オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
擬人化の系譜(?)
しかし「尽力していない、足を引っ張る、しかもそれで対処できていると思い込んでいる」の三重苦なら、話は別です。
例えば日刊ゲンダイより
〔支援物資は〕現地には満足に届いていない。一体どこに“消えた”のか。
「物資は市町村に運ばれた後、各避難所に渡る仕組みでした。しかし、今回はあらかじめ決めていた運搬ルートが混乱し、計画通りに進まなくなったのです。道は廃材でふさがり、避難場所だった公民館なども津波で流されたため、自主的な避難場所がアチコチにできて、手が回らなくなった。さらに運搬車のガソリンも尽き、人手も不足。物資はあっても『届けられない』状況になったのです。釜石港や花巻空港などに物資は届いているのですが……」(福島県のNPO法人ボランティア)
大地震で道路が寸断されることくらい、危機管理のイロハなのに、対応がまったく前進しないのだ。
(……)
軍事ジャーナリストの神浦元彰氏がこう言った。
「地震発生から1週間も経って救援物資が届かないのは異常です。本来は政府がもっと素早く『ガソリンはこのくらいを確保しろ』『医薬品は何々を用意しろ』と指示し、輸送ルートを決める。その上で、避難場所まで誰がどう運ぶのかといった細部に落とし込む。それが明確でないから、個々人が勝手に『これを送ろう、あれを送ろう』と動き、道路は大渋滞、ガソリンも足りない事態になるのです。要するに政府の統制が取れていないのです」
(2011年3月18日)
公正を期して言っておけば、日刊ゲンダイはこの手の攻撃的記事が圧倒的多数です。この論調を信じるべきかどうかは留保が必要でしょう。
後は、「地震発生から1週間も経って救援物資が届かない」現状を「異常」だと思うかどうか、ですね。
~~~
そろそろ話を変えまして、今TVCMはACばかりですね。地震で多くの会社がCMを自粛している中、無料のACばかりが残っているようですが…数種類のCMがヘビーローテンションになっているのでうんざりしてくることも確かです。
「あしなが育英会」と「こころは誰にも見えないけれど、こころづかいは見える~」は嫌でもほぼ覚ええしまう状況です(見てなくても隣の部屋のTVの音声だけで)。
そしてもう一つ…子供に流行って(?)いるらしいのがこれ。
あいさつするたび、ともだちふえるね


(スキャナーの長さを超えたので二つに分割しました)
モノクロですが新聞にも載っていたのでスキャンしてみましたが…TVCMではお目にかかれないフルキャストです。
(フルバージョンの曲と動画はYouTubeを当たってください)
何でマウスだけ二匹いるのかと思ったら、「いただきマウス」と「ごちそうさマウス」でセット、しかも両耳が茶碗になっていて、「いただきマウス」は片方だけご飯が持ってあるとか、妙な凝り方をしてますね。
何だかあまりその動物らしく見えないし、かわいいのかも微妙なキャラ化ですが(一番らしく見えるのは右端のサイでしょうか)…注目は上段左から四番目のマンボウ。
魚の下に人体がついてます

しかし、こうした擬人化は古くから例があったようです。

左は京都市立芸術大学蔵の百鬼夜行絵巻で、左からアサリ、ハマグリ、サザエ。
右は国際日本文化研究センター蔵の百鬼夜行絵巻で、左からサザエとハマグリ。
どうやら、問題の核心は、この「擬人化」いありそうです。私は、「擬人化」という物語・絵画の技法は、妖怪を考えるときにきわめて重要である、と思っています。蛙や兎などの手足をもった動物は、ほぼその姿かたちのまま擬人化することができます。姿かたちはそのままで、それを直立した姿勢にして人間の衣服を着せれば、擬人化された蛙や兎などを造形できます。
ところが、元来頭や手足のない魚介類や植物を擬人化するためには、頭や手足を追加しなければなりません。器物の擬人化も同様です。
(……)
しかも、擬人化しただけのつもりでも、その造形がそれ自体で気味の悪い造形物になってしまうのではないでしょうか。いい換えれば、頭や四肢のある動物たちとは違い、擬人化しただけで幻想化・妖怪化してしまうのです。
(小松和彦『百鬼夜行絵巻の謎』、集英社新書ヴィジュアル版、2008、pp.193-195)
たとえば蛙なら…

(《鳥獣人物戯画・断簡》、平安時代、MIHO MUSEUM蔵)
もう一つ、上のACのキャラで、マンボウの左隣のウナギにも注目してみましょう。こちらは無理矢理な付け加えをしなくても立たせることができています。
やはり体型の問題ですね。
実際、魚の場合は(無理はありますが)、人体を付け加えなくても済んでいるケースもあります。

(《俵藤太絵巻》、室町時代、金戒光明寺蔵)
(芸術学3年T.Y.)
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