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性衝動と本能の違い

今更ですが、いつぞや紹介した私の翻訳、論文検索サイトでも名前が出るようになっていました。所蔵図書館も分かります。

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台風が接近中です。確か5月11日のが台風1号だったと思いますが、いつから台風は梅雨より先に来るようになったのでしょうか。小学校で台風は10月のものだと言われた記憶は何かの間違いか、それともこれも異変なのか。
周知のように、暴風警報が発令されれば学校はお休みです。教員もおそらく休み…のはずで、教育実習生も休み…多分。いや、正式に話を聞いてないんですよね。本当に、さすが我が母校。

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別に実習と直接関係はありませんが、教員免許を取るには「教育心理学」が必修です。この内容は教員採用試験で出題されるもので、講義の内容も文科省からチェックを受けます(通常、大学の講義の内容はかなりの部分、先生各自の裁量によるのですが)。
この内の、特に「発達心理学」は学者独自のタームを用いた理論が中心で難しいこともあって、本学の三宮先生はこの分野の授業に結構時間を割いています。ここではフロイトの精神分析なども登場します。
さてこのフロイトの理論というやつ、口唇期肛門期男根期…といった発達段階の名称があり、トイレット・トレーニングの時期には排泄物が贈り物になるとか、男の子は母に近親相姦的願望を抱き父から去勢されることを恐れる(エディプス・コンプレックス)とか、実に異様なことを言っています。一見して変なことを言っているなと思うのはむしろ自然なところですがつまるところ、これは何の話をしているのか

フロイトの用語法からは離れますし、正当な解釈と認められるか分かりませんが、人の試験勉強に関わったりする中で私が持ち出した説明は「まず、『性的欲動』を本能的なものと考えないこと」でした。これはフロイトに依拠する岸田秀氏の「人間は本能の壊れた動物である」というテーゼに大いに依拠しています。
多くの動物は繁殖期にだけ交尾を求め、ある程度決まった手順に従って求愛→出産or産卵→子育て、と行動します。このように組織化された行動原理が「本能」です。
単純な生物から複雑な生物へと単純に、一直線の上下関係があり、上に行くほど能力が加算され、その頂点が人間であるというアリストテレス以来の自然観に従えば、「動物は本能的であり、人間はそれに加えて知性を持つ」と考えるのも自然でしょう。
しかし、問題はまさにその前提となる自然観にあります。

生物の進化は一直線の進歩というよりも様々な方向への分岐であるというのは、現代の生物学ではほぼ常識です。
ベルクソン(フロイトとほぼ同時代人です)は、20世紀初頭(ダーウィンの『種の起源』が出版されてから約50年後)という時期に、そうした自然観を積極的に自らの哲学に取り入れました。彼によれば、動物の進化の2つの大きな潮流は「知性」と「本能」であり、知性の頂点は脊椎動物(特に人間)であり、本能の頂点は昆虫(特にアリやハチ)ということになります。
何万という集団で統制の取れた行動をして、複雑な巣を作ったりするアリやハチ――こういうことが生まれつきできるのが「本能」であり、人間にはないものである、というのは、ファーブルの『昆虫記』に親しんできた人間としては実によく分かることです(ベルクソンもファーブルを引用しています)。
つまり「本能」と「知性」はそれぞれ異なる形に組織化された行動原理であって、それ以前に、そのように組織化されていない生の根源的衝動とでも言うべきものがあるのです。

※ ただしベルクソンによれば、本能と知性も元々は一つだったものが分かれたのであって、脊椎動物にも多かれ少なかれ本能があるし、逆も然りですが。

話をフロイトに戻すと、フロイトの言う「性的欲動」は組織化されていない、もっと原初的なもの、と言って良いでしょう。何しろそれはただ「快感原則」に従うのみです。その場でただ無差別に快感を求めるだけでは、どこにも向かいません(そして多くの動物はそんなことをしません)。
ふたたび岸田氏の表現を借りれば、「幼児は多形倒錯的であり、思春期に至ってはじめてさまざまな(倒錯的)部分衝動が性器の優位のもとに統合される」(『ものぐさ精神分析』、p.152)のです。
したがってフロイト理論における「発達」の課題とは、原初的な性衝動を人間の行動原理へと組み立てること、となります。そのために色々な段階を踏んだ手続きが必要になるわけです。

とにかく言っておきたいのは、原初的なものと動物的なものを混同するのは、すでに時代遅れの自然観を前提としていないか、ということです。
                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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