オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
専門知とその前提
さらには先生の学生時代の話で「ずっとヒモムシの話ばかりで、さすがにこれは嫌になった」というのまで…。医学や薬学のような実学では所定の範囲をカバーしなければならないけれど、専門の学問だから…ということだそうですが。
しかし、U字型の穴に棲む何とかいう動物(よく聞いてませんでしたが、ユムシ?)のことは試験に出るので一生懸命覚えたけれど、アワビの分類は分からないというのも、いいのかなあ…という気はしましたが…(※ アワビは巻貝の一種です)。いやお互い様なのか。
まあ本学でも、古代から20世紀までの通史を扱う「美術史」の概説で、先生の専門とする時代の話をばかり聞いていたような気がするなあ、その前後の時代まですぐその時代の話について…等という話は至極当たり前のものです。
大学とは専門知に触れるところだ、広く一通りのことを勉強するのは自分でできる、というのは一理あるでしょう。私も自学自習云々と言ってきました。美術史の授業に関して言うと、全時代を満遍なくやっていればもっと面白いかというと、必ずしもそうとも思えませんし。ただ、あんまり偏った話をされると専門知に触れるのも触れ甲斐がないというのもあるんじゃないかとは思います。
しかし、自分でやっていることというのは結構穴があり得るんですね。「教科書を読んで分かるようなことは」というんですから、一通りの内容を網羅した教科書を指定するくらいのことはどの先生もしていると思いますが、「読めば分かるだろう」と思っていることが読む側からするとそうでもないと言うのもありがちな話ではないでしょうか。
分からないところがあるなら質問すれば良いんですが、自分の「分からないこと」を分かる、というのが一番の問題になってきます。それこそ身に付けるべきスキルだ、と言えばそうなんですが。
さらに本学の場合、美術の研究自体が学際的な分野であるせいか、専門の研究に使うような文献には、「これをよく理解するには相当幅広い基盤がいるぞ」と思えるものもあります(まあ自分の研究内容に関係ない部分まで隈なく理解しようとしなくてもいいのかも知れませんが)。そしてその大半は授業でなど教わらない、というのが正直なところです(私の判断する限り)。
何度か触れましたが、先生から引き受けた翻訳などはさらに大変なものでした。文化財保存科学という学際的な内容で、各分野の専門家による講演でしたから(それぞれの分野の専門的に込み入った話こそされていなかったものの)。授業でやってないも何も、多分未来永劫こんなことを扱う“授業”はありません。
もっと基礎教育の充実した大学にいても、あれを翻訳して人に伝えられる程勉強するのは大変なんじゃないかと思います。
(芸術学3年T.Y.)
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