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英雄待望論というわけではないけれど英雄の必要性

昨日まで紹介してきたライトノベル『羽月莉音の帝国』のお話は一段落しますが、ちょっとそのあとがきから。

(……)昨今、中東革命が世界の話題を攫いました。インターネットを通して民衆が団結し、政権を打ち倒した革命劇です。しかしやはり、民衆は政権を打ち倒しただけでした。結果、革命が革命を生み、新たな混乱を引き起こしただけです。その先にある栄光は、英雄が掴み取らなくてはならない。
 (至道流星『羽月莉音の帝国 7』「あとがき」、小学館、2011、.369)


実はこれは、社会革命の理論の根幹に関わる話です。

遠回りなようですが、ます二つの問いを提示してみましょう。

・人間は、いかにして社会を作るのか?
・人間は、いかにして社会を変革し得るのか?


古生物学を扱った科学番組で、終盤になって人類の登場に至り「こうして高い知能を持った人類は、社会を作ることができるようになりました」とナレーションが語るのを聞いた覚えがあります。
こういう話を簡単に信じることはできません。なぜ「知能が高い」ことと「社会を作る」ことが結び付くのでしょうか
むしろ知能は「社会に逆らうことを考えつく」可能性を考える必要があります。

(アリ)を見てみましょう。各個体は群れに逆らうことなど考えもせず、大群で大きな巣を作り、巣の内外で役割分担して、一糸乱れぬチームワークを発揮しています。これが本能というやつです。知能は必要ありません
(ただし脊椎動物に限ると、たとえばウミイグアナなどの群れはリーダーもいないいわゆる「烏合の衆」で、チームワークや分業の発達は知能と密接に結び付いています。つまり、脊椎動物は昆虫のように本能を発達させる道とはすでに決裂している、ということでしょう)

社会を作った方が有利だから、とか、そうでないと生きていけないから、というのは、人間が今になって反省して考えつくことであって、人類の先祖が「社会を作った方が有利だな」と考えて社会を作り始めたわけではないでしょう。むしろ、知能による反省以前に社会は始まっているのです。

ひとまず、知能が社会に不利益をもたらすことを考えるのを上手く制御して、社会を成立させるメカニズムがあるとしましょう。
すると今度は、そのメカニズムに反して既存の社会を覆すことはできるのか、という疑問が出てきます。

たとえばマルクスは「イデオロギー」という説明を考えました。
大雑把に言ってしまえば、多くの人々は「今の社会に奉仕するのが正しい」という偽りの思考を植え付けられているため、自分達を搾取する社会体制の維持に協力してしまう、というわけですね。
しかしすると、マルクス達社会学者はなぜイデオロギーから自由になり、「それはイデオロギーだ」と指摘できるのか、という問題が出てきます。イデオロギーというのが強力なものであると主張するほど、こちらの謎は解けなくなります。

これらの問題に関する議論を紹介している余裕は、今回はありません。
とにかく、一方では「社会を作らせるメカニズム」があり、他方で個人は社会に逆らうことができて、両者が緊張関係にある――ここまでは経験的事実として認めたとしましょう。
さて、社会への反抗がただカオスをもたらすのではなく、新しい社会を生み出すことがあり得るとしたら、それはいかにして?

言うまでもなく、これは途方もない難問です。
社会を生む神秘家というのも、この問題に関わる話でした。
まあ、神秘家に関する話はあれで何かが分かっていただけるとも思いませんが、そうなってしまうくらいの難問なのですね。

別に、英雄に従うことを勧めるわけではありません。
むしろ「英雄的人物こそ巨大な害をもたらし得るのだから、皆で見張れ」というのが民主主義社会の基本理念でしょう。
しかし、民主主義も必ずしも最初から「民意に基づいて」生まれたわけではなく、限られた「英雄的人物」「建国の父」等々による主導の下に生まれた、というのが現実です。
歴史的には英雄が必要であるというのが事実ならば、それを認めることも必要でしょう。それと、実際に生きる上では英雄に気を付けることとは別問題です。

リーマンショックの時には「100年の一度の危機」と騒がれたくらいで、今が激動の時代であることは多くの人の認めるところです。
新しい時代を築くのは、どんな人物でしょうか?
                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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