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映画ディケイド オールライダvs大ショッカー

シンケンジャー銀幕版は、本来3D映画だったらしいんですが、3D上映できる映画館なんてそうありませんからねえ。そちらに力を入れたせいか上映時間はTV放映1回分と同じ20分ですし、敵以外のゲストキャラはご先祖様一人でゲストヒロインも無し、いささか残念でした。

仮面ライダーディケイド劇場版「オールライダvs大ショッカー」については、ネタバレも含むんで追記の形で書きます。見てない人に公開中の映画の内容を説明するのもアレなんで、ある程度の内容については知ってる前提で書きます。 色々と不思議なことは多い映画で、(例年と違い)間もなく最終回を迎えるTVシリーズとの関係はどうするのかとか、気になることは多いんですが、やっぱり(ある意味で)最大の問題は「死神博士=イカデビルとして倒された栄次郎が最後で平然と戻って来ている(しかも、特に問題になっていない)のは何故?」ということでしょう。

それを考えるためにまず「ディケイド」各エピソードの基本構成を確認しておきます。

・光寫眞館で写真撮影の背景スクリーンを切り替えて、次の世界を表すスクリーンが下りると、光写真館ごと別の世界へ移動する。
・主人公・門矢士はその世界の住人ではないためか、写真を撮ると必ず奇妙な多重写し(しかし、ある種その世界の特徴を表すようなもの)になってしまう。戦いを終え、その写真を現像している場面でエピソードを終え、次の世界に移動する。

途中「ネガ世界編」では士の写真がちゃんと写るかと思われたんですが(多分、士がその世界を拒絶したため)、やはり妙な写真になってしまい、そればかりか夏海のアルバムの写真まで(ネガ世界での真実である)「ダークライダー達に皆が殺されている写真」に変わってしまいます。
しかし今回はここが「士の世界」であったことは本当で、士の写真はちゃんと写ったままです。その代わりに栄次郎が「死神博士になっている自分の写真」を見ているんですね。

ここから考えられるのは、光寫眞館の「背景スクリーン=世界、写真=エピソード」という対応関係が成立している、ということは、様々な「世界」というのは演出して撮られた写真という作中作である、つまりはディケイドが渡り歩く様々な世界を舞台とすれば、光寫眞館は楽屋である、というメタな構成です。士がそれぞれの世界で何らかの役を当てられて衣装を変えるのも、そういう中で「役を変えて舞台に上がる」ことを示しているのではないでしょうか。
従って、舞台の上で登場人物が殺されても役者は死なないように、「死神博士」として“出演”して殺された栄次郎も楽屋=光寫眞館に戻れば元通り、という訳です。
だいたい、ドームでの対戦形式でライダーバトル、というところから始まるのも、何やら怪しい。「ライダーバトル」は『龍騎』、ドームでの対戦は『555』劇場版『パラダイス・ロスト』から借用しているようですが、「悪の組織・大ショッカーとの対決」という話には必ずしも似合いではありません。
これもいわばヴァーチャルな作中作のようなものであって、それ故に倒されたライダー達も死んでおらず戻って来たのだ、ということを示しているように思われます。

こうしたメタ構造は、多分誰かが既に触れていることとは思います。
またこれは東浩紀氏が『動物化するポストモダン』で「超平面性」として示した、異なる階層の世界が並列される構造に対応しているかも知れません(「楽屋」である光寫眞館も「舞台上」である様々な世界も、同じ『ディケイド』の物語世界として扱われている訳ですから)。ただ、それを「ポストモダン」(現代)の典型的なあり方だとする東氏の論議には疑問がある、ということです。
東氏は「超平面的」なものの例として、やはり複数の世界を渡り歩くというシナリオのギャルゲー「YU-NO」を取り上げていますけど、これ、有名なゲームだったんでしょうか? 私はそういうものにはまるで疎いんでよく知りませんけれど、そんな私でも聞いたことはある、くらいであってこそ「時代を代表する」と言えるんじゃないか、とは思います。
要するに、例えばあらゆる方向に向かって広がっている時、一部がある方向に向かっていて、しかも行くところまで行き着いているとしても、それをもって「時代はその方向に向かっている」とは言えません。それは数ある方向性の1つに過ぎません。東氏は『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめとする大ヒット作品も色々取り上げていますけれど(その考察に隙が多いというか、東氏とはまるで逆の見方も当てはまる、という指摘は数多くありますが)、マイナー作品の例は「時代動向」を語るにはあまりに恣意的なネタと思えます。

