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旧『エヴァ』の桎梏は破れるか――『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』

昨日の続き…も考えていましたが、予定変更
昨夜『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』を金曜ロードショーで放送していたので、その話でも。
ええ、今になってようやく観ました。

シリーズ第1弾である『序』は比較的旧TVシリーズ版に忠実な構成でしたが、予告編を観るとエヴァ7号機辺りまで列挙されるわ、しかも「月からやって来た」とか言うわで、どういう方向に行くのかと思っていましたが。
しかし、観てみると、以下の展開に関しては、大筋はTV版のものを辿っていました。

1. エヴァ2号機のパイロット、アスカ登場。
2. 落下する使徒の迎撃戦でエヴァ3機共同作戦。
3. 使徒に乗っ取られたエヴァ3号機を倒すことをシンジが拒否。ダミープラグ(パイロットの代わりにエヴァを動かすシステム)によって参号機は倒されるも、シンジはエヴァを降りる。
4. 最強の使徒との戦いでシンジ、自らエヴァのパイロットに復帰。

相違点も含めてもう少し詳しく追っていくと――

2に関しては、分裂する使徒・イスラフェルを相手にシンジとアスカがユニゾンして戦うTV版のエピソードはなくなりましたが、自分のパイロットとしての成績を拠り所としていたアスカが共同戦線を通じてシンジ達との絆を見出す、という基本構成は同じと見ていいでしょう。ただし、「シンジとアスカの二人」でなくレイを加えた三人であることは多分、アスカのポジションに影響しており、それが次で決定的になる、という形かと思われます。

3では、エヴァ3号機のパイロットとして、シンジが殺すよう命じられるのは同級生の鈴原トウジではなく、アスカです。アスカはここで無惨な最期を遂げることになり、そもそもこれ以降の作中でのポジションそのものが大きく変化することになりました。アスカファンにはショッキングだったのも分かります(予告編にはまた姿を見せていましたが…)。
ただこれにより、「学校のクラスが実は全員ネルフによって選ばれたエヴァのパイロット候補生だった」という陰謀論的な設定は消えました。

そして、3→4はシンジが「父親のゲンドウに言われるままではなく、自らの意志でエヴァに乗るようになる」流れですね。
TV版の方のこの展開については、先日紹介した『魔法少女まどか☆マギカ』についての評論に的確かつ詳細な記述があったので、そちらにお願いしましょう。

(……)綾波レイはエヴァに乗ることがみんなとの「絆」で、「わたしにはほかになにもない」という(じっさい、そういう境遇である)
 惣流アスカ・レングレーはエヴァの操縦成績がさがると情緒不安定になるぐらいパイロットとしての地位に依存している。アスカは母親を亡くしていて、その愛情に飢えているのだが、彼女が登場するエヴァ弐号機には、じつは母親の魂が宿されている。これは彼女の精神的欠落をネルフが利用していることの隠喩である。またシンジはゲンドウにほめられ、

  ぼくは、父さんのさっきの言葉を聞きたくて、エヴァに乗ってるのかもしれない。

 と思うようになる。
 このアニメでは、ロボットに乗って敵と戦うことは必ずしも成長の証ではなく、ときに彼らをより依存的にしてしまう。
 しかし十六話で、シンジはエヴァごと使徒の罠に閉じ込められ、もう一人の自分と名乗る存在に、エヴァやネルフに依存していることを糾弾される。(……)
 さて、この出来事で呼び覚まされたシンジのネルフへの不信は、第十八話で、エヴァ参号機が親友鈴原トウジののった状態のまま使徒に侵食されてしまったため、これを破壊しろと命令されたことで決定的となる。第十九話、シンジはエヴァに乗ることを拒否、ネルフを離れる。別れるさい、ミサトは彼に、

