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まどか☆マギカ――エゴイズムの孤独

名古屋の地下鉄やバス等でもタッチのみで済むカード「manaca」が導入されていますが、これ、月間の使用金額が多い方が高い率でポイントが溜まるようです。定期券にしてしまうとあまり使わないのが…
駅の売店や周辺の店の買い物にも使えるようなので、大学に持っていく昼食等はそれで買うことにしました。週に数日、数百円ずつでも月2000円ラインは十分なはずですから。
まあハメられているわけですが。

 ~~~

さて、アニメに縁のない人は更新があったことにすら気付いていないかも知れませんが、昨日に引き続き「魔法少女まどか☆マギカ」のお話です。

以下ネタバレあり



第8話「あたしって、ほんとバカ」
身体の痛みを消して無茶な戦いをした上、杏子に助けられると「あんたたちに借りは作らない」と言って、戦いで得たグリーフシードを渡してしまう美樹さやか。まどかにも険悪な態度を取ってしまい、恭介と仁美が仲良く話している(らしい)のを見て、次第に闇に堕ちていくさやか…この回の全体がほぼそういう感じです。
実はまどかのことのみを案じているらしい暁美ほむらでも「まどかを苦しめないために」さやかにグリーフシードを渡して助けようとするのですが、それも拒否されるとさやかを始末しようとし、杏子が助けに入ると言う、先日とは立場の逆転した場面も。

しかしついに――
「穢れ」で黒く染まったさやかのソウルジェムはグリーフシードに変化し、魔女を生み出してしまいます。

キュウべぇ曰く、
「この国では、成長途上の女性のことを『少女』と呼ぶんだよね。だったら、いずれ魔女になるキミたちは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」

魔女を倒して人を守るのだと思っていた魔法少女が、実が魔女になるのだという、絶望的な真相が明らかになります。
ここにはまた、「魔女」と「魔法少女」という言葉を巡るイメージの興味深い(再)反転があるのですが、とりあえずその点はおいておきましょう。


第9話「そんなの、あたしが許さない」
キュウべぇが魔法少女を――結局は魔女を――生み出していたのは、人間の感情からエネルギーを得るためだった、ということが説明されます。この宇宙から枯渇していくエネルギーを補い、宇宙の寿命を延ばすため、と主張するキュウべぇですが…

「この宇宙のために死んでくれる覚悟ができたら、いつでも僕に言ってよ」

とまどかに言い残して去るキュウべぇ。凶悪です

一方で、魔法少女には奇跡を起こしうる力がある、と聞かされた杏子は、さやかを助けようと決心します。
と言っても、どうすればいい、という策があるわけではありませんが、まどかを呼んで「あんな風に(魔女に)なっても、友達の声くらいは覚えてるかも知れないだろ」と、呼びかけをやらせることに。
「あの魔女を倒したら、グリーフシードじゃなくてあいつのソウルジェムが出てくるとか――あたしもそういう愛の正義のファンタジーに憧れてたんだよな。…忘れてたけど」

とは言え、現実は厳しく…再び乱入してきたほむらにまどかを預けると、杏子は魔女になったさやかと共に散ります
しかし、これもすべてはキュウべぇの計略。杏子が死ねば、ほむら一人では近々やって来る大魔女「ワルプルギスの夜」には勝ち目がなく、まどかが魔法少女になるしかないだろう、というわけで……

 ―――

何とも絶望的な話ですが、とりあえずあらすじはここまで。

今回はまず、さやかの事例をもう少し考えてみましょう。
さやかが、よもや自分がゾンビのようなものになっているとは知らず(あるいは知っていてもあえて)恭介にアプローチしていたら? 受け入れられたらどうか、それは分かりません。
ただ、「自分が奇跡を起こして腕を治しんのだ」とは、言っても信じてもらえることはなかったでしょう
いや、仮に恭介が信じたとしても、それで恭介はどうすべきなのか――どうしようもなかったのではないでしょうか。
それが文字通り「魂と引き換えの願い」だったということは知らないとしても、そのお陰でさやかは命懸けで戦う宿命を負ってしまったことは確かでした。
そのお礼に「魂をかけて、さやかを愛する」? ――そんなことはやろうと思ってもできません

奇跡に対して、何を返せばいいのか

ここで、以前の価値と交換を巡る考察で引用した内田樹氏の『街場のメディア論』を引いてみましょう。(前の引用と一部被ります)

 あなたが僕にきらきら光る石をくれた。「あ、ども」と受け取ったけれど、別に要らないので、友だちに「あ、これやるわ」と言ってあげた。何人かの手を経巡った後に、「げ、これはダイヤモンドだ」と気づいた人がいて、「このような貴重なものを、とてもただではいただけません」ということで代価を払うことにした。それが回り回って、僕のところまで届いたこれは僕が退蔵してよいはずのものではないから、さらにあなたに戻される。そういう順序です。
