スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

いつか来る終末……ではない

登山に行く時も乗り物の中で宿で、本は必須です。
9月末には(今更ながら)社会学者・大澤真幸氏の『虚構の時代の果て』を読んでいました(他にもいくつか読んでいましたが)。

増補 虚構の時代の果て (ちくま学芸文庫)増補 虚構の時代の果て (ちくま学芸文庫)
(2009/01/07)
大澤 真幸

商品詳細を見る

本書はオウム真理教事件の衝撃を受けて書かれたものです。
全ての分析を紹介はできませんが、タイトルにある「虚構の時代」というのは、「現実」の反対語は「理想」「夢」「虚構」の三つがあり、「日本社会の戦後史において、現実が照準している反現実の様相は、『理想→夢→虚構』の順に転換してきた」(P.41)という見田宗介氏の考えを受けたもので、大澤氏はさらに「夢」は中間段階であるとして「理想→虚構」の二段階で考えます。
「理想の時代」から「虚構の時代」への転換点は連合赤軍事件(1972年)にあり、オウム事件は「虚構の時代」の「果て」にある、というのが大澤氏の論の趣旨です。

しかし――
「オウム真理教に類する、いわゆる『カルト』的な教団の隆盛は、アメリカ合衆国をはじめとして、世界中で見られることである。(……)日米のテロのこのような呼応は、オウム真理教の問題を、日本にのみ見出される表層的な要因から説明しようとすることに対する警鐘になっていると言えるだろう」(P.37)と言いつつ、連合赤軍とか何とか、日本の歴史の転機ばかりを持ち出すのはなぜなのか、どうもよく分かりません。

「虚構」の時代の若者風俗の上での対応物が、まずは「新人類」(八〇年代前半)であり、ついて「オタク」(八〇年代後半)である。
 (大澤真幸『増補 虚構の時代の果て』、ちくま学芸文庫、2009、p.48)


などという記述に関しては、はたして「オタク」が時代を代表しているのか、そのことは証明されているのか、と疑問に思わざるを得ません。
以前、東浩紀氏の『動物化するポストモダン』について触れた時には言及を留保することになりましたが、東氏も「動物化」論において大澤氏を参照していて、あまり挙証なしに「オタク」を「現代」を代表するものと見なす姿勢も受け継がれているのか、と思われます。

他方で、第四章「終末という思想」では、古代から中世を経て近世・近代に至る広大な西洋思想史の観点から終末論を論じていたりします。
個々の分析には面白いものがたくさんありますが、この巨視的視点と現代日本の問題の結び付けは、十分に根拠のあるものなのかどうか…

ただ、細かい論はともかくとして、'70年代後半以降のアニメ・漫画作品には「最終戦争」やそれ以降の世界を描いたものがかなり流行ったことがあり、オウム真理教もそれらの影響を受けていたこと、そしてオウムから16年を経た今、「終末もの」は少なくとも流行ではなくなっていることは、事実としてそれなりに認められるかも知れません。
(大澤氏が挙げているのは松本零士『宇宙戦艦ヤマト』(劇場版'77)、宮崎駿『風の谷のナウシカ』('84)、大友克洋『アキラ』('82~'90)などで、武内直子『美少女戦士セーラームーン』('92~)も「最終戦争的な戦争を戦う戦士を描いていると見ることができる」としていますが、少し範囲が広すぎるかも知れません)

これをただちに「現代という時代の反映」と見なして良いかは慎重になりたいところですが、ある日付をもって到来する「終末戦争」「滅び」そして「その後の救済」を描くような終末論は、(少なくとも以前ほどの)説得力を持たなくなった可能性はあるでしょう。

終末論は全体性あるいは歴史を超えて存在と関わらせるのであって、過去と現在を超えて存在と関わらせるのではない。
 (……)
重要なのは最後の審判ではなく、生けるものたちに審判が下される時間の中の、あらゆる瞬間の審判である。
 (レヴィナス『全体性と無限』序文)


全体性と無限 (上) (岩波文庫)全体性と無限 (上) (岩波文庫)
(2005/11/16)
レヴィナス

商品詳細を見る

相変わらず同じ例ですが……『魔法少女まどか☆マギカ』のまどかは、時間を超えて過去・現代・未来全ての魔法少女を救済します。
終末と救済は特定の日付をもってやって来るのではなく、魔法少女たちは気付いた時にはすでに救われているのです。
あるいは、これを日常において新しいこと、思いがけぬことが生じているという日常への注目と結び付けることも、多分可能でしょう。
                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。