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南房秀久『アリス・イン・ゴシックランド』

アメリカ国債の上限引き上げについては、オバマ大統領と共和党のあいだで合意を見で、デフォルトは回避されたようです。

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最近読んだライトノベル、またまた。

アリス・イン・ゴシックランド 霧の都の大海賊 (角川スニーカー文庫)

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舞台は19世紀末英国のロンドン。主人公は侯爵家の次男ながらスコットランドヤードの刑事を務める青年、ジェレミー・S・グリフィス。
彼はある夜、殺人事件の現場付近で11~12歳かそこらの金髪の少女、アリスを拾います。名前以外の記憶を失っていたアリスは、そのままグリフィス家にメイドとして住み着くことになります。
一方、ジェレミーは上司のレストレイド警部から、かの名探偵シャーロック・ホームズの妹、イグレイン・ホームズを紹介されます。

この3人がロンドンを揺るがす事件に立ち向かう、と言えば大体の説明は完了です。
敵はというと……(本編の山場を描いたカラー口絵を見た時点で分かるので言いますが)海賊フック船長、しかも潜水艦ノーチラス号を操り大英帝国に反逆する、という何やらごた混ぜのとんでもない設定です。
さすがに「ピーターパン」の設定は直接は関係ないようですが。

他にも、ノーチラス号の設計をフック船長に渡したの「インドのとある王子」が『海底二万里』のネモ船長だと解説ページに示されていたり、敵組織の幹部らしき人物として「教授」(やはりホームズの宿敵モリアーティ教授?)とか「ドリアン君」(たぶん『ドリアン・グレイの肖像』のドリアン・グレイでしょう)、「ハイド氏」(おそらく『ジキル博士とハイド氏』から)といった名前が出て来たりで、これらの文学作品の読者には楽しみに思わせるネタは満載ですね(それぞれ、原作通りの設定ではなさそうですが)。
あるいは、イグレインがいかにもシャーロック・ホームズ風に初対面の相手のことを次々と言い当ててみせたり、さらには『緋色の研究』に書かれていたホームズの推理の乱暴さについて「お兄様は頭の回転が速すぎるの。だから、知性で劣るドクを相手にしてるとイライラして、説明をはしょる癖があるのよ」(p.170)とフォローしていたりするのも面白いところ。

が、敵と対決するアクションシーンは、取り立てて上手いという印象ではありませんね。
ストーリー自体はまだ序章という感じで、敵組織の実態などは謎のままです。
そしてアリスの正体も、部分的には触れられますが、敵組織との詳しい関わりやその目的などは不明です。
というわけで、結構物足りない感があります。ネタは色々つぎ込まれていますが、筆力的にはこれからの展開に期待したものか……ちょっと微妙なところでした。

――と、何だか微妙な評価になりましたね。
せっかく読んだし、あまり語っている人も見当たらなかったので…くらいの感覚ですね、今回は。


余談ですが、ライトノベルの1巻には基本的に「1」とは付きません。連載をまとめる漫画の単行本(1巻が出る時点で、連載分はもっと先まで存在しているのが普通)と違って、書き下ろしのライトノベルは人気がなければ続きは出ませんし。
投稿デビュー作で1巻完結していた作品も、人気が出れば続きが書かれることもよくあります。『涼宮ハルヒの憂鬱』も『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』もその手合いでしたし(後者は特に、主人公の正体がネタに関わるミステリ仕立てだけに続きがあるんだろうかと思われる作品でしたが、まあ結構続けられるものなんですね)。

一方で、1巻の時点で2巻以降のためのネタをバラ撒いている作品もあります。が、あまりにも「プロローグのみ」という内容で盛り上がりがないと面白くありませんね。書き下ろしで刊行している時点で、ある程度の盛り上がりと区切りが期待されますし。
そこまで極端ではなくて、一応1巻完結のストーリーになっているけれど、2巻以降で使うつもりらしい設定やキャラが入っている場合、蛇足のような印象を与えてしまうこともあり、これまたしばしば問題視されますが。

短編連作形式の『僕は友達が少ない』の場合、冒頭で顔見せしたキャラの一部は1巻では登場すらしなくても、あまり問題には感じませんでしたが。
                           (芸術学4年T.Y.)

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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