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マネジメントと革命

まずは、昨日紹介した『羽月莉音の帝国』8巻のちょっとしたネタから。
今や世界一の有名人となった恒太をネタにした本はたくさん出版されているというくだりですが…

 また、恒太の言葉を元にして、ストーリ仕立てでマネジメントを学ぶという本――『春日恒太がカレッジワールドシリーズにやってきた』がベストセラーになっていて、全世界で一〇〇〇万部を売り上げたことで話題になっていた。カレッジワールドシリーズで最弱だったベースボール部の監督が、恒太の名言の数々に影響を受けて運営に取り入れたところ、たちまち部は強くなり、ついには優勝してしまったというお話だ。監督が恒太になったような本だと思えばいい。
 あまりに人気のある本なので、どんなものかと手に取ってはみたものの……俺には逆に難易度が高すぎた。
 たぶん、多くの読者のレベルにマッチしているのだろう。恐るべきことに、この『春日恒太がカレッジワールドシリーズにやってきた』がハリウッドで映画化される予定なのだという。
 (至道流星『羽月莉音の帝国』8巻、小学館、2011、pp.188-189)


元ネタは言うまでもなく、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメントを読んだら」(通称』『もしドラ』)です。

文字通りには、恒太は実態はトンチンカンな男で、その発言の内容と革命部のビジネスはほとんど関係がないことを知っている巳継にとってはついて行けない…という意味で読めますが、そもそも作者は『マネジメント』のような成功哲学そのものに否定的でした。
至道流星氏のデビュー作『雷撃☆SSガール』にそれを見事に表したやり取りがあります。

「じゃあジン、成功哲学はどういうものか答えてみなさい」
「そりゃ簡単にいえば『努力すればあなたも必ず成功できる。そしてあなたが成功すれば社会もハッピーになる』みたいな話だろ」
「そう。でも前にいったわよね。私たちがSSファンドで得た莫大な資金はどこから来てるかって。マーケットに投資する何十万人、何百万人の投資家たちから集めてるのよ。じゃあ私たちだけが努力して、その何十万人、何百万人の投資家たちは努力してないのかしら?」
 (……)
「いいことジン。物理学を学ぶ者なら誰でも知ってる基本法則。どんな『作用』にも、同じ力で反対の方向に働く『反作用』があるの。大砲を撃てば、大砲が反動で後ろに動く。誰かが一億円儲ければ、誰かが一億円損をする。単純明快。……でもね、簡単にいっちゃえば、成功哲学って代物は、その物理学の基本法則を否定してるの」
 (至道流星『雷撃☆SSgガール』、講談社、2009、p.262)


かくして、本作のヒロイン・水ノ瀬リンは、成功哲学こそアメリカの強大さを支えるコカインのようなもの、と言い放ちます。

そう、至道氏の小説は「ビジネス小説」であっても、「こうすれば成功する」というモデルを描いたものではありません。
(確かに、ビジネスモデルや政治経済に関する多くの知識、それにいくつかの鉄則という点では、勉強になりますが)
大体が並外れた登場人物の才能と、有力者の助力に頼っているところが多いこと、そして何よりスケールが桁違い(百億円は当たり前)ということからも、読んでいれば何となく分かると思います。つまり、誰も「真似すれば自分も…」という気にはならないでしょう。
むしろ、至るところに見て取れるのは、とんでもない額のお金が動くことを可能にしてしまう世界の「デタラメさ」に対する眼差しです。
だから登場人物たちは、そんなデタラメな世界に挑むべく戦うのです。自らの贅沢など求めないで。

実際、何百兆円という額を扱う会社の社長になっても、相変わらず巳継はローンの残る実家に住んで電車で通勤しています。仕事で世界各地に出張したりパーティーに出たりはしますが、そもそも役員報酬など貰っている気配すらなく、休みなしで働き続けています。

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(2009/08/04)
至道 流星

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なお、『羽月莉音の帝国』9巻は早くも10月に発売予定とのこと。
                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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