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バカをバカにする者はバカに泣く

世の中くだらないものはたくさんあるもので、いちいちそれに文句を付けようとも思いませんが、小さからぬ問題が関わっていると思うならば話は別です。
以下、あまり愉快な話ではないかと思いますが…

結構前に読んだ本ですが。

下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書)下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書)
(2008/08/09)
三浦 展

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本書の内容についての詳しい解説と批判は、AMAZONのカスタマーレビューを見れば十分な気もしますので、一番気にかかった点のみ。

著者の『下流社会』はベストセラーになりましたが、今の「下流」の若者の分類など、ずいぶんと偏見に満ちたものに見えました。確かにそれだけ見れば「ああ今の若者はアレだなあ」と思うに十分な具体例は出て来るのですが、結局「下流」とは何なのか。どうも、その辺の本音が露呈しているように見えるのですね。

私も何度か大学の非常勤講師をしたけど、非常勤講師なんてするもんじゃないよ。でも、まあ、私も無名時代は毎年やってたんだけどね。
……
しかも最近は学生が教師を評価するっていう嫌な制度があってね。この授業は面白いとか、面白くないとか、あの教師はしゃべりが下手だとか、資料が足りないとか、そういうふうに学生様たちの御要望を聞く制度だ。私なんか、なんでおまえたちに評価されなくちゃいけないんだって思うね。学生なんだから、無知なんだから、だから勉強しに来てるわけで、それがずっと同じことを研究してきた人間を評価するってのは、おかしいだろう?
まあ、つまんない授業で、話も下手な教師にもうちょっと頑張ってもらうためには必要な制度なんだろうけど、でも、私の経験では、この制度を使って学生が書いてくることなんて半分はいちゃもんだ。2ちゃんねるの書き込みと大差ないね。「先生は誰かをえこひいきしている」とか「私の点数が低いのは私と先生の意見が違ったからにちがいない」とか、ゲスの勘繰りみたいなのが多い。
あとは、金払ってるんだからちゃんと教えろよっていう態度が歴然と増えた。
 (三浦展『下流大学が日本を滅ぼす! 』、ベスト新書、2008、pp.93-94)


まあこの辺は、言わんとすることは分かります。多分その通りなのでしょう。しかし…

それもこれも、大学が学生をお客様扱いしすぎるからだと思う。嫌なら来なくて結構っていう態度が大学には必要だと思うね。あめ玉売ってるんじゃないんだから、そんなに学生にペコペコしてどうすんだって思ったから、もう私は非常勤講師はぜーんぶ辞めちゃったよ。おととしなんか1年間で100回公演して、それだけで2千万円くらい稼いだのに、非常勤講師なんてやってらんないよ。
 (同書、p.97)


一体全体これは、「客の相手とかうぜーしやってられねーから、あんなバイト辞めてやったよ」という若者とどこが違うのでしょうか。まあ、やってられない仕事を辞めるのは自由ですが、著書に書くほど自慢になることだと思うのは分かりません。
結局違いと言えば、三浦氏が講演で年間「2千万円稼いでいる」ということしか見当たりません
さらに以下のような記述を合わせてみましょう。

だいたい大学の先生自身、下流っぽい人が多い。自分の好きなことだけやっていたい人たち。で、収入は低くてもいいやという人たち。下流の条件を満たしてる。だから、大学で4年も過ごせば学生がどんどん下流化するのは当然だ。
 (同書、p.128)


つまり裏を返せば、三浦氏の言う“「下流」でない人”とは、“金を稼ぐ人”だということです。
マザー・テレサのような人は「下流」ということになります。

まあ確かに(家で文筆業でもしていた方が儲かると思われるのに)非常勤講師をやるために県境をいくつか越えてバイクでやってきて、授業後も遅くまで学生に付き合っていた先生も知っています。必要以上に自分にとっても面倒の多い授業を展開する先生もいます。
いずれも尊敬に値する方々だと思いますが、そんな人を見習ってしまえば「金を稼ぐ人」にはなれないという意味では、「大学なんかにいたら下流になる」という論には同意します。
私自身もこの歳になるまでまともに働いて稼いだ試しのないろくでなしですから、異論の余地もありません。

ただ、三浦氏自身がここでは「金を稼いではいるけれど、尊敬できない大人」の模範例を提示してしまい、結果として逆方向から「下流化」を勧めているのではないか、という疑問はあります。

最後にもう1つの疑念があります。学生が授業アンケートでくだらない「いちゃもん」みたいなことばかり言ってきたのは、三浦氏が学生をバカだ下流だと見下しているのが伝わったからではないか、ということです。

バカはバカにしたって分かりゃしないだろうと思うのは間違いです。
                           (芸術学3年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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