スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

まどか☆マギカ――メタ問題の次元で

我が家のデスクトップはもう本格的に故障かも知れませんね。ほとんどインターネットに接続してのデータ読み込みはできません。しかし別のPCでは接続できるので、サーバ側の異常等ではなさそうです。
という訳で別のPCからの更新ですが、必ずしも私の専用ではないので、もしかするとこれから更新や他ブログの巡回に差し支えるかも知れません。

さて、まどか☆マギカ――あれからリアルタイムで8年が経ったに引き続き、「魔法少女まどか☆マギカ」のお話です。

以下ネタバレあり





結論から言って、「メタ審級の扱い」という観点から見てこの作品をどう評するべきなのか、確たる結論は出ていません。このジャンルにもっと詳しい方なら言えることもあるかと思います。が、そこはそれ、私に読み込めることを。

まず、メタ言及以前の問題として、「時間遡行」という観点から始めましょう。
タイムトラベラーが過去に戻って歴史を改変しようとした場合何が起こるか、という問いに対する答えは、大まかに三通りくらいに分けることができるでしょう。

1. タイムトラベラーが過去で何をしようと、それは歴史に折り込み済みで、何も変わらない。

2. 実際に現在が変わる。たとえば、タイムトラベラーによって自分を生む前の親を殺された人は、元々いなかったことになる。
つまりこうですね。点線が改変前、下の実線が改変後の世界です。
過去改変

3. 改変された世界とされていない世界は、平行世界(パラレルワールド)として分岐する。
平行世界分岐

実際にはこれらの内の複数が同一作品内に共存していることも多いですね。「ある場合には1に、ある場合には2になる、それがこの作品世界での時間だ」と言われたら、反論のしようがありませんから。また、1~3のいずれに当てはまらない独自の時間に関する設定、というのもあります。

さらに平行世界については、「タイムトラベラーが時間干渉すると平行世界が生じる」という設定の他に、「時間移動とは関係なく、常に無数の平行世界が存在(あるいは分岐)している」という設定もありえます
量子力学の多世界解釈に関わることなど、話はいくらでも展開できますが、それはまたの機会にします。

メタ言及性が強いのはやはり、平行世界という設定でしょう。プレイヤーにとっては一つのゲームの複数のルートが「並列に」存在しているイメージですね。

さて、「まどか☆マギカ」においては、3の平行世界パターンであることが11話冒頭で明言されます。
ほむらは平行世界を渡り歩き、本来なら交わるはずのない複数の平行世界の因果の糸をこの世界のまどかに繋いでしまった、とキュウべえが明言していますから。
これは、ほむらと「何回もゲームをやり直すプレイヤー」との類比、そして上記のメタ言及性とも合致した設定と思われます。

が……複数の世界は文字通りに「平行」で交わらないのではなく、まさにほむらが時間遡行を繰り返したことによって、一つに結びつき、まどかは最終回で、その因果の糸を受け取って願うのです。
考えようによっては、ほむらが何回世界をやり直しても、魔法少女と魔女に関わる基本設定は同じだったのを、まどかはその設定――法則――を書き換えてしまったのですから、まどかはほむらよりも「さらに上位」に出たのだ、とも言えるかも知れません(確かに、まどかは最後に「天上」のようなところでほむらに別れを告げます)。しかし、こういう上位とか下位とか言い方自体が、どこか虚しい感もあります。

まあ、ループ物のゲームには、何回かループした後でないとトゥルーエンドを迎えられないものもあると言いますから(残念ながら、私は詳しくありません)、今更この展開でそう目新しいこともないのかも知れません。しかし、新しくない等と言うのは承知の上で見ていきましょう。

