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まどか☆マギカ――疲労の積極性

個体化の原理と恐ろしいマスコットに引き続き、「魔法少女まどか☆マギカ」のお話です。
そうそう、このアニメの放送再開のニュースもありました。それまでに一通り語れることは語っておけるといいのですが。

以下ネタバレあり



まず、前々回に述べた、第3話までに語られている設定で、もう一つやや特徴的なところを挙げておきましょう。

「魔法少女の力の源である宝石「ソウルジェム」は魔法を使うと「穢れ」が溜まって黒ずんでくるが、それをグリーフシードに吸い取らせれば「浄化」することができる。」

という箇所ですね。だから魔女と戦ってグリーフシードをたくさん手に入れれば、それだけ大量の魔法を使うことができるという見返りが得られる、そこまで良いでしょう。
問題は、魔法を使うと「魔力が使い減りする」のではなく「穢れが溜まる」という点です。

「使い減りする」のが当然だと思うのは単に、「MP(マジックパワー)」のパラメータが減るというゲーム的発想にこちらが慣れすぎているせいかも知れません。しかし、本作では決して一般的ではない発想が採用されていることは確かでしょう。
つまり、力を使ってしまった状態を「疲労」と呼ぶとすれば、疲労とは単に「力の残量が少ない状態」ではなく「疲労を生むような行動と抵抗する何かが生じている」積極的な状態である、という考え方が採用されていると思われるのです。

これはあながち説得力のないことでもありません。実は現実の筋肉疲労も、筋肉に疲労物質(乳酸)が溜まることによって生じるものだからです。

「疲労により動けない」というのは、単に動くための力がないというより、動くことに対する「積極的な抵抗」が生じている状態ではないでしょうか。普段、我々は自分の身体をほとんど意識せずに動き回ることができますが、疲労や病気によって動くのがままならなくなると、身体の存在が強く意識されてきます。

…とは言え、そう考えればなおさら、疲労は生きている証です。それを「穢れ」とは、随分な言いようではないでしょうか。

が、視点を変えれば、これは実によく分かる話です。
後半で明らかになってくる設定ですが、「穢れ」は「呪い」を生み出します。
そして、魔法少女になったことによる過酷な運命から絶望に包まれて、いわばダークサイドに堕ちていく美樹さやかの心情と、ソウルジェムが穢れに黒く染まっていく様が同調しているのが描かれます。
希望を持ち、祈ることに倦み疲れた時、何もなくなるというよりはむしろ、人を呪いたい心情が頭をもたげてくる――具体的で、現実的な話です。

後半で明らかになる、物語の核心とも言える設定の一つですが、キュウべぇが少女たちと契約して「魔法少女」にしているのは、人間の――特に思春期の少女の――感情からエネルギーを手に入れるためでした。
しかし、ここで最終的に求められている感情は「祈り」ではなく「呪い」の方であったことは、明記しておく価値があります。

「誰かのために祈るほどに、呪いを生んでしまう」 (これもキー台詞)
――祈りの力で願いを叶えて魔法少女になり、魔法少女の力で魔女を倒して人を救う…そうして希望をもたらそうとするほどに、その裏面として呪いを生み出してしまう。そしてある意味では、「呪い」の方が積極的契機として一層強力であって、祈りの奇跡は呪いを根絶しえず、新たな呪いを生むだけ…

何ともペシミスティックな設定ですが、なぜこうなってしまうのか、次回以降に触れていければ、と思います。
                           (芸術学4年T.Y.)

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テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

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まどか☆マギカ――「大人の意見」ですら…

疲労の積極性に引き続き、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の話です。 ちょっと後半を先取りした話もしてしまいましたが、また順次話を追って行きましょう。 ところで、基本的には録画したものを観ている...
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Author:T.Y.
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