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罪は自分以外の誰のせいでもない

「正義」の話からもう少し続けてみましょうか。

 ……ひとつだけ警鐘を鳴らしておこう。
 二○○三年十二月十五日、茨城県新治郡の中学三年男子(十四歳)が、小学六年の妹(十二歳)を鉄の棒で殴るという事件があった。妹は頭蓋骨骨折の重傷を負った。犯行の同期について、男子生徒は「インターネットで殺人に関する内容のホームページを見ていて殺したくなった」などと供述しているという。
 実は最近、この種の「動機付け」が目立ってきている印象がある。
 二○○三年六月に逮捕された福岡の高校二年生男子(十七歳)は、三十一件もの婦女暴行の容疑を認め、「アダルトビデオや漫画を見て自分もやりたくなった」と供述している。あるいは福島県で十五件もの連続女性暴行等の罪に問われ、二○○三年八月に懲役五年以上十年以下の不定期刑(少年に対する有期刑としては最高刑)を言い渡された十九歳の無職少年がいる。彼の弁護人もまた「ビデオの影響で現実と空想の区別がつかなくなっていた」と述べている。
科学警察研究所研究官であった心理学者・内山絢子(現・目白大学教授)が、一九九七年十月より九八年一月末までに行った調査によれば、性犯罪被疑者である少年の四九・二%が、「アダルトビデオを見て自分も同じことをしてみたかった」という設問に同意したという。
 何が言いたいかおわかりだろうか。もちろん「ネットやビデオが青少年の犯罪を助長している」などということではない。裁判官や条例改正論者が提唱する「有害なわいせつ性」なる社会通念が、青少年の犯罪者に、格好の「いいわけ」を提供しているのではないか。「殺人サイトを見ていたら妹を殺したくなった」といういいわけの破綻ぶりは、それが稚拙な口実にすぎない可能性を強く示唆する。
 メディアが犯罪を助長するという、根拠なく強力効果説は、少年法と刑法三十九条に加えて、加害者に新たな免責と責任転嫁の根拠を与えることになりかねない。直接の加害者は免責されかねず、表現者はその間接な加害性という「仮説」によって罰せられる。これが理不尽な判断でなくて何だろうか。
  (斉藤環『「負けた」教の信者たち ニート・ひきこもり社会論』、中公新書ラクレ、2005、pp.185-186,)


そう、人がつねに外的要因の影響を受けているのは事実。言い訳はいつだって用意できます。
たとえば、電車で女の子に痴漢をして「女の子が可愛いからいけないんだ」ということだってできるでしょう。可愛い女の子の存在が痴漢行為を働こうという欲望を引き起こす一つの「原因」になったことは事実ですから。

イタリアの首相・ベルルスコーニは暴言を言いたい放題で知られた人物で、「イタリアは可愛い女の子が多いからレイプをなくするのは無理だ」と言ったこともあります
しかし、これを「世の中にはとんでもない人がいるもんだ」と他人事のように思っているうちはまだ問題がわかっていないのであって、これはところによっては(しばしば身近なところに)堂々とまかり通っている考えを代弁しているにすぎないのです。
それどころか、「だからレイプ犯を免責する」とか「可愛い女の子を取り締まる」と言っていない分だけ、まだマシな可能性すらあります。レイプに限らず、犯罪を完全になくせないのも事実には違いありませんし。

でも、罪は本人以外の誰に属しているのでもありません。

最後に、表現規制に関係して一冊本を紹介しておきましょう。
 
マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)
(2010/11/16)
長岡 義幸

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この分野の実証的な話は、本書一冊あればとりあえず足りるでしょう。
                           (芸術学3年T.Y..)

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コメント

はじめまして

興味深い記事でした。

ベルルスコーニは、そんなことを言っていたんですか!(苦笑

「マンガはなぜ…」、読んでみたいです。

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