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生殖原理主義

前回の話に少々絡めて――
生物学では「おばあさん仮説」というのがあります。
つまり、人間の女性は40~50歳で閉経期を迎えて生殖能力を失いますが、その後も長く征きます。こういう動物は人間だけなんですね。チンパンジーもゴリラも閉経すればまもなく寿命を迎えます。ゾウの寿命は60~70年ですが、晩年まで生殖が可能です。
かくして、自分の子を産むことはもうない「おばあさん」が娘の子育てを手伝えることが、人間の社会の発展に貢献した、という仮説です。

とすれば某都知事の「ババアは有害」発言は見当違いも甚だしかった訳ですが、もちろんここで問題になるのは、近年の生物学理論に通暁していないことで都知事を責めることでもなく、逆にだから発言に問題がないということでもありません。

なぜそんなに「生殖能力を持たない」ことが問題になるのかと言えば、少子化恐怖症と関係しているのは明らかでしょう。
しかし、何やら思い出してしまうのは、跡取りを産むことが重要であった時代、子供の産めない女性が「石女(うまずめ)」などと呼ばれて冷たい目で見られたという事実ですね。
とすればこれは封建制の復活なのか、いやむしろ、元々ずっと封建制が生きていただけなのか。

かの「非実在青少年」に関する表現規制の問題も、「非実在」という言い回しがどこかこの問題との関係を感じさせます。相手が非実在じゃ、生殖には結び付かないよ、と(この辺は読み込みすぎかも知れませんが)。

公人の発言ではなくネット上の発言になりますが、ある種の性倒錯に対して「生殖行為に結び付かない」ことをもって批判する意見も時々見てきました。本当にそう思うのなら、性行為の大部分は無駄で、子作りに必要なことだけ5分くらいで終わらせろよ、と思うのですが。
ここで思い出されるのが、キリスト教においては生殖に最低限必要なことを除く一切の性行為が罪とされたことです(別の機会に引用した岸田秀氏の言葉も参照)。オナニーは厳罰の対象でした。

ニーチェにならってこの事態を「世界のキリスト教化=ユダヤ化」と呼ぶべきかどうか、別にキリスト教は特に関係ないのか、それは知りませんが、少子化恐怖の向こうに奇妙な保守化が見えるのは、はたして気のせいでしょうか。
                           (芸術学3年T.Y.)

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テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

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Author:T.Y.
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2012年4月より京都大学大学院。

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