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捜査というもの

学問の武器から続きます)

さて、警察がある事件について、「真相はこうではないか」と見当を付けたとします。
容疑者は途中まで犯行を否認していたが、やがて犯行を認めたとします。
「ついに吐いた」――と、考えて良いのかどうか

そもそも、自白するまでの取り調べはどのようにして行われたのでしょうか。
連日の取り調べになんだから分からなくなって、自分がやったような気がしてきたとか、疲弊しきっているところで「認めさえすれば楽になれるから」と言われて…といった話は、冤罪事件には多々あります。
そもそも、日本国憲法第38条には「黙秘権」というものが定められているわけですが。

警察の捜査の例から始めましたけれど、検察の捜査も問題になっています。昨年の証拠捏造事件も、その一環と言えるのではないでしょうか。

 要するに、自白を無理に引き出すことは、捜査官として到底やってはいけないということです。被疑者が「いやだ、しゃべらない」と言ったらそれで終わり。完全黙秘というのもアリです。……
 権利というのは、単に条文にそう書いてあるからということでは意味がありません。実際の取り調べの現場でしれが守られなくては意味がないということになります。黙秘権があるといってみたところで、利益誘導してみたり瞥見で逮捕すると脅してみたり家族をいじめると脅してみたりして相手は仕方ないからしゃべったというのでは、黙秘権を尊重しているとはお世辞にもいえません。
  (井上薫『「捏造」する検察 史上最悪の司法スキャンダルを読み解く』、宝島社新書、2010、pp.114-115)


とは言え、「被疑者は『いやだ、しゃべらない』と言った」と書いた調書を出したら警察官も検事もクビになりかねないかも知れません

 確かに、世の中すべてきれいごとだけいっていて、巨悪が暴けるのかということもあるだろうと思います。私も多様な価値観を必ずしも否定しません。だから中には、巨悪を暴く特捜部の存在はどうしても必要だ。特に物的証拠が少ない事件(たとえば賄賂の事件などがそうですが)を中心に扱う特捜部としては、少し強引に思えるかもしれないけれど、検事調書の創作くらいは、場合によっては必要なことだという意見があるだろうと思います。
 ……
 しかし、同じことを社会一般で問題にすれば、「まあ、それでもいいよ」「問題はあるけど、結果としてそれでもいいよ」という意見はほとんどないだろうと思います。
  (同書、p.148)


「こうすれば良い」という解答があるとは私も思いませんが、ここにもやはり解釈の問題があるのではないかと思います。
被疑者に限らず、証人が矛盾したことを言っている時、捜査官の仮説に合っている方が「本当」で他は「偽証」とは言えません
一人の人物の証言が確実に矛盾していて、少なくともどちらかが嘘だというのなら、まずは両方嘘という可能性を疑わなければなりません。
それどころか、表面の矛盾はさらに大きな嘘を隠蔽するためのもの、ということもあり得ます。

こういうことはミステリー・マニアにとってはお馴染みのことでしょう。
「いかにも怪しい奴」が犯人だという証拠を得て警察が「やった」と思っているところでどんでん返し――という。
まあ、現実には小説のように見事解決する名探偵はいません。それは事実でしょう。
しかし、現実では警察の見解が真実である――それは違います

つまり、捜査官の仮説を証拠にぶつけていくのではなく、証拠の「内在的な批判」があるか、という問題がここにはあるのです。
もちろん、警察関係者や検察官皆に哲学論議みたいなことをしろとは言いません。
ただ、この辺を少しは考えないとまずいぞ、というのが捏造事件という形で表面化してきたのではないでしょうか。
                           (芸術学3年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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