外な共通点を指摘します。

青木の報告は、第11話までに描かれてきた木場の捜査結果と、その後に得られた関係者の供述です。
木場の友人である川島新造川島喜市の関係、それに彼らが何を思ってどう動いていたのかが明らかになります。

しかし、これと益田の話を突き合わせると、何とも奇妙な事態に。
益田の見てきたことによれば、目潰し魔の被害者たち(正確には2人目の被害者である川野弓栄、3人目の山本純子、4人目の前島八千代)には、聖ベルナール女学院の売春していた生徒グループ「蜘蛛の僕」によって呪われた――という共通点がありました。
他方で青木によれば、川野弓栄、前島八千代、それに5人目の被害者である高橋志摩子は、川島喜市が母の仇と恨んで復讐計画を目論んだ相手である――というのですから。

もちろん正確に言えば、「蜘蛛の僕」は被害者たちを呪っただけ、喜市は嵌めて復讐してやろうとした(殺そうとしたわけではない)だけであって、実行犯はまた別にいるわけですから、二人の人物が同時に同じことをするという不可能事に陥っているわけではありません。
しかし、同じ事件の一連の被害者たちがまったく別の線によって結ばれ、(実行犯はともかく、背後関係に関しては)別の動機が存在している――などということがあろうとは。
京極堂はこの事態を的確に表現します。

絡新婦の理第16話5
 (同誌、p. 434)

この「現実」とはまさしく、「意味」によって構成されたものと言えるでしょう。
同じ事件が異なる意味をもって、それぞれに成立しているのです。

しかも、そうした異なる「現実」同士はまるで別物でありながら、瓜二つと言っていいほどに重なる構造を備えています。

絡新婦の理第16話6
 (同誌、p. 450)

さらに、そうした構造は一人の真犯人によって意図されたものであり、だからこそそれぞれの意味の層は蜘蛛の巣の横糸に喩えられます。
外側の横糸を回っている者と内側にいる者とは、同じ網に関わりながら交わらないのです。
そして、真犯人は全ての中心にいるがゆえに「蜘蛛」に喩えられるわけですが、残念ながら蜘蛛の巣の上にいる者にとっては、どこが中心かは分かりません。

絡新婦の理第16話4
 (同誌、p. 453)

だからといって、人間を思い通りに動かすことなど、できるはずはありません。
それぞれの関係者がそれぞれの思惑でもって動いている、青木の曰く「無節操な計画」を束ねることが、いかにして可能なのか。
それは、関係者を操ろうとするtのではなく、「関係者が都合良く動いた時にだけ機能する」ように、蜘蛛の糸のごとく仕掛けを巡らせておくことによって、です。

絡新婦の理第16話3
 (同誌、p. 452)

原作だとここに、具体例を挙げての解説がありました。
便所が故障していて、だから家の主人も庭で小便をしていた、と思わせるような行動を取ることによって、来客が庭で放尿するよう仕向け、その人間性に対する評価を貶める――という、いささか品のない例ですが。もちろんこの場合も、来客が思い通りの行動をしてくれなければ放置して、別の機会を狙えばいいだけなのです。
この辺の説明もしていたら原作第8章に3話かかわるかな、という判断でしたが、どうやら説明は短縮する道を採ったようで、今回で第8章分は終了です。

そんな周到な「蜘蛛」の計画に対して、現状では実行犯をとにかく検挙していく以外の道はない、自分の出る幕はない――と言っていた京極堂ですが、そこに今川が訪れて、織作家の「憑物落とし」を依頼するのです。

絡新婦の理第16話7

絡新婦の理第16話8

絡新婦の理第16話9
 (同誌、pp. 454-455)

ただし、本シリーズにおいては今までも見てきたように、「呪い」が解けてそれまでの現実が崩壊すること、それまでの歪みから一気に解放されることは、新たな痛みを伴う、辛いことです。
その結果として崩壊寸前の家族を繋ぎ止め、平和に導くことができるとは限りません。
それでも、「事件の解決」ではなく「憑物落とし」の依頼ならば――ということで、ついに京極堂が立ち上がります。

いよいよ「憑物落とし」の始まり……ということで、次回はまた聖ベルナール女学院に戻るはずです。
と言っても、京極堂の合流前に、もう少し美由紀の様子の続きが描かれるはずですが。
原作第9章の消化には何話かかるか――いずれにせよ、ますます楽しみです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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