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「萌え」考 4 ~萌え属性~

「萌え」考 3の続きです)

今回考えるのは「萌え要素」あるいは「萌え属性」等と言われるものです。
具体的には獣耳だとかメイド服だとか…ひとまず、東浩紀氏による「デ・ジ・キャラット」を例にとっての解説をどうぞ。
萌え記号解説
 (『動物化するポストモダン』、p.66)

さて、ともするとこうした「萌え属性」は「それを備えているのが萌えの対象となるようなもの」と考えられがちですが、我々の理路ではそうして「対象の性質から萌えを規定すること」は否定してきたので、今回もそれを進めます。

まず、東氏はこれらの萌え要素の「データベース」こそが現代のオタク系文化における消費の対象だとしています。

特定のキャラクターに「萌える」という消費行動には、盲目的な没入とともに、その対象を萌え要素に分解し、データベースのなかで相対化してしまうような奇妙に冷静な側面が隠されている。
 (『動物化するポストモダン』、p.76)


私はこういう「冷静な側面」を否定する訳ではない(それどころか、「隠されて」いるかどうかすら怪しいと思う)のですが、それにしてもなぜデーターベースなんかを消費対象にしなければならないのかは、どうもよく分からないままです。

ここで、我々が「萌え」考 2で示した萌えの本性は、主体や対象の性質によってではなく、一方的に見ているような、ある特殊な主体の対象に対する特定の関係のあり方によって規定される感情でした。そして、あくまで「萌えるという感情を抱いている状態」があって、それによって「対象は萌えキャラである」ことになるのでした(予備的「萌え」考参照)。

あくまでこれが出発点で、萌え属性とはそういう状況に結び付いている記号です。もちろん、相手がメイドであっても猫耳であっても、必ずこういう関係のあり方をしているとは限りませんし、逆にいわゆる萌え属性とされるものを搭載していなくても、「萌える」状況は考えられますが、歴史的な経緯があって、ある特定の記号が「萌える状況」を連想させるものとして刷り込まれているのです。
東氏も萌え要素を「それぞれ特定の起源と背景を持ち」「市場原理のなかで浮上してきた記号」(同書、p.66)とします。それ以上の説明はありませんが、この「起源と背景」にあるのが「萌える状況」だと考えることは可能でしょう。

もちろん、どのような状況を連想させるがゆえに萌えるのかは、「萌える」当事者達にも忘れ去られているでしょう。むしろ、それが忘れられることによって、具体的な状況からは切り離されて萌えを喚起する「萌え属性」となり得る訳です。
(「メイドさん=奉仕」といった「萌える理由」を想定することはできますが、下手をするとむしろ不適切な理解を招く可能性もあります)

最後に、もうちょっと『動物化するポストモダン』から。

いまや新しく生まれたキャラクターは、その誕生の瞬間から、ただちに萌え要素に分解され、カテゴリーに登録され、データベースに登録される。適当な分類がなければ新しい要素やカテゴリーが用意されるだけであり、そのかぎりで、もはや、オリジナル・キャラクターのオリジナリティすらシミュラークルとしてしか存在しないとも言えるだろう。
 (同書、p.69、下線は引用者)


実際には九〇年代後半、綾波レイに酷似したキャラクターはコミックでもアニメでもノベルでも、商業ベースでも同人ベースでも、大量に生産され消費されてきた。その広がりをすべて『エヴァンゲリオン』の「影響」に帰着させるのは、あまり賢明でないように思われる。
したがって筆者はこの状況を捉えるには、データベースのイメージのほうが適切だと考える。レイの出現は、多くの作家に影響を与えたというより、むしろオタク系文化を支える萌え要素の規則そのものを変えてしまった。その結果、たとえ『エヴァンゲリオン』そのものを意識しない作家たちも、新たに登録された萌え要素(無口、青い髪、白い肌、神秘的能力など)を用い、無意識にレイに酷似したキャラクターを生産するようになってしまった。……したがって、萌え要素のデータベースは有力なキャラクターが現れるたびに変化し、その結果、次の季節にはまた、新たな萌え要素を搭載した次世代のキャラクターたちのあいだで熾烈な競争が繰り広げられるのだ。
 (同書、pp74-75)


東氏も既存の「データベース」にない「萌えキャラ」が出現し、データベースが書き換えられることは認めています。データベースを書き換えるものは、データベース自体には属していないはずです。まず「萌える」という心理が先にあり、「萌え要素」の「データベース化」は二次的な作業であることは、ここからも不可避の結論ではないでしょうか。
                           (芸術学3年T.Y.)

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