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周囲との関係で成り立つ評価

今や割と有名になった話ですが、アリの巣の中で、一定の割合で働いていない働きアリがいると言います。そこで働いているアリだけを取り出して巣を作らせると、その中でまた一定の割合のアリしか働かなくなってしまう、と。
人間の社会でも同じようなことが言われます。1つの会社の中で、2割くらいの社員はよく働き、6割は普通に働き、2割は実質働いていない、と。

これは要するに、働くというのも周囲との関係であって、本人の性質のみで決まるものではないからではないでしょうか。
これは単に、「相対的によりよく働いているかはほかとの比較で決まる」といった話ではありません。実質、働いているかいないかも、です。

極端な例として、無人島に漂着して、自力で衣食住を調達しなければならない状況を考えてみましょう。
漂着したのが一人の場合、食べ物を取ったり家を建てたりする仕事をしなくても本人が死ぬだけで、「仕事をしていない」等と評価される機会すらありません。
ではとりあえず、3人くらいがいるとしてみましょう。ここでTV番組を作る仕事をしていても「働いている」とは見なされません。3人の内輪で株取引をしていてもどうにもなりません。

別に贅沢は必要ないとかいう話ではなく、人のやっていることが「仕事」として認められるのもしかるべき社会的文脈があった上でのことだ、ということです。

「働いていない2割の社員」は、本人の資質と考える限り「怠け者」なだけですが、全体との関係で考えた場合、他の8割の社員が「働く」ことが成立するための背景として意義を持っている、という可能性もありえます(あくまで可能性の話、ですが)。

腎臓の細胞のうちで、実際に働いているのは30~40%程度だと言います。だから2つある腎臓のうち片方を人に移植しても普通に生きていけるわけです。
しかし、「働かない細胞に栄養をやるのはもったないから、腎臓を片方捨てる」という人はいませんし、腎臓が片方なくなったら無駄が減って健康になったという話も聞きません。

腎臓の細胞は皆同様の働きをしているので、足りなくなった場合のスペアとして働きうるけれど、人間の場合それぞれの働き方の違いが大きく、「働いている人間」がいなくなっても「働かない人間」は急に代わりにはならない、という意見はあるでしょ。それはもっともです。しかし各自の働きが異質だからこそ、「働かない人間」も一定の役割を持つ、ということもありうるのではないでしょうか。


もちろん、働かない人間を働くよう促すとか、集団の足を引っ張る人間を避けるといったことを否定しているわけではありません。そういう労働倫理の問題は別です。
ついでに自分が穀潰しであることを弁解しているわけでもない……と言いたいところですが、言っても説得力がないので、まあいいです。


実は、交友に関しても同じようなことが言えるでしょう。
「友達がいる/いない」というのが本人だけで成立することではなく、周囲との関係なのはもちろんのことですが、一歩話を進めて、その原因も本人も内在的なものとは限らない、ということです。

確かに人に嫌われそうな性格、資質というのはあります。
しかし、ではそういうところを直したら、その時には“友達ができる”のかというと、経験的に、どうもそうでもないように思われるのです。
友情は回顧的ですから、未来形で「こうすれば友達ができるだろう」という試みは、少なくとも予定通りのところには着地しません。

だいたい、人間がいかに成長しないものであるか、自分の一番どうしようもないところがいかに変わり映えしないかは、自分でも振り返って呆れるくらいですが、周囲の評価や交友関係は変わります。これは不思議なんですよ、本当に。
                           (芸術学3年T.Y.)

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Author:T.Y.
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2012年4月より京都大学大学院。

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