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いかなる信仰のゆえに

日本ではオウム真理教の事件の後、宗教が問題になる――もっと言ってしまえば、宗教そのものに対する否定的見解がよく見られるようになったように思います(もちろん、それに対する「あんなのは本来の宗教ではない」といった反論も飛び交いました)。大田俊寛氏によれば、宗教学という学問も「社会的な信頼をまったく失って」しまった、とのこと(『オウム真理教の精神史』、p.282)。
欧米ではその6年後、「9.11」(2011年9月11日の大型テロ事件)以降、同様のことが少なからず問題になっていたようです。

しかしこういう議論をする時、まず確認しておかなければならないことがあります。
「9.11」の件で言えば、「テロリスト」達は本当に「イスラーム信仰ゆえに」犯行に走ったのかどうか、ということです。
「相手がイスラーム教徒であった」という事実と、「“旅客機をハイジャックして世界貿易センタービルとペンタゴンに特攻する”(自爆テロ)などということは、狂信がなければできまい」という思いから、そう考えるのでしょう。
しかし、後者は別に証明されたことではありません。
会社員だって会社の不祥事の責任を取って自ら死を選ぶことがあります。
この前提についての考察を欠いている限り、その先が学問的になろうはずもありません。

さらに実は「イスラーム原理主義」というのもよく分からないレッテルです。
そもそも「原理主義」というのは、アメリカに固有の20世紀初頭に始まった、キリスト教の運動のことです。つまり「原理主義=キリスト教原理主義」です。
何となく似た点を他の宗教にも適用して、各種の「原理主義」が言われるようになったわけですが、それは必ずしも実態に沿っているわけではありません。
現実には「敵」に対するレッテル貼りになっていたりするわけですから、問題は大ありです。

小原〔克博〕 日本の一般的なマスコミなどの用語法では、戦闘的なイスラーム集団に対して、おそらく「原理主義」という言葉が使われる場合が多いと思うのですが。
中田〔考〕 もしほんとうに「戦闘的」という言葉の意味を確定して使うのであれば、それは「戦闘的イスラム集団」、あるいは「武装闘争派」などと呼べばいいわけです。つまり、武器をもって武装闘争するとき以外は使わない。
小原 つまり、こういことでしょうか。彼らがなぜ命を賭してまでう相当そうするかというと、崇高なイスラームの理想を掲げているからだ、というのが一般的な理解だと思うのですが、この「闘争的」と「イスラームの理想に忠実」の二つを切り離し、分けて考えるべきだ、と。
中田 はい。たとえば九・一一事件を考えてみましょうか。真相はよくわからないのですが、アメリカ側の発表だと、事件にかかわった人間、実行犯たちは前日にパブに行ってお酒を飲んでいるわけですね。こういう人間は原理主義がどうこういう以前に、平均的なイスラーム教徒のレベルにも達していません。ですから、もうまったく話にならない。
森〔孝一〕 しかし、「クルアーン(コーラン)」をもっていたといいますが……。
中田 そもそもイスラーム教徒であれば、クルアーンは一軒に一冊必ずありますし、自分が焼け死ぬところにクルアーンをもっていくのがいいことかというと、クルアーンも焼けてしまうわけですので、決してよいことではありません。
 (小原克博・中田考・手島勲矢『原理主義から世界の動きが見える』、PHP新書、2006、pp.44-45)


原理主義から世界の動きが見える (PHP新書)原理主義から世界の動きが見える (PHP新書)
(2006/09/16)
小原 克博、中田 考 他

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というわけで、本書はキリスト教、イスラーム、ユダヤ教それぞれの専門家がそれぞれの専門とする宗教について「原理主義」概念を検討し、それにまつわる問題を論じた著作です。「イスラーム原理主義」のレッテルが少なからず矛盾を孕むことも指摘されています。

そもそも、「9.11」後にアメリカは「テロとの戦争」を掲げてアフガニスタンを空爆しました。
世界貿易センタービルの崩壊による死者は3000人とのことですが、アメリカが殺したテロとは関係のないアフガニスタンの市民はそれよりもはるかに多いでしょう。

なるほど、アメリカ大統領は就任に当たって聖書に宣誓しますし、アメリカには原理主義運動というものがあって、学校で進化論を教えるなとか創造論を教えるべきだとかいった議論を続けています。
とは言え、一般に言われる「クリスチャン」がきちとn聖書を読んでいるとは限りません。
さてジョージ・W・ブッシュが信心深い人物だったかどうか知りませんが、もし彼が聖書をちゃんと読んだことがないとしても、聖書に描かれるような「神」を信じていないとしても、いずれにせよアフガニスタンを空爆できたかどうか、と考えてみれば……
どちらについても言えることです。


ついでに、アルカイダの成立事情につしても合間を見て勉強中。

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                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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