オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
安定という嘘
馬淵澄夫
鹿野道彦
野田佳彦
海江田万里
前原誠司
後は「郎」がいれば…
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と、冗談はこのくらいにしておいて、実は今何が起こっているのかの続きになります。
昔……中学の「公民」だったか高校の「政治経済」だったか忘れましたが、何かの教科書に以下のような趣旨のことが書かれているのを見た覚えがあります。
「民主主義以外の政治形態は、政治参加を認められていない人々が政治参加を求めて反乱を起こす可能性があるという意味で、民主主義はもっとも安定した政治形態だといえるだろう」
そんなバカな。
むしろ、民主制の中から大衆の歓呼により独裁者が生まれた歴史は数知れず(最も有名なところで、古代ローマのカエサル、フランス革命後のナポレオン、ワイマール共和国のヒトラーetc...)、民主主義こそ「不安定な政治形態」ではないでしょうか。
ここで問いたいのは「教科書の間違い」とかいうことではなく、この背景に「安定は良いことだ、良いとは安定していることだ」という考え方があるのではないか、という疑問です。
さらに言うなら、自然と安定すると言うのは、つまり「そのつど努力を続ける」必要はない、つまり民主主義(制)「政治システム」さえ整っていれば安心だ、もう特に何かする必要はない、という考え方です。
ここでちょっと、小室直樹氏の『痛快!憲法学』から(原文は編集者「シマジ君」との対話という形になっていますが、その応答は省略しました)。
と言っても、「憲法や議会と民主主義は何の関係もない」ということを発見したのは私ではない。福田歓一教授という、政治思想史学者の大発見です。
(……)
さて、この福田歓一教授がノーベル物理学賞の湯川秀樹博士とある晩、一緒に食事をした。そのとき、ふと福田教授が「憲法や議会は民主主義とは何の関係もないのですよ」と話したら、湯川博士ほどの学者も仰天した。
湯川博士は核物理学が専門ですが、けっして「専門バカ」ではありません。何しろ、父上は京大で地理学を講じていた学者だし、中国史の貝塚茂樹、中国文学の小川環樹は実の兄弟。ご本人も幅広い教養人でした。(……)
さて、湯川博士は最後に福田教授にこう言ったそうです。「僕がこんなことも知らんのは、福田さんが教科書を書かんのが悪いんや」
それについて、福田教授は自分のエッセイでこう記されている。「このような事実をはっきりさせたのでは、(教科書)検定を通る気づかいはない」と。
その理由について、福田教授は書いていない。沈黙を守っています。
そこをあえて推測すれば、要するに文部省の役人たちは、議会があって、憲法があれば日本の民主主義は安心だと国民に思わせておきたいのでしょう。
(小室直樹『痛快!憲法学』、集英社、2001、pp.50-51)
しかしこのような「システム至上主義」「安定志向」は、デモクラシー(民主主義)にはそぐわないものです。
時間もあまりないので続きは次回以降に。
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(芸術学4年T.Y.)
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