FC2ブログ

宣伝と訳者解説

(この記事はしばらくトップに置きます。日々の更新は次から)

私の翻訳原稿が公刊となります。

 『愛知県立芸術大学紀要 第40号』、pp.55-69
  カトリーヌ・ペリエ=ディエトラン「15世紀フランドル絵画の絵画技法(1)」 (翻訳)森田義之・吉野斉志


執筆者たる完成の報を受け取ったのは3月24日のことですが、執筆者には正式発行日の前に渡されると思いますので、図書館に配置されたり論文検索サイトに登録されるのはもう少し先のことになるでしょう。

頭文字Yの方が私の本名です。規定上、執筆者の資格があるのは教員もしくは博士課程の学生ですが、それ以外の学生や外部の人も、執筆者資格のある人と連名でならば名前を出すことができます。しかし聞くところ、学部生で名を連ねたのは、本学では私が初めてでしょう、と。
まったく光栄なことで、チャンス(あるいは無茶振り)を下さった森田先生には感謝することしきりです。その上、訳者後記では(「七ヶ国語の使い手」などと)かなりサービスした紹介までしていただけましたし。

今回翻訳の論文の来歴については森田先生が「訳者後記」として書いておられますが、私も(僭越ながら)独断で内容について若干の解説をさせていただこうと思います――文体もそれらしくして。

 ―――

本論文は、絵画技法の研究を通して、ファン・エイクに代表される「初期フランドル派」についていくつの事実の解明を進めようとするものである。
本論文は三節構成となっており、第一節で初期フランドル派の油彩画技法を概観し、第二節では初期フランドル派の画家を個々に取り上げてアンダードローイング(絵具を置く前に下地に描く下描き)の様式的変遷を検証、そして第三節では第一・二節の分析を踏まえて、技法面での画家同士の影響関係や移り変わり、さらにはその背景にある絵画観そのものの変化の解明を目指す、という構成になっている。今回掲載したのはその内の第一節で、主な内容は先行研究の要約であるが、技法史の教科書の一節となりうる、よくまとめられたものであると思われる。また、三十年前の論文であるため、無論それ以降の研究は反映されていないが、その範囲内では代表的な文献は注に網羅されているおり、その点でもこの分野を学ぶ人間にとって優れた手引きとなるだろう。

しかし、著者の独創性と野心が発揮されるのは第二節以降であろう。アンダードローイングという――赤外線写真によって初めて見ることができるもので、調査が進んでいない作品もあるという事情もあるが――あまり注目されていないところに目を付け、そこから画家たちの絵画に対する考え方までもを浮き彫りにしようとするとは。
さらに、この研究の背景には、初期フランドル派においては画家の素性や影響関係(誰が誰の弟子であり、何の影響下に作風を確立したか、等)についてなおも不明な点が多いという事情もある。これに対して、その名も「技法分析の美術史への寄与」というテーマの国際美術史学会大会で発表された本論文は――その結論が決定的なものとなるわけではないにせよ――、一条の光を投げかけることだろう。

現在この論文を翻訳紹介する意義も、まずは著者・ペリエ=ディエトラン女史のそうした研究過程を示すことにある、と言ってもよいだろう。
絵画のX線写真や赤外線写真を撮ったり、絵具片を化学分析にかけたりといった「調査」は各地で行われているし、その報告書も公刊されているだろう。しかし、そこで得られたデータを読み取り、解釈し、比較照合し、場合によっては文献資料や技法面以外の研究をも参照するという「研究」については、なおも日本への紹介はほとんど進んでいないし、国内で研究を行っている人もきわめて稀であるように思われる。
これから絵画技法研究に携わろうという人にとって、この翻訳が礎の一石にでもなれれば、これ以上の幸いはない。

 ―――

まあこう言いつつ、森田先生の休養により次回以降が公刊できるかどうか不明ですが。
とは言え、私としては上記の理由により感謝することはあれど、文句などはありません。
                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

No title

はじめまして!

翻訳が載るなんてすごいですね!!!しかも7つの外国語をあやつる・・・脱帽です^^

Re: No title

> はじめまして!
>
> 翻訳が載るなんてすごいですね!!!しかも7つの外国語をあやつる・・・脱帽です^^

どうもありがとうございます。そしてはじめまして。

まあ、ある程度は先生のリップサービスですが。
七ヶ国語と言っても、その内でオランダ語とデンマーク語辺りになると「それなりに読める」くらいで、速度も難しいところへの対応能力もだいぶ落ちます。
そして基本的には「読み」専門ですし。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
04 | 2021/05 | 06
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告