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魔法少女のダークヒーロー――『魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる』

ライトノベルの紹介記事も結構書いてきましたけれど、私の読んでいるライトノベルは新人作品か、そうでなくても比較的キャリアの浅い作家の作品、巻数の少ない作品がメインですね。
理由を考えてみると、

・長く続いていて巻数の多い作品は、なかなか読み通す気力が起こらない
・皆が語っている有名作品よりも、無名のものの方が語る気力を起こさせる
・類は友と言うか(一方的ですが)、やはり新人・若手作家の作品を紹介しているサイトを見て、それで知った作品を読んでいる

2番目辺り、「読んで語りたいから語る」と言うより、「語るために読む」という倒錯の気配もありますが…もちろん、「是が非でも語りたい」という熱意を起こさせるほどの作品である場合は別です。

というわけで、今回も新人作品の紹介と感想です。
論文を書くよりライトノベルばかり読んでいるように思えるかも知れませんがまあ気にしない。

魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)
(2011/02/28)
根木 健太

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ダークな魔法少女もの、と言っても『魔法少女まどか☆マギカ』のようなものではなく(1巻の発売が今年3月11日で、時期が被っていますね)、まあパロディものですね。
主人公の望月瑠奈(もちづき るな)は普通の(?)高校一年生(この魔法少女の王道たる「中学二年生」を過ぎた年齢もポイント)だったはずですが、ある日魔族のオロバス(通称オロ)と出会い、魔法少女に変身させられます。その名も、

慟哭屍叫(デススクリーム)セレンディアナ

このネーミングと魔族の最終兵器という設定が状況を物語ります。
武器も魔法少女らしい魔法は皆無、火炎放射器を使ったり草刈り機で首を刈り取ったりとえげつない。今となってはその程度だとそう異例にも感じられないかも知れませんが(私には詳しい検証はできませんが、オタク史の通説に従えば、魔法少女が現代兵器を振るうようになったのは『魔法少女リリカルなのは』辺りから、ということになります)、終盤では敵を闇に包み、命を刈り取る魔物を召還したりする辺りはさすが。

冒頭で瑠奈が(オタクの兄に引き摺られて)魔法少女アニメ『みんなはプラナリキュア』を観ていたりと、割とメタ言及性の強いパロディで、途中で変身の仕方が携帯電話をベルトのバックルに挿し込むという『仮面ライダー555』風になったり(もはや魔法少女でも何でもない)、いかにもなネタが揃っています。
もっとも、この手のパロディネタでは『這いよれ!ニャル子さん』に匹敵する密度のものはありませんが…まあしかし、それで優劣を付けるのは早いでしょう。
ポイントは主人公の境遇とキャラ造形ですね。

「そや! セレンディアナは魔界でも伝説に近い存在! 異界の住人である人間にしか――その中でも自分の境遇や生活に何とはなしに不満や嫌悪を抱きながら、心のどこかで魔法や悪魔といった超自然的な力に憧れて、それによって変化が訪れることを願ってるひじょーにイビツな精神状態の女の子にしか扱えん力なんです! つまりは瑠奈さん! これはアンタのためにあると言ってもいい力ですわ!」
 (根木健太『魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる』、エンターブレイン、2011、p.29)


何とも無駄に細かすぎる条件ですが、瑠奈がそこまで日常生活に不満を抱いている様子もなく、この台詞が本当なのか、作中でも疑われているくらいです。魔法少女への憧れも表向きは忘れていて、「高校生にもなって魔法少女ってのは」(p.167)と言うくらいには常識的ですし。
とは言え、変身するとまず鏡を探して「悪の女幹部みたいなカッコ」でなく(表紙にある通りの)黒ゴスロリなのを確認、「よしッ! 意外とオッケー!!」(p.35)と言っていたり、セレンディアナに対する最大の不満が「(戦い方が)可愛くない」ことだったりする辺り、やはり魔法少女に憧れていた女の子なのを感じさせます。
戦いで死にかけた時、三途の川のようなところの向こうでアニメの魔法少女たちが呼んでいて、「ここを渡れば、あたしも一人前の魔法少女になれるのよ。根拠はないけど多分そうだ」(p.188)と思うところは笑えましたね。

オロが馬の姿(原寸大)をしていて扱いに困ったり、変身しても顔かたちはそのままで、気が付けば「悪の魔法少女」という噂が広まっていたりと(ちなみに正体を隠さねばいけないとかいう決まりはありません)、戦いとは無関係のところで面倒が満載で、いくら魔法少女に憧れる気持ちがあろうとこれはうんざりするだろうな、というところもよく描かれています。

つまり瑠奈の境遇は、まったく平和な日常を望んでいたのに非日常に巻き込まれた、というよりは、憧れていた非日常の世界に出会うものの、理想と現実のギャップは著しく…というもので、ある種『ハルヒ』のキョンに近いものもあります。
が、“世界の命運をかけた戦いが実質はワガママな部長の遊びに振り回されるだけ”というのに比べれば、本作は(良くも悪くも)普通のバトルストーリーと言っていいものになっています。神族と魔族の設定もオーソドックスなファンタジー風ですし、クライマックスで強敵との決戦もありますし。その点では正当なダークヒーローものという感じですね。ちなみに、ライバル(?)として神族側の魔法少女「救聖皓輝(スペクトルメシア)ソルインティ」も登場します。

そんな瑠奈の性格はと言うと…兄や魔族経ちの暴挙には暴力をもって挑むばかりか、隙を見てオロを始末しようとしたり、ソルインティの正体を縛り上げて拉致したりと、とにかく行動力があってアグレッシブ(やっぱり悪役に向いている気がしますね)。ツッコミキャラなので(あらゆる状況に対応してツッコミを入れるべく)理解と順応も早く、小気味良い感じです。
兄の友人でもある機織先輩が好き、という設定もあり、先輩もちょくちょく話に絡んではきますが、ほとんどラブコメはしてません。その辺もむしろ爽快なところですね。

戦闘シーンではパワーアップして新技を出したかと思うと決まらなかったり、立て続けにパワーアップが入ったりと、ちょっとテンポの狂うような展開もありますが、それもある程度は意図的なもののようです。

 二段パワーアップも伝統っちゃ伝統かもしんないけど、それにしたってスパン短すぎじゃない? 第一これも完全に男の子向けの方の伝統でしょ……。
 (同書、p.316)


それからもう一つ、主人公の関係者が学校の同じクラスに転校してくるのもお約束ですが、それを踏まえてちょっと捻った展開もありました。これはちょっと感心。

なお、2巻の表紙はソルインティ。
基本は同じですが、上記のような状況に対する瑠奈のアンビヴァレントな感情と葛藤もいくらか描かれます。今度は勇者ロボネタもあり。

魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 (ファミ通文庫)魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 (ファミ通文庫)
(2011/09/30)
根木健太

商品詳細を見る

                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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