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メタなギャグの普及――望公太『僕はやっぱり気づかない』

今回もライトノベル感想行きます。

僕はやっぱり気づかない (HJ文庫)僕はやっぱり気づかない (HJ文庫)
(2011/07/29)
望公太

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正直な話、AMAZONのカスタマーレビューを見れば大体のところは分かると思いますが…
それぞれ魔法使いだったり超能力者だったり未来人だったりする三人のヒロインと関わり、超常現象に巻き込まれたりしつつ、超常現象やヒーローの存在に全く気付かない鈍感な主人公・籠島諦(かごしま あきら)の話です。
諦が怪物に襲われたりして巻き込まれるだけでなく、ヒロイン達も聞かれてもいないのに日常会話で超能力や異世界の話を始め、慌てて「あははー。うん。全部ネットで見た記事なんだけどね」とか何とか無理矢理な言い訳をします。
しかも地の文も、超越的な視点が入った感じで、「普段嘘をつかない人が無理して嘘をついたような様子だった」とかやけに細かい描写をしながら、その直後に諦の視点であっさりその嘘を信じます。

後半には一応、各ヒロインが抱える、自分の“ヒーロー”としてのあり方に関する疑問が(軽くですが)語られたり、ヒロインの裏での苦闘に気付かない諦との関係がぎくしゃくしたりする場面もあります。

「なんにも起きない世界が退屈なら、正義の味方がやることって、なんなのかな? 他の人の楽しみを奪ってるってこと? 人知れず、勝手に悪い奴らをやっつけてさ。けっこう一生懸命やってるつもりなんだけど……、間違ってるのかな?」
 望公太『僕はやっぱり気づかない』、ホビージャパン、2011、pp.178-179


それでも、あくまで諦は気付かず進みます。
なぜ彼がそんなに鈍感なのか、作中で描かれる超常現象と絡めて説明もされます(そこに至る展開はかなり強引ですが)。

「この世界には、正義の味方なんていない。これから先、もしそれっぽい人達が現れても、絶対に気づかないであげてね。非日常の全てを『気のせい』で一言で済ませられるような、器の大きな男になるのよ」
 (同書、p.208)


そんな無茶な(笑)。


『俺がヒロインを助け過ぎて世界がリトル黙示録!?』『這いよれ! ニャル子さん』と紹介していてふと思いましたが、ライトノベルにおける「メタ言及を含む、超常現象の起こる作品」は、一つにはこの手のギャグ作品へと発展したのかもかも知れません(業界全般の動きを確認しているわけでもなく、多くはメジャー作品というわけでもないので、あくまで考えられる一つの流れとしては、ですが)。
つまり、『涼宮ハルヒ』において「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶ」ためコスプレしたり街を探索したりしているのはコメディではあっても、そういう存在のあり得なさを語った上で実はSOS団の団員たちがそういう存在でした、という設定自体は全くのギャグでもなかったと思われるのですが、これらの作品ではしばしば、設定そのものがギャグになります。

『ニャル子さん』の場合、一冊の単行本の中で後半急に新設定が出てきて「そんな設定あったのか」「後付けだろう」と言ったりするメタなギャグも豊富ですし。

そして、こういうオタク文化をメタ言及的にギャグにした作品が平然と受け入れられ、時には海外にまで輸出される(『ニャル子さん』は中国語訳が出ているとのこと)のは、それだけオタク文化が広く深く根を張ったから、ということでしょうか……

今日のところはここまでです。
                           (芸術学4年T.Y.)

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