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日本中で需要は何人くらいあるか?

今まで、大学での専門に関わる本のことはあまり触れてきませんでした。
まず、専門分野と思うといい加減なことを言うにも歯止めがかかる…というのもさることながら、美術史も哲学も、(日本では)高校まででは教えられていない分野、つまり専門に学ばなかった人にとっては縁遠いものであることが予想される訳です。が、世にあふれているような入門書を紹介したい気も起こらず(これからそんな気が起こることもあるかも知れませんが)、さりとてあまり本の出ていないようなマイナージャンルでは、紹介したところでオタク以外に需要はあるまいと思った訳です。

が、たまにはそんなものも取り上げてみます。まあ私の専門ではありませんが。
修復からのメッセージ―修復がわかれば美術はもっとおもしろい修復からのメッセージ―修復がわかれば美術はもっとおもしろい
(2003/01)
森 直義

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美術品も時を経て汚れたり、損傷が生じたりすれば、修復が必要になります。この修復というのも、今や(少なくとも西洋では)個人の職人技に頼るというよりも大学院で教えられる「学問」となっている訳です。
その辺の事情説明から始まって、修復の仕事の実情を解説しているのが本書ですが、その手の本は他にもないではありません(しばしば取り上げている歌田眞介先生の著作とか、吉村絵美留『修復家だけが知る名画の真実 (プレイブックス・インテリジェンス)』等)。

ただ、森直義氏はベルギーに留学して学問として修復を学ばれた方で、ヨーロッパの修復理論修復の歴史を取り上げているのが珍しいところで、少なくとも国内で、このように一般向けの本でとなると、他にあまり見たことがありません。
こういうことにも理論というのがあるんですね。汚れを洗浄した時に色の層まで落としてしまったのではないかとか、そもそも時を経た作品には「古色」というものがあるのであって、本当に元に戻すべきなのかどうかとか、修復を巡って何世紀にも渡り交わされてきた議論がある訳です。また、不適切な修復がさらなる問題を招いていると後から判明したりもします。そうした歴史の中で「修復とはいかにあるべきか」という理論も築かれている訳です。
それと(森氏の記述によると)、修復史に関して通史をまとめた手頃なものは、ヨーロッパでもまだないそうで。

さて、当然修復の本となれば豊富なカラー図版付きです。
赤外線写真や紫外線写真で絵画のこんなことが分かるとか、修復されてどのようになったかとか。

(この本が現在手元にないので、別のところから適当な図版を持ってきましたが)
絵画修復ビフォーアフター
左:修復前  右:修復後
 (Knut Nicolaus, The Restoration of Paintings, 表紙)

やはりこういうビフォーアフターがないと。
                           (芸術学3年T.Y.)

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テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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