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美術書の値段と流通

アメリカやイギリスにはペーパーバックという本の形態があって、大変安く売られています。その分紙質や製本は悪く、一度読んだらバラバラになる等とも言われますが。フランスのポッシュ(Poche 小型本とでも言いましょうか)も安いですね。ドイツの本はハードカバーが多くて高い印象がありますが、やはりその手の安いものもあるにはあります。
日本で言うと文庫本に当たるのかも知れませんが、ものによっては日本以上に安く(凄い例ではシェイクスピアの全集が全部で1冊、4ポンドというのもありました。その分、字が非常に小さいですが)、学術書なども結構出回っているのは嬉しいですね。日本では岩波文庫にでも入らない限り、ちくま学芸文庫や講談社学術文庫は通常の文庫より高いというのに…。

まあしかし、美術書などでカラー図版の入ったものはそうは行かず、高いものが多い…と思っていましたが、その限りでもないことに気付いてきました。いわゆる「画集」ではなく、学術的に本格的な文章がメインの本となると需要が少ないせいか、そもそもフルカラーのものなど日本ではあまりお目にかかれないのではないでしょうか。たまにあっても、極端な例ですとパノフスキーの『初期ネーデルラント絵画』などは定価8万円くらいしました(翻訳ものの場合、翻訳の手間の分高く付くのは当然かも知れませんが…)。

やっぱり1つ具体例を載せてみます。
Seeing Through Paintings: Physical Examination in Art Historical Studies (Materials & meaning in the fine arts)Seeing Through Paintings: Physical Examination in Art Historical Studies (Materials & meaning in the fine arts)
(2002/04/01)
Andrea KirshMr. Rustin S. Levenson

商品詳細を見る

この本、日本のアマゾンでは4000円弱のようですが、イギリスのアマゾンでは19ポンドでした(私が先日買った時よりさらに値下がりしているような…)。

この本は西洋絵画技法の概説書で、特定のジャンルや画家についての「専門書」ではありません。必ずしも技法を専門として研究する人ではなく、美術史を学ぶ学生等に広く読んでもらうよう書かれたようです。
とにかく絵画技法に関しては一通りをカバーしてきちんと説明してあり、新しい研究の文献され、さらにカラー図版が豊富(絵画表面の細かいマチエールまで見えるアップ写真は貴重です)という大変素晴らしい本でした。
しかし、絵画技法というまだまだマイナーな分野であることもあり、このクオリティをそのままに日本で翻訳を出すのはなかなか難しいかも知れません(実は、美術書の翻訳では図版が一部カットされたり白黒になったりしている例もままあります)。

…と、そこで思ったのですが、今の電子書籍化の動きはこれにどう影響するでしょうか。カラー印刷に比べれば電子書籍はずっと安くつくのでチャンスだ、といったことはないのでしょうか。
どちらにせよ、元々需要が少ないのでは厳しい気はしますが、そこを「これから広めるチャンスだ」とか言って出版社に売り込む政治力のある人が登場すれば…いや現実味は低いですかねぇ。
                           (芸術学3年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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