まず、この手のメタ言及性についての言説として、東浩紀氏より『YU-NO』の解釈を。

『YU-NO』はギャルゲーであり、構造的にはシナリオ分岐方のアドベンチャーゲームである。(……)菅野(ひろゆき)はそこに重要なアイデアを加えている。この作品では主人公の目的は、単にそれぞれの女性を攻略するだけでなく、各分岐にまたがってばらまかれたアイテムを集め、失踪した父親を探し出すことだとされている。そのために主人公は、ゲームの冒頭で「並列世界」のあいだを移動できる「次元間移動装置」を渡されることになる。ここで「並列世界」とは、それぞれ異なった歴史を歩むパラレル・ワールド、つまり、主人公がそれぞれ異なった女性キャラクターとの恋愛を進めている分岐のことである。
 (……)
 さらに加えて、『YU-NO』は、以上のようなシステム面だけでなく、ドラマ的にも注目すべき特徴を備えている。そのなかでも筆者が注目したいのは、並列世界を移動するごとに主人公の記憶が部分的に失われる、という奇妙な設定の存在である。
 この設定は作品のなかでは必然性が低く、むしろほかの設定と齟齬を起こしている。たとえば、並列世界の移動によっても集めたアイテムは失われないので、記憶だけが失われるのはどう考えても理不尽だ。普通に考えて、自分がもっているアイテムを見れば、記憶も回復しそうなものである。それに実際に、ほかの並列世界で手に入れたアイテムを使わないと薦めないシナリオ展開もあるので、この矛盾は決定的だと言えるだろう。制作過程に沿って考えれば、これは明らかに、『YU-NO』がギャルゲーであり、同時にメタギャルゲーとして作られたことで生じた矛盾である。ギャルゲーである以上、主人公は分岐のなかの世界を唯一の運命として辿らねばならないし、メタギャルゲーである以上、主人公はその世界が数ある分岐のひとつであることを自覚しておかねばならない。
 (東浩紀『動物化するポストモダン オタクから見た現代社会』、講談社現代新書、pp.162-167)


東氏は当然、この「並列世界」をメタな設定とし、一つの分岐の中を生きる(作品内の審級)と分岐マップ(メタ審級)が並列に存在していることこそ「ポストモダン」的であって、この矛盾も単なる失敗ではなく、「ポストモダンの特徴をあまりにきれいい反映した結果」だと考えます。

これと比べると明らかなことですが、ほむらは前で世界で得たものを何も失いません。記憶はもちろんのこと、その他の能力も。第1話で登場した時(5順目)には勉強も運動も完璧にこなしていたのが、10話の最初では退院したばかりのブランクがあっていずれもさっぱりな様子が、あえて対比的に描かれていますし、魔法少女としても力を積み立てていきます。
さらに、ほむらがこの1ヶ月を5回に渡って生きてきた成果はほむらの能力のみならず、まどかに繋がる因果の糸としても蓄積され、それを受け取ったまどかが最後に巨大な願いを叶えるのです。

つまりこうです。
平行世界 順に生きる
赤線がほむらの生きてきたラインです。しかしこれはもはや「ループ」でも「平行」でもなく、一本線なのではないでしょうか

当たり前のことですが、実はプレイヤーであっても、複数回のプレイは「一本の時間軸上で」順番にしかできません
さて、複数の世界を「平行」「並列」と言うことができるのは、上位の世界の中で並置する限りにおいて、です。しかし、本当はプレイヤーも上位の審級から見下ろしているのではなく、プレイする限り、ゲームの世界を「中から生きる」しかないのではないでしょう――ちょうど、「マイトガイン」のブラック・ノワールが「三次元人」でありながら「二次元世界(アニメの世界)」では「一つの駒」に過ぎなかったように(4月18日の記事参照)。

生きられた世界は一つです。
「私」と「あなた」は違う世界を生きているかも知れません。しかし、「私」が「同時に二つの世界に生きている」ということはありません。そして、「私の世界」と「あなたの世界」にもし何の接点もなければ、その二つの世界を見下ろして「二つの世界がある」という視点は存在しないでしょう。が、接点があるのなら、やはり両者に共通する「底」として「一つの世界」があるはずです。

「まどか☆マギカ」に戻ると、10話時点で「ほむらが勝つか運命が勝つか」という視点で見ることは、「メタレベルの戦い」を考えることであると同時に、ほむらを主人公にしてしまうことでした。
まあもちろん、「最後に概念となって世界を救う」というのが「主人公らしい活躍」なのかは大いに問題ですが、あくまでループしていたのが副主人公のほむらであって、主人公のまどかが受け継ぐという形になったことが、同時に「メタ階層の中に並置される複数世界」ではなく「一つの世界」を示すことになったわけです。
巧みな構成だった、と言っておきたいと思います。
                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

まどか☆マギカ――正義の地平から

博物館実習を申し込んでいた美術館から返信が来ました。 つい大学受験の時の感覚で「薄い封筒だからダメかな」等と思いましたが(大学の場合、合格時には入学書類が入っているので封筒が分厚くなります)、そ...

まどか☆マギカ――斎藤環氏の解釈

ゲームラボ 2011年 06月号 [雑誌](2011/05/16)不明商品詳細を見る 私はあまりゲームをやらないので、ゲーム雑誌はほとんど縁のないものではあります。まあ、他にフィギュア等の情報も載っていますが、いずれ...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。