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怪人の理不尽な運命

『激走戦隊カーレンジャー』('96)と言えば、スーパー戦隊シリーズでも異色のギャグ作品でした(ちなみに、「カ~~レンジャー」と最初にアクセントを置いた発音をするのもポイントです)。
キャッチコピーが「戦う交通安全」で、敵が「宇宙暴走族ボーゾック」という時点で、ある程度は推察できるかも知れませんが…
ネタそのものの大半は説明できません(しても面白くない)のですが、たとえば敵が芋羊羹を食べると巨大化するという設定だったり…(理屈は不明です)

とは言え、終盤にはカーレンジャーとボーゾックが力を合わせて最大の敵・暴走皇帝エグゾスと戦う展開もあり、なかなか盛り上がりのあるいいストーリーだったと思います(最終戦のオチはまたバカバカしいのですが)。
それから、レッドレーサー・陣内恭介と敵の女幹部・ゾンネットとのラブコメもありましたね。

さて、『海賊戦隊ゴーカイジャー』の第14話・カーレンジャー編('11年5月22日放送)はと言うと……内容的には、あまりカーレンジャーと関係ないものでした。カーレンジャーの大いなる力も活躍することなく「あまり役に立たない大いなる力もあるってことかな」というオチでしたし。
元レッドレーサー・陣内恭介が再び登場しますが、ザンギャック女幹部のインサーンが彼に一目惚れ、自分に惚れているジェラシットを送り込んで恭介を捕らえようとする…というドタバタコメディ。
要するに内容ではなく、作風がカーレンジャー風でした。恭介が宇宙人に惚れられやすいのも相変わらずで…。脚本家も『カーレンジャー』メインライターの浦沢義雄です(ちなみに今までのところ、『ゴーカイジャー』メインライターは荒川稔久で、彼と香村純子と下山健人の三人がローテーションですね。今週の第33話では石橋大助が初登場で、今後どうなるかは分かりませんが、過去の戦隊シリーズのメインライターをあえて呼んで来ているのは、浦沢の他にはジェットマン編の井上敏樹だけです)。

…と、ここで、ちょっと興味深い話があります。仮面ライダーの方のプロデューサーである白倉伸一郎氏が著書『ヒーローと正義』で『カーレンジャー』第45話「ホントの恋の出発点」に触れていました。

 主人公は、敵組織ボーゾックの女幹部と恋愛関係にある。その恋愛を妨害した怪人・EE(エンエン)ムスビノフを、怒りに燃えた主人公レッドレーサーが倒すというのがエピソードのあらましである。
 この物語で、主人公が怪人を倒すべき正当性はどこにあるか。
「馬に蹴られて死んでしまえ」という地口があるほどだから、EEムスビノフが人の恋路を邪魔したのは万死に値する罪かもしれない。けれども、ヒーローが正義の剣をふるうほどの悪とはいえまい。
 では、悪の組織の一員だから倒すべきだという、戦争の論理が適用できるかというと、その当の敵の幹部である女性とヒーローはラブラブなのである。
 このエピソードを経て、終盤に突入した『カーレンジャー』では、ボーゾックとカーレンジャー一同が力をあわせて、もっと大きな敵を倒すさまが描かれる。シリーズのラストでは、ボーゾックの幹部たちはみんな更正し、子どもたちといっしょに仲良く学校に通ったりする。もちろん、主人公と敵幹部ゾンネットとの恋愛も実をむすぶ。
 敵も味方もニコニコの大団円。視聴者に評判もよく、子ども向け番組として模範的なラストシーンだという声さえ聞く。
 ならば、ますます疑問としなければならないのは、その最終回(四八話)のわずか三話前に倒されなければならなかったほどの、怪人EEムスビノフの罪とは何だったのかである。
 (白倉伸一郎『ヒーローと正義』、子どもの未来社、2004、pp.67-68)


ここから白倉氏は、『ないたあかおに』を引き合いに出し、この絵本の赤鬼やカーレンジャーと共闘したボーゾックのように、ことさらに「人間の味方である」ことを示さない限り、怪人や鬼は存在することそのものが悪である、という答えを導きます。
怪人は人間であって人間でないがゆえに、人間とそれ以外との「境界を侵犯する」悪なのです。

この問題については機を改めるとして、この論を踏まえて『ゴーカイジャー』のカーレンジャー編を見ると――インサーンの私情に利用されただけで何か被害を出してもいないジェラシットは倒されません(アホらしすぎてどうでもよくなっただけのような気もしますが)。
それどころか、第24話で再登場し、地球に受け入れられます(やはり、「自分は地球人の味方である」ことを示す活躍が必要になるわけですが)。ちなみにこのエピソードも浦沢脚本で、同じくくだらない話です。

さて、確かめてみると、『カーレンジャー』第45話は…というか、レッドレーサーとゾンネットの恋愛が絡む話は概ね荒川稔久氏の脚本でした。
荒川氏も『カーレンジャー』では浦沢氏に負けず劣らずバカバカしい脚本を書いていて、たとえば「ボーゾック一のヒーロー研究家」SS(スースー)パマーン「暴走戦隊ゾクレンジャー」を結成する第25話など、色んな意味で傑作です。

関係ないかも知れませんが、思わないでもありません。
浦沢氏もEEムスビノフの運命について、思うところがあったのだろうか――と。

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P.S. 記事を書いている途中でサーバが停止したかメンテナンス中となり、一部書き直す羽目になった上に投稿が遅れました。まったく面倒ですね。
                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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