スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

動機の「内」と「外」

そろそろ研究会まで二週間を切ったので、発表原稿もまとめにかからねばなりません。
中止になった春の時もそうでしたが、発表内容が被りはしないものの、皆近いところから題材を取って来るのです。それだけになおさら、ちゃんとやらないといけません。
論文モードに入ってきてはいるものの、肝心な論の繋がりがなかなか思うように書けず…今日書いた分量を振り返ると、それほどでもないのに気付きますね。どうせ、後でまとめてもっと圧縮するでしょうし。
PCが壊れて、以前書いたメモ集のようなものを一部失ったのも痛手です(まとまった内容は書けていなかったものの)。

 ~~~

さて、以前『魔人探偵脳噛ネウロ』のことを書いて、久々に『ネウロ』の単行本を読み返していました。
改めて、ストーリー構成等の出来は決してバカにできない作品です。
豹変する犯人のイカれたイメージが強いですが、それ以外のキャラ造形やエピソードでも結構いい話もありますし。
が、その辺は今回の話題にはしません。

犯人の「豹変」も、「ドーピングコンソメスープだ…」とか「ボクウソついてました」(※)のように、一時期コピペ改変ネタとしてネット上でもかなり流行ったものもありました。
後半になると、ネタとしてそこまで強烈なものが少なくなりますが、犯人の主張する理屈はさらに輪をかけて意味不明になり、そんな理由で人を殺すなんて「あり得ないの一言」という状況が増えてきます。ところが、犯人が取り押さえられた後、「あの人は嫉妬してたんじゃないでしょうか」とか「被害者に心ないことを言われたのかも…」と周辺の人がフォローするケースもあるのです。
(ちなみに、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』3巻も似たような状況だったことを付け加えておきます)
(中には、犯人自身の主張自体が「真の動機」を隠すための作り話、というケースもありましたが)

どちらかが嘘、とは言えないところが、多分ミソなのでしょう。
先立っても述べたように「ひどい目に遭わされた」「あいつを殺せば金が手に入る」といった説明は一応理解できるものですが、同じ言葉が当てはまる状況に置かれても大多数の人が殺人を犯したりしないことを考えると、説得力の乏しいものでもあります。これはいわば「外的な事情」と言えます。
他方、「犯人固有の事情」を「固有の言葉」で語れば、他人にはほとんど理解できないものになってしまう可能性は高いでしょう。これが犯人に内在する「内的な事情」です。
「イカれた犯人」に限らず、誰にでも多かれ少なかれ当てはまるこうした機微を、極端にカリカチュアライズされた形でかなり上手く描いていたのではないか、と思うのです(実際、『ネウロ』においても全ての犯人がイカれているわけではなく、哀しい事情を持った人もいました)。

実は、「内的な事情」を表す独自の概念も『ネウロ』という漫画にはありました。
それが「悪意」です。

そもそも、主人公のネウロは「謎を食べる魔人」でした。この「謎」というのは人間の悪意が作り出した謎で、つまりは事件のトリックです。この謎を解き明かし、作った相手を精神的に屈服させることで、「食らう」――悪意を持つ者が全て「謎」を作るわけではないのですが、ネウロが求めるのはあくまで「人間の悪意が生む謎」です。
この「悪意」というのが「恨み」や「金銭欲」や「痴情」等々と同列の感情の一種ではなく、「犯人によってそのいずれかで呼ばれることもありうる、犯人固有の内面」であることは明らかです。

物語の後半には「新しい血族」という、「悪意の定向進化」を遂げた「新種の人間」が登場します。理屈抜きに人間の苦しむ顔を見るのが好き、という存在で、「謎」を作るのではなくネウロと敵対する展開になりますが、ここから分かるのは、「悪意」は「外的な事情」からは独立して生じうる、ということです。

そしてさらに興味深いことに、ネウロは人間の感情のことは人よりも分からず、犯人の動機などには興味を持たない、ということです。ただ合理的に謎を解くのみです。
これも、ネウロに取って悪意というのは「謎」という「食べ物」の材料であることを考えれば、自然なことです。美味いものは味わうべきものであって、頭で理解しても仕方ありません。
ちなみに、ヒロインの桂木弥子も超人的な大食いで、種族を超えた両者の接点が「食欲」というのも実に面白い設定ですが、まあ今回はこの辺で。

※ 後者については、比較的ミステリとしてフェアなネタということもあり、ここではバラさないでおきます。4~5巻にかけて収録なので、興味ある方は自分で読んでみてください。

魔人探偵脳噛ネウロ 4 (ジャンプ・コミックス)魔人探偵脳噛ネウロ 4 (ジャンプ・コミックス)
(2006/01/05)
松井 優征

商品詳細を見る


魔人探偵脳噛ネウロ 5 (ジャンプ・コミックス)魔人探偵脳噛ネウロ 5 (ジャンプ・コミックス)
(2006/04/04)
松井 優征

商品詳細を見る

                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。