まあしかし、例えば美術史においても「その時代を代表する作家/様式」と言った時、何をもって「代表」と言えるのか、という点は色々難しいというか、通常触れられない部分ではあります。人気・他の作家への影響等々とありますけれど、絶対ではありませんし(長い間忘れられていた大作家、というのもいますからね)。
ただ、平成仮面ライダーに関しては、『ディケイド』は半年で終わることになったことは措いておいても(別に不人気故とも言えませんし)、以下のようなことは言えると思います。。
平成ライダーシリーズ第一作である『仮面ライダークウガ』は、従来の特撮ヒーロー物の常識を打ち破った斬新な番組でした(その革新性がその後反映されているかと言うと、微妙な面もありますが)。しかもこれは全く新しいシリーズとして開始され、現に高評価を得たからこそ、その後10年間続いてきた平成ライダーシリーズがある訳です。『ディケイド』はそうして確固として築かれたライダーシリーズの名がある上で、10周年記念番組として作られたものです。10周年記念はどこまで行っても10周年記念で、せいぜい10年に一度(20周年記念も同じとは限らないので、もっと稀かも知れません)の特異な出来事です。もちろん『クウガ』から『ディケイド』まで続いていること、この10年で変わったこと、それぞれの作品に特異なこと、色々あるでしょうが、こうした流れを考えに入れなければ「時代動向」は語れないのではないでしょうか。

つい話が逸れましたが、『ディケイド』の話です。士の写真がまともに写らないのも、士が「舞台の外の住人」であったために「外からに視点」で写真を写していたから、と考えると、どうでしょう。映画の舞台となったのは本当に士の世界で、写真はちゃんと写ったままです。とすれば、士の立ち位置も舞台の外から数ある舞台の中へと回収されたのではないでしょうか。士達はさらなる世界へと旅立ちますけれど、『ディケイド』の物語を生み出していた構造自体が畳まれて、話は完結しています。
いえ、1つだけ未回収の問題がありました。「世界が衝突して滅びる」ことは回避されていないといまれて、そのままです。ただ、どうやってもこれを後2回で終わるTVシリーズ本編に繋げることは困難そうです。
映画がTV本編とパラレルになるのは今までも大抵そうだったんですが、今回は本編の大きな問題(士の正体の謎)までが映画できちんと片付けられてしまっているので、単に「特別編」としては見過ごせないように思います。
さらにTVシリーズの方も妙で、いよいよこちらでも大ショッカーのアジトが出現した(このカットは映画と全く同じですね)かと思うと、その直後の予告で「本当の敵は大ショッカーではない」と言われる有様(何と哀れな悪の組織…)。「ライダー大戦が起こり世界が滅びる」というのは冒頭で予言された通りで、本筋に帰って来てはいるんですが、では大ショッカーはどうするんでしょう。それに映画とは別に士の正体を語るにも、いささか尺が足りない気がしますが。
ここで、予告の台詞の1つがどうも「剣崎…一真」と聞こえることを言っておきます。これは『ディケイド』「ブレイド編」の剣立カズマではない、『仮面ライダーブレイド』の主人公ではないか、つまり今までの世界も本物の各『仮面ライダー○○』ではなくて、『ディケイド』作中で演じられた作中作だった、というメタな構造がここでも現れるのではないか、と予想してみます。
こうなると「世界が滅びる」とは番組終了のことだ(これこそ本当の敵)、と言ってみたくなりますが、それではコントですね。まあ、メタな構造を(映画より一層)前面に出すというのは1つの話の畳み方だとは思うんですが、どちらにせよ、大ショッカーは適当な扱いで引っ込んで貰うしかないような…。そもそも幹部はアポロガイストしか登場してませんし、彼ももう死んでておかしくない役回りなんですけどね。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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