「光る石」の価値は、あなたが僕にそれを贈ったときには存在しない。それに対して返礼せねば「何か悪いことが起こり、死ぬ」と思った人の出現と同時に出現する。贈与において、価値の生成は順逆が狂った形で構造化されていると申し上げているのはこのような事態です。
 (……)
 僕が言いたかったことは、人間たちの世界を成立させているのは、「ありがとう」という言葉を発する人間が存在するという原事実です。価値の生成はそれより前には遡ることができません。「ありがとう」という贈与に対する返礼の言葉、それだけが品物の価値を創造するのです。
  (内田樹『街場のメディア論』、光文社新書、2010、pp.172-183)


しかし、もはや感謝も返礼も不可能になるもの、それが「奇跡」ではないでしょうか
その理由は前回述べた、奇跡の「取り返しのつかなさ」です。
そんな奇跡を人に贈与すれば、人との紐帯を生む代わりに、返って来ないという現実に呪いを生むしかなくなってしまうのでしょう。
それが魔法少女の悲劇でした。

こうして短期間で呪いを生んでしまったさやかに対し、「ベテランの魔法少女」である杏子は、人を犠牲にしてでもたくさんのグリーフシードを手に入れているので、ソウルジェムに穢れを溜めることがなかったというのが、実に対照的に描かれています。
が、そんな彼女も、短期間で大きく印象を変えます。
第6話でさやかを殺そうとしていたのが第7話で態度を変え、さやかを「ほっとけない」と言うようになりましたが、その間にあったのは当然「自分たちが“ゾンビにされたようなもの”だと知った」ことですね。
そのこと自体については気を取り直すのは早かったようで、第7話では現在の状況を「けっこう満足してる」と言っていますが、改めて自分たちの置かれた状況を思い知るに、同じ魔法少女という境遇(しかも、「同じ間違いから始まった」)さやかに対して仲間意識を抱くところがあったのでしょう。
実際、「あんたも自分のためだけに力を使ったらいい」という誘いを断って去るだやかに、杏子は怒鳴ります。
「あたちたちは魔法少女なんだ! 他に仲間なんかいないんだぞ!」

ところで、第9話のサブタイトルは、さやかに呼びかけるようまどかを呼び出しつつも、まどかが魔法少女になることは拒否した杏子の台詞です。「軽い気持ちで首を突っ込むなんて、そんなの、あたしが許さない」。
逆に言えば、さやかの「他人のために戦う」という想いも、「お遊び」ではなく真剣なものだと知れば、認めるところがあったのだろう、という考察もどこかで見かけました。
ひとたび「魔法少女」としての仲間意識があれば、たとえ意見が合わなくとも良かった認めることはできたのでしょう。
意見の内容が合うことではなく、互いの存在を接点をできるのが友情だというのも、以前に考察しました(結局、杏子の方が感化されて初心を思い出すに至るのですが)。

そう、「誰かのためを祈るほどに、その分だけ呪いを生んでしまう」がために「自分のためだけに力を使う」ことにした、その代償は、贈与によって人との紐帯を持つことができないという孤独でした。

杏子が何かと物を食べていたのも、一人で完結している欲求充足の象徴だったのかと思われます。
もちろん、食べ物を作るのも複数の人が関わっていますし、人間の場合「一緒に食事をする」ことも重要な社会生活の要素ですが、(おそらく)不法な手段で手に入れた食べ物をところ構わず貪っている杏子に、「食事を通した人との紐帯」のイメージは希薄です。

しかし魔法少女同士の仲間意識も、さやかが魔女になって、救うこともできず破綻――そんな事態に直面して、杏子は自らのソウルジェムと共に魔女になったさやかを貫きます

「…一人ぼっちは寂しいもんな」
                           (芸術学4年T.Y.)

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まどか☆マギカ――メタレベルの戦いを超えて

前回に引き続き「魔性少女まどか☆マギカ」の話です。 前置きは省略して以下ネタバレ

まどか☆マギカ――魔法少女の「友情」

今回もまた「魔法少女まどか☆マギカ」について、ある程度は語ったことの続きですが、まだ残っていたと感じることをもう少し扱おうと思います。 以下ネタバレあり。
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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