オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
予備校考
私は1年間河合塾(美術研究所ではなく一般大受験組)の大学受験科(高校生クラスではない、つまり浪人生クラス)に在籍していて、秋頃から進路変更に伴って美術研究所にも入学したんですが(芸術学クラスは毎週日曜なんで、平日の大学受験科と両立可能です)、両者は見事に対照的でした。
大学受験科は時間割を区切って大教室での講義が中心です(中には受講生の少ないものもありますが)。テキストの多くは問題集形式で、毎週決められた範囲を予習して(=問題をやって)、講義はその解説です。当然、1年間で入試範囲は網羅する(英語なら文法事項は一通り、歴史なら古代から現代までetc.)ように作られていました。
一方、美術研究所では最初から最後まで、東京藝大及び本学の芸術学の入試に沿った形式での問題演習です。教室に来てから時間内で問題をやり、その後解説。朝から夕方まで1つの教室で、英語・歴史・小論文とやります。最初からあらゆる事項を含む問題で、文法事項を順次網羅的に等ということはありません。加えて10人くらいの小教室でアットホームな雰囲気でした。
それで大丈夫なのか、と思われるかも知れませんが、英語に関して言うと、1年間適当な難易度(この場合の「適当」とは東京藝大の入試基準、つまり「かなり難しい」という意味です)をそれだけ読んでいれば大概の文法事項や頻出語彙は出て来ますから、“その内容をきちんと習得していれば”大丈夫です。実は本学の先生にも河合塾美術研究所の講師をやっていたという先生がいますけれど、「最初(4月)はほとんど読めないけれど、1年間やっていると向上心のある女の子なら、大概の文献は読めるようになります」との話でした。(男の子はダメなのか? なぜ? という問題はまたの機会に)
まあしかし、この“その内容をきちんと習得していれば”というのが曲者で、当然、常にそうなるとは限らない。基礎文法もままならない子もいる訳ですからね。もっとも彼女たち(上で「女の子」と限定されているのに加えて、本学の芸術学では今やほとんど女の子ばかり、という事情もあります)は1年間ずっと予備校に行っていた訳ではないようですが。
思うに、1つには本学の授業状況に関して以前も言ったように、「今の自分の実力」と「テキストの難度」のギャップを自力で埋められるとは限らないのではないでしょうか。その点で、システム的には能力別にクラス分けして、基礎から順次進める大学受験科方式は優れているんですが、そこを教室の外で補うことに関しては小教室の方が良い面もある…と思うものの、誰に対してもそう上手く機能するという訳には行きません、やはり。
そもそも、大学受験科でも「文法の授業」はあっても、長文を前にして「どこが主語でどこが目的語かを見抜くにはどうするか」等ということはテキストには書かれていません。授業でそれを実践している先生はいて、かなりの人気でしたが。
もう1つ、予備校の限界というものも感じないではありません。結局目的は「大学入試に合格すること」ですから。「(細かく文法を考えるより)とにかく訳! って感じだった」「単語帳の訳語は全然アテにならない」という彼女たちの話を聞いていても、そう思います。要するに「合格点を取ること」が大事、土台を固めるより頂点を目標の高さにすることが優先されてしまうという訳です。
まあこういうことは「試験の結果を競う」やり方に対する批判としてよく言われてきたことなんですが、そこにさらに少しだけ付け加えておきます。美術研究所では直接出ること以外もずいぶん色々とやってきましたし、アットホームな小教室のお陰もあって、大学入試という目標に留まらない学びに「開かれ」ていた方だったと思います(私のいた名古屋校では)。いや、大学受験科方式であっても、今の塾・予備校は学生の個人的なケアまで色んなことを引き受けているみたいですね。しかし、いくらよく出来ていても、万人に対して機能する“学びの場”というのは、どうやらないらしい、ということです。(結局、何を今更な話ですが)
(芸術学2年 T.Y.)
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