オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
不思議の国アメリカ
2001年9月11日に起こった同時多発テロへの報復として、アメリカはどこと戦争を始めたでしょうか?
今ならばビンラディンの殺害が記憶に新しいこともあり、この問題の正答率は比較的高いかも知れません。
しかし、イラクに軍隊が送られていた数年前までなら、「イラク」という誤答率はかなり高いものでした。
(注)正解はアフガニスタン
9.11テロの報復としてアフガニスタン空爆が始まったんですよね。
2年後の2003年にイラク侵攻が始まったのは何か繋がりがあったのか、もう記憶が曖昧になっています。
いえいえ、イラク侵攻の理由は「イラクが大量破壊兵器を所有している」という話が出たからでした。
当時からこの話、結構疑われてはいましたね。
結局、(予想通り)大量破壊兵器など見付かりませんでした。
それどころか、すべてマッチポンプだったことも判明してきています。
この事件は、イラク戦争開戦前の二○○二年九月八日、「ニューヨーク・タイムズ」が「イラクが過去一、二年の間に、ウラン濃縮に必要なアルミニウム管数本を入手しようとしていた」とする情報を「政府関係者」から入手したと掲載したことから始まる。記事を書いたのは、同紙のピュリッツァー受賞記者として有名なジュディス・ミラーである。
そして、この同じ日、テレビのインタビューを受けた副大統領のチェイニーが、「イラクには核開発の疑惑がある」と述べ、さらに「これは今朝の『ニューヨーク・タイムズ』にも載っている確かな情報だ」と付け加えたのである。
(……)だが、これはすべてが捏造によるまさにスピンコントロール(情報操作)の産物であった。
ミラー記者にこの情報を流したのは、副大統領主席補佐官のルイス・リビーであり、このリビーの行動はチェイニー副大統領を中心としたホワイトハウス開戦派の謀略によるものであったことが後に判明する。
(上杉隆『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』、光文社新書、2011、pp.83-84)
さて、アフガニスタンのビンラディンに戻って、ビンランディンも今年になって発見・殺害されました。
これについては以前にもコメントしましたが、「“武装もしていない相手を殺す”のは先にビンラディンがやったのだから、当然の報復である」――アメリカとビンラディンの間にあったことだけを考える限り、この理屈に正当性はあります。
しかし、実のところ、ビンラディンに生きて証言されるとアメリカにも都合の悪いことがあるから有無を言わさず殺したのではないか――実態は分かりませんが、少なくともそういう疑惑が生じる余地を、アメリカは自ら作ったように思われます。
ウィキリークス騒動の直後だけに、なおさら。
そして、今回のデフォルト危機です(回避されましたが)。
つまるところ、ここまで借金を重ねてまで軍備を強化し、進出を続けなければならないアメリカとは何なのか、という問いが浮上します。
ライトノベル『羽月莉音の帝国』の作者・至道流星氏は、別の作品ではこんなことを書いていました。
――現在のアメリカが、歴史上稀に見る強大な軍事力を保有していることに疑いはない。そして、アメリカ国民は、心の奥底で自国の軍事力に誇りを持っている。だが、それはプロパガンダの結果であり、実に滑稽な話なのだ。一○○億円の豪邸を買うために、九九億円を借金で調達したのでは、どれほど馬鹿でも誇りなど持ちようがない。しかしアメリカ国民は、誇りを持ってしまっているのである。
(至道流星『神と世界と絶望人間00-02 雷撃☆SSガール2』、講談社、2010、p.77)
この小説は「近代史上の大事件はことごとくブランフォード財閥の陰謀だった」という陰謀史観に基づき、その秘密を手に入れてしまった主人公が重大問題に巻き込まれて…という話で、どうやらあえて陰謀史観を取り入れているようです。もちろん、現実にもそんなことはない…でしょう。
ただ、陰謀であるとかないとかは別にして……
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(芸術学4年T.Y.)
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