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まどか☆マギカ――魔女

さて、メイン部分に関する話は一通りは終えた気がしていますが、その他のミニマルな話題を巡って、まどか☆マギカ――正義の地平から以来の「魔法少女まどか☆マギカ」に関する話です。

以下ネタバレあり。






第8~9話で明らかになった、このアニメのキーとなる過酷な真相――まどかが身を賭して乗り越えようとしたもの――「魔法少女」の魂そのものであるソウルジェムから「魔女」が生まれる、という設定でした。

第2話の時点で、魔法少女の敵が「魔女」というのは一風変わった設定ではありました。しかもその「魔女」と来たらコラージュや落書きのような外見のクリーチャーで、一般的な「魔女」のイメージに沿ったところはあまりなく、このネーミングが気にかかっていた人も少なからずいたことでしょう。
にもかかわらず、この真相を予想できた人は稀だったのではないか、と思います。

魔法少女は魔女を倒し、人々を守っていると思いきや、魔女を生む元になっているというマッチポンプとはあんまりだ、という事情もあります。しかしまず、イメージ上の「魔法」と「魔女」の断絶があったのでしょう。
キュウべえの「この国では、成長途上の女性のことを『少女』と呼ぶんだよね。だったら、いずれ魔女になるキミたちは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」という台詞はほとんど逆転の発想であって、一般的なイメージでは「魔法少女」は「魔女」の少女版ではありません

京極〔夏彦〕 〔陰陽師から〕思い出すんですけど、『魔法使いサリー』(笑)。あれは魔法使いですね。名作ですから当然「路線」になって、シリーズになりましたでしょ?
宮部〔みゆき〕 『魔法のマコちゃん』とかね。
京極 そうそう。あれ、途中から「魔女っ子」になっちゃったり。魔法使いならまだいいけれど、魔女はいいのかって思った(笑)。魔女ってのは悪魔の使いですから、いい意味はないんじゃないか、良い魔法使いはいるかも知れないけれど、子供心に考えちゃった。まあ「正義のヒーローデビルマン」とか(笑)いい出せばきりがないんだけれど。
 魔女というのは「魔法を使える女性」の略じゃないんですよね。魔法使いとは違う。魔女は魔女なんです。女性蔑視だとか、異端審問とか魔女裁判とか、そうした背景抜きに使えないですよ、魔女という言葉は。キリスト教的世界観があって初めて理解できる概念じゃないですか。でも、そうした歴史的な背景を引っこ抜いてしまえば、単なる超能力少女になっちゃう。臭いものにフタをすると上澄みにオカルトが残る。そうすると一般的になるの。で、よくよく考えてみると『奥様は魔女』が悪かったのかと(笑)。でもあれは悪女とか烈所とかと同列のものとして、ちゃんとマイナスイメージの言葉と知っててつけたネーミングだったと思うんですけどね。魔女っ子になるとどうなのか。
 (……)
京極 近代以前は迷信がまかり通っていて、呪術的なものが公に信じられていたんだという錯覚があるわけですが、僕はまったく逆なんじゃないかと思うんです。昔はお約束が社会的に機能していただけで、信じてるというならむしろ今なんじゃないかと。
宮部 あ、それは私もそう思います。
京極 自分もふんばれば宙に浮くんじゃないかとか信じちゃうわけでしょ(笑)。
宮部 それは、自分の夢とか希望とか、嫌な言い方をすれば欲望とかを、簡単にかなえる方法をみんなが探しているからだと思うんですよね。
京極 まあ。プロセスを無視して結果だけ得たいというのもあるんでしょうか。
宮部 ぴこぴーんとやって、家の掃除が終わっちゃうんだったら、私だってやりたいですよ(笑)。
京極 あ『奥様は魔女』の弊害がこんなところにも(笑)。
 (京極夏彦対談集『妖怪代談義』、角川書店、2005、pp.110-115)


この点で、『ハリー・ポッター』の witch を「魔女」と訳すのは不適切なのではないか、と思います。あの場合、男が wizard で女が witch なのは、多くの言語に男性名詞と女性名詞が(場合によっては中性名詞も)あるのと同じようなものであって、日本語ではどちらも「魔法使い」で良いのではないか、と。
とは言え、『ハリー・ポッター』における邪悪さを払拭された「魔法使い」のイメージで witch の語が使われているということは、日本語の「魔女」が witch の訳語からかけ離れたというよりも、英語でも witch の脱悪魔化が進んでいるということなのかも知れません(もっとも、キリスト教からの反発、『ハリー・ポッター』を禁書に、といった動きもあったようですが…)。
さらに言うなら、「魔法」をあらわす一般的な語としては magic もありますが、「ホグワーツ魔法魔術学校」の「魔法魔術」は witchcraft and wizardry です。つまり、「魔女」が「魔法を使える女性」の略ではないとしても、逆に「魔法」が「魔女の技術」であるというのは、言えるのかも知れません

いずれにせよ、日本語において「魔女」の語にはまだ邪悪なイメージが残っているのではないか、と思います。かの名作ゲーム「ドラゴンクエストIII」でも、味方の職業に「魔法使い」がある一方、敵モンスターとして(箒に乗った)「魔女」が登場していたりしますし。まあ「おジャ魔女どれみ」のように例外も多いのですが……。
微妙な話になりますが、これが「魔女っ子(娘)」になると一気に邪悪さが脱色されます。この語はやはり「魔女っ子メグちゃん」辺りからでしょうか…?
そして「魔法少女」の語は――起源は確認できていませんが――基本的に魔女から切れているのでhないかと思います。もっと言うと、「魔法少女」は中世ヨーロッパ風ファンタジーには馴染みません。もっと現代化された「魔法」のイメージがまずあって、それが使える少女が魔法少女なんですね。

しかし「少女」と限定されているからには、「魔法少女」が大人になったらどうなるのか……これは作品の設定によりけりですね。魔法を使うことが「少女時代だけの一時の冒険」として扱われている場合、多分、魔法には関わりのない普通の大人になるのでしょうし。

というわけで、「魔女」が人間としての「魔法少女」の成長形ではなく、魂から生まれる異形の怪物であって、しかし「魔法少女」の成れの果てには違いないというのは、この二つの語の遠いながらも存在する縁異質さとを巧妙についた設定だった、と思うわけです。
(この結論に至るためにこれほどの中間部分、必要ありませんね
                           (芸術学4年T.Y.)

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