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語りの妙について

今日から3日間「6月祭」というイベントで、主として体育館でスポーツをやってます。
小規模だし体育館も他の建物から離れてるしで、気付かない人もいそうな気がしますけど。
主催は芸祭委員なんですが、私は委員でありながら6限目のゼミやら何やらであまり関われません。今日は行きましたけど、何をしたのやら…

さて、中野京子『怖い絵3』入手しました。本当は先々週辺りに生協に注文してあったんですが、なぜか取り寄せに時間のかかっていたものです。
怖い絵3怖い絵3
(2009/05/28)
中野京子

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書店では平積みになってましたから、そこそこ人気があるのだと思います。そして第1弾が2007年初版ですから、2年足らずで続刊2冊発行と、かなりの執筆ペースですね。
西洋絵画の様々な作品を取り上げてその「怖い」背景を見ていくというシリーズで、実際見るからに恐ろしい作品もあるんですが、シリーズの最初はドガの《踊り子》だったように、一見すると何が「怖い」のかわからない作品に様々な背景を見て取っていくのがポイントです。
内容は(読者の間でも周知の事実のようですけれど)かなり思い込みの激しい部分はあって、1つ1つの歴史的知識は確かなもので、その学識はさすがですけれど、それを1つの「物語」として綴るに当たっては筆者の見方のバイアスが強力にかかっていますね。中には「信憑性は怪しい」とはっきり認めている話も大胆に引用してます。ですから「怖い」というのも、「そう思えば、そういう面も見て取れる」という程度に受け取った方が良いでしょう。

先生によってかなり立場は違いますけど、一般に大学で“学問”をやるに当たっては「思い込みが激しい」というのは必ずしも良しとされないものです。学問は客観性・妥当性を重んじるものですから。
ただ、こういうのを見ていると「思い込みが激しい」のは必ずしも悪いことばかりではない、と思います。中野氏の専門はドイツ文学で、美術に関してはアマチュアとして「こういう見方もある」という1つの見方を提示しているだけ、ということも自覚されているようですし、何より「読ませる」「面白い」文章が書ける。これは文学者の強みですね。
そう言えば橋本治氏もあくまで素人として「こう思うのだが…」という名人として有名で、『ひらがな日本美術史』というシリーズは美術史家の山下祐二氏にも立派な仕事と認められていました。

ただ、上では主として「『自分の言うことは数ある見方の1つに過ぎない』と自覚すること」「読ませるように書けること」という2点を挙げましたが、そうした点を満たしていなければ、ただ「素人が偏った考えを述べた」だけで価値があるものにはなりません。巷によくある「○○めった斬り!」との類にはその辺が分かっていないものも実に多いですね。(それを言い出すと、ブログなんて何をかいわんや、ですが)

という訳で、この『怖い絵』シリーズ全3巻は「絵を見るとはこういうことだ」と思い込んでしまわない、という条件付きでお勧めします。後、中野氏には『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』(光文社新書)というのもありましたが、これも同様で。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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