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心理学の理論について

以前に性衝動と本能の違いについて論じましたが、これがフロイトの学説の説明に留まるのかどうか、はっきりさせていなかったかも知れません。
フロイトの発達心理学を話の発端にして、それに対する一つの理解の仕方を示す、というのを話の主軸にしていたのは確かですが、フロイト自身の用語法から離れている時点で「フロイトについての解説」としては正確ではない可能性は、当然あるでしょう。
では私自身の考えはと言うと、おおむね件の記事に反映されています。

私自身、発達心理学は「学者独自のタームを用いた理論が中心」だと言いました。子供の発達については実験もできませんし、具体的なデータよりも抽象的な話が主体になります。
が、同じことについて色々な理論が成り立つのだとしたら、結局何とでも言えることなのではないか、という疑問を抱く向きもあるでしょう。
この点については、まずこう答えておきましょう――同じことに対して複数の見解が成り立つことは、必ずしも「正しいのは一つだけ」もしくは「どれも価値がない」ことを意味するわけではない、ということです。
特に心理に関しては、視点の違いもあります。自然科学は常に客観視点、三人称しかありません。しかし、たとえば一人称――「本人はどう感じるか」を切り捨てるのは、心理学としては正当でしょうか

(……)主観的心理学が一人称の心理学であり、客観的心理学が三人称の心理学であるとすれば、精神分析は二人称の心理学であるということが言われるが、この分類に従うなら、レインの心理学は一人称の心理学であって、精神分析のように、患者と距離をおいてその行動を暴露的に解釈するという方法を取らずに、患者の心のなかに没入してゆく態度を取ることからも、それはわかるであろう。
 (……)念のため断っておくが、主観的見方であると言ったからとて、間違っているという意味ではない。主観的見方を一方的で偏っていると言うなら、客観的見方も同じく一方的で偏っている。客観的ということと、公平で正しいということとをごっちゃにするのは、軽率な偏見に過ぎない。
 (岸田秀『ものぐさ精神分析』、中公文庫、1982、p.271)


しかし実は、「性衝動と本能の違い」という件に関しては、もっと話は明瞭ではないかと思います。
きわめて複雑な性行動を生まれつき定められた動物(特に昆虫)の性と、人間の性衝動とがいかに違うものかというのは、実証的に確かめられることだからです。
それでも「性は本能的だ」と主張するのなら、まず「本能」という言葉の曖昧な意味を弄んでいるのでないことを証明する必要があるでしょう。

こと「“人間的なもの”と“動物的なもの”の違い」については要注意です。
実験心理学ではよく動物実験をやりますけれど、「人間もネズミも問題の点に関しては同じである」ということを証明しないまま、ネズミでの実験結果を「人間にも当てはまる」と主張するのは、およそ実証的とは言えません(実験心理学が全てそう、とは言いませんが)。

ですから、心理学の理論に話を戻しますと、もちろんどんな理論でも構わないわけではなく、妥当性の程度は当然あり、また異なる理論からは異なる点について学べるのです。
抽象的に見える理論も最初から机上の空論なのではなく、現実の様々な観察結果を前にして練り上げられてきたものなのですから。

ところが面白いことに、偉大な思想家の考えというものは、いかに矛盾に満ち、現実を前に紆余曲折を経て組み立てられたものであろうと、後から見ると「無矛盾で何にでも当てはまる、よくできた理論」に見えてしまうのですね(むしろ、それこそが「偉大な思想家」の条件だとも言えます)。

※ もちろん「何にでも当てはまる」は「個々のケースについては有効なことは何も言っていない」と同義です。
                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
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