  積極的に話をしている。初めてね、こんなの。

 という感想を抱く。シンジは成長したわけだ。
 さて、ここまでのストーリー展開は非常にスムーズである。あとはヒーローもののセオリーとして、シンジがふたたび、苦戦する仲間たちを救い、世界を守るためにこんどは自発的にエヴァに乗って戦う、という展開が待っているわけだが、このまま大団円に向かうのかと思いきや、話はなぜか救いのない方に向かっていく。シンジがエヴァに乗ったことで、エヴァによりS2機関取り込みという現象が起こり(なんだかよくわからないが、ネルフが上部組織のゼーレを出し抜くのに役立つらしい)、ことはますますゲンドウに有利になってしまう。
 (山川賢一『成熟という檻 「魔法少女まどか☆マギカ」論』、イネマ旬報社、2011、pp.188-190)


ここから以前に引用した箇所に続きますが、要するに山川氏は、「騙されてエヴァに乗るのと、自発的にエヴァに乗るのでは大きな差がある、という前提」が庵野監督には「嘘くさく感じられた」のが原因ではないか、と推測しています。

これを踏まえて『新劇場版:破』を観ると、まずシンジが「父さんにほめられて嬉しかった」云々を言う場面はありますが、「もう一人の自分」にそれを糾弾される展開はありません。(レイはともかく)アスカの設定に関しても然りで、全般に「エヴァに乗ることで依存的になってしまう」というネガティヴな面は強調されていない、と言えるでしょう(山川氏も新劇場版での違いを踏まえて上記の文章を書いていた、と見るべきでしょうか)。

さらに、最強の使徒(TV版での名前はゼルエル)との戦いにおいても、さるブログにて指摘を発見しました(特に記述がなかったので、リンクを貼ってしまいますが)。

 ゼルエル戦で、エヴァ初号機を動かしていたのは誰か――旧エヴァと新ヱヴァの違いに関連して

つまり、TV版ではシンジのお願いに答えて、シンジの母親の魂を取り込んだエヴァ初号機が動き、そのままシンジを取り込んでしまったのに対し、新劇場版ではシンジが能動的にエヴァを動かしている、という話です。
(ついでに言うと、TV版ではゼルエル戦で描かれた、エヴァ初号機が使徒を「むさぼり食う」という行為も、エヴァ3号機戦での――つまりダミープラグに操作されたエヴァの――ものになり、ゼルエル戦での初号機はそうした怪物的な姿ではなく、天使のごとき姿になってレイを助けるため手を伸ばす、というものになっています。どこまでがシンジの意志下にあるのか、ということを考えても、この違いは重大です)

これらと、「学校のクラスまでネルフの掌の上」という陰謀論的設定がなくなったことを合わせると、「結局は大人に取り込まれる少年少女」を描くことになってしまったTV版に対し、改めて「自発的に戦う少年少女」を描いた、正統派のヒーロー物にしようとしているのではないか、と読めますね。

とは言え、神の如き存在に覚醒したエヴァ初号機を見て、ゲンドウが「これでまた一歩、我々の目的に近付いた」とか言っているのは相変わらずですが。

その点を考えるに当たって、TV版にはいなかった、この『破』で初登場となるキャラ――エヴァ仮設5号機のパイロットとして登場した眼鏡っ娘、真希波・マリ・イラストリアス(作中ではほとんど名前を呼ばれていた覚えがありませんが)に触れておきましょう。
序盤では搭乗した途端仮設5号機が自爆、終盤ではネルフに潜入し2号機を乗っ取りゼルエル戦に出撃、かなり負担が大きいらしい第二形態に変身と無茶ばかりしながら、きっちり無事に生き残り、シンジを戦いに戻るよう焚き付ける(TV版では加持リョウジのものだった)役目も担ったりと、何だかおいしいところを持って行っているキャラです。
エヴァ仮設5号機の爆発後、「自分の目的のためとはいえ、子供を利用するのは気がひけるね」と加持が言っている一方で、脱出した彼女は「自分の目的のためとはいえ、大人を利用するのは気がひけるね」と言ってのけていたのでした。

そう、利用するのはお互い様です。
ここで問題になっているのは従来の「父殺し」とか、「大人の陰謀を打ち破る」とかいうことではなく、「大人の利益になるなら、させておけばいい。それは必ずしも、少年少女の能動性を否定することにはならない」ということではないでしょうか。
この読みが適切であったかどうか、今後の展開を待ちましょう。シリーズ第3弾『Q』は2012年冬公開とのこと。

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Author:T.Y.
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