FC2ブログ

回顧的に計られる“友情の深さ”

別の記事が結構反響を呼んでしまった感もありますが、11月1日の平坂読『僕は友達が少ない』から引き続く考察でもしようと思います。

前回は「上辺だけの友達を作りつつ、本当の友達を探す」という使い分けはおかしいことを示しました。しかし、確かに友情は深いことも、浅いこともあると思われます。この違いは何によるのか。
その例も『僕は友達が少ない』の中には示されています。例えば、「前の学校でつるんでいて、友達だと思っていたけれど、転校して離ればなれになったらそれきりになってしまった」というのは、「どうやら上辺だけの友達だったらしい」と判明した例です。
逆に、隣人部の面々普段から部室に集まって皆で色々やりつつも、お互いに友達だとは思わず、「自分たちは友達ができない」と思っており、だいぶ後になって「あれも楽しかったな」と思うありさまです。特に2人のヒロイン・夜空と星奈は初対面の時から「こんなのと友達になりたくない」と言うほど仲が悪く、いつもお互いに罵りあってばかりいますが、これこそ喧嘩友達というものだと、読者には分かっています

かくして友情というものは、「あれは所詮、上辺だけの付き合いだった」「実はあれが友情だった」と、後から分かるものだと言えるでしょう。
そう考えると、以下のような(これまた実感のこもった)話もよく分かります。

「友達の作り方なんてわからない」という夜空に、小鷹は答えるのですが…

「……普通に友達になろうって言うのは?」
 俺が言うと三日月は「ふん」と鼻を鳴らした。
「そういうのはドラマとかでたまに見るけど、よくわからないのだ。友達になろうと言って相手に承諾されたらその瞬間から友人関係が成立するのか? これまでほとんど喋ったこともない者同士でも? 友達になることを承諾されて以降まったく会話しなくても友達状態は続いてると判断していいのか?」
「……まあ、そういうのがしっくりこないのは俺も同じなんだけどな」
 (『僕は友達が少ない』、pp.38-39)


友達というのは「これから友達になろう」と未来形でできるものではなく、後から発見される、ということです。
同時に付き合いのある2人の相手に関しても、話は同じです。遠くにいて普段やりとりをする機会がなくても、固い友情で結ばれているケースも考えられる以上、話す量の多い相手の方が友情が濃いとは言えません。友情を計って比較する物差しは存在せず、ただ後からのみ「どちらが深い友情だった」と言えるわけです。

突き詰めると、そもそも「友達作りを目的とする」部活というもの自体、何やらおかしいのも、そのせいでしょう。

しかし、「上辺だけの友達」という言葉は、そもそも別の意味で使われていました。つまり「周りから『あいつは友達がいない寂しいやつだ』と見られないよう、仲良くしている相手」という意味です。ここでは最初から相手との関係の実質は問題になっておらず、周囲の視線がすべてです。これを「上辺だけ」というのは適切でしょう。

その後の隣人部の「友達作りのため」の活動を見ていると、ゲームをやるとか演技力を身に付けるとか笑いのネタを用意するとか、要するに提案されるのは「上辺だけの友達」を作るためのものです。しかし彼らは必ず当初の目的を逸れていき、結局そのたびに「上辺だけの友達」を作るためのスキルには縁がないらしいということが示されます。ですが逆説的にも、そういう迷走した活動の1つ1つが隣人部員たちの「本当の友情」となっていくのですね。……本人たちは認めませんが。
ただ、当人たちも「友達作り」というのがどちらの「友達」を求めてのものなのかはっきり分かっておらず、その辺りのズレがまた何とも言えずおかしいわけですが。

さらに、こうして考えると、“話が面白くて人気があり、多くの友達に囲まれているような奴”も、実はそのほとんどは「上辺だけの友達」だったのではないかという可能性も見えてきて(もちろん、そうでない可能性もありますが)、なかなか事態は深いことが分かります。

まあ実際、個人的な話をしても、人間関係で何がいいのかは分からないものです。人から頼りにされるのは良いことなのか、それとも便利に使われているだけか…。いや、役に立たないよりはマシですし、本当にしたくないことは断りますから、いいんですが。

最後に、この『僕は友達が少ない』という作品、今「東大生が一番読んでいるラノベ」という調査結果も、どこでだったかありました。現在のライトノベルのメイン読者層がどの辺なのかもよく分かりませんが、大学では結構人気が出ているようです(本学ではどうか分かりません)。
まあ、大学というところではクラスのようなコミュニティに強制的に放り込まれる機会が少なく、まるで友達ができなかったりする一方で、意外な人間関係ができることもありますからね。そういう経験の上で読むと、人間関係というものに対する洞察を改めて感じて面白いこともあるかと思います。
                           (芸術学3年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

「喧嘩するほど仲が良い」の意味

回顧的に計られる“友情の深さ”に引き続いてライトノベル『僕は友達が少ない』の話で、他の作品の話も交えていきます。 今回はひとまず2人目のヒロイン・柏崎星奈の話から。 金髪で胸の大きな美人、学園理...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告