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第2の長編、シリーズの転機か――『幻影の手術室 天久鷹央の事件カルテ』

今回取り上げる小説はこちらです。

幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫 ち 7-32 nex)



 (前巻の記事

『天久鷹央』シリーズとしては6巻目になりますが、長編『事件カルテ』としては2冊目です。
『推理カルテ』は毎回3~4本の短編からなり、ナンバリングがされていて4巻まで出ていますが、『事件カルテ』はナンバリングなしの模様(ただし、時系列的には普通に『推理カルテIV 悲恋のシンドローム』の続きです)。また、『推理カルテ』と違ってクライマックスを冒頭に先取りで描くことはないなど、フォーマットも異なります。

話の都合上、毎度毎度よく病院で事件が起きることですが、今回の事件の舞台は鷹央たちの務める天医会総合病院ではなく、清和総合病院という別の病院です。
この病院の、手術直後の手術室で、麻酔医が「透明人間と格闘」しているかのような映像が撮影された上、その直後にメスで喉を切られて死んでいるのを発見されました。
さらに、現場の手術室はその麻酔医と手術を受けた直後の患者しかいなかった密室。そのせいで患者に嫌疑がかけられます。しかもその患者というのが他でもない、鷹央や小鳥遊とも馴染みである天医会総合病院の研修医・鴻ノ池舞(こうのいけ まい)だということで……

今まで何度も難事件を解決し、警察を助けてきた鷹央ですが、今回は被疑者が鷹央の知り合いであり、捜査の公平性を保つためということで警察が鷹央の捜査への関わりを拒否。
調査のため、小鳥遊がレンタルで異動させられるというとんでもない展開も。

例によって病院の人間模様も色々、人格に問題のある医者もいて、そういう事情を上手く利用することになったり……

まあ個人的には、メインの密室殺人に関しては、真相の大枠は比較的読みやすかった印象です。
疾患や薬物に関する医学知識を絡めた謎、という今までのパターンへの慣れもあります。

とは言え、短編だと「真相は病気であり、人為による事件はなかった」というパターンもありましたが、さすがに長編でそれは弱いでしょう。
一体どこまでが人為で、誰が何をしたのか、それがポイントです。
その解明に向けて、全編通してバラ撒かれた伏線が最後に収束する様は、さすがに見事な出来でした。
もっとも、情報が不足している部分もないではありませんでしたが。たとえば――これがヒントであるということ自体、若干のネタバレですが――マグカップに「リスのような生物がプリントされ」(p. 198)ているという箇所、その記述だけだと写真なのか絵なのかも分からないんですよね。

――とまあ、細部で気になるところはあるものの、巧みな構成の医療ミステリとして評価できる作品でした。
人の情が分からず論理で武装し、どんな残酷な真実でも突き付けてきた鷹央が、知り合いの鴻ノ池に嫌疑がかかった今回は「助けたい」という感情で動くのも見所の一つ。
次巻からは統括診療部に新メンバーが加わることになりそうで、今巻はシリーズとしても一つの転機になりうるのでしょうか。今後も楽しみです。

 ――

本作『天久鷹央』シリーズはコミカライズの1巻も今月発売予定、こちらも楽しみです。

天久鷹央の推理カルテ (1)


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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