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近年メジャーになった妖怪

京極夏彦氏の『塗仏の宴』は、もっぱら来歴の失われた妖怪、正体不明の妖怪を中心的モチーフにしていました。
(なおストーリーの方は、『姑獲鳥』~『絡新婦』までシリーズ過去作品のキャラクターが数多く登場、過去作のネタバレも数多く含むので注意。結末には若干腑に落ちない感もありますが)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)
(2003/10/15)
京極 夏彦

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上巻の「宴の支度」で取り上げられたのは、「ぬっぺっぽう」「うわん」「ひょうすべ」「わいら」「しょうけら」「おとろし」の6体です。
とは言え、中でも「しょうけら」辺りはそれなりにデータがあって、京極堂がかなり長い薀蓄と考察を披露します。その話は入り組んでいて、容易に要約できませんが…
その前にまずしょうけらの姿を。

しょうけら
 (鳥山石燕『画図百鬼夜行 全画集』、角川書店、2005、p.52)

京極堂の話のポイントをまとめると、

・しょうけら(しし虫)は人間の体内に住む虫で、60日に一度庚申の日の天に昇り、司命神(閻魔大王と同様に、人間の罪を裁く神)に人間の悪事を告げ口し、寿命を縮めさせる。
・そのため、庚申の日には寝ないでしょうけらが出て行かないよう見張る「庚申講」という行事がある。
・しかし鳥山石燕の描くしょうけらは逆に、人間が寝ないでいるかを見張っている。しかも外見も、退治する側とされる側が混同されているらしい。
・石燕はこの絵で、本来の目的を見失った庚申講を皮肉っているのではないか。

こうした考察は、京極堂経由でなくても調べればある程度までは分かることでしょうが、その後結構影響を与えているようです。
『宴の支度』が刊行された'98年には、桜玉吉氏が早速ネタにしていました。

しょうけら(幽玄)
 (桜玉吉『幽玄漫玉日記』1巻、1999、エンターブレイン、p.96)

「のぞいたりのぞかれたりする虫妖怪」……これだけでは何のことだか分かりませんが、ある意味で上記の話のポイントを捉えています。

しょうけら(幽玄)2
 (同書、p.106)

非常に的確なネタ化ですね。

幽玄漫玉日記1巻 (ビームコミックス文庫)幽玄漫玉日記1巻 (ビームコミックス文庫)
(2008/12/20)
桜 玉吉

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一方、柴田亜美氏はこんな感じで描いていました。

しょうけら(あやかし天馬)
 (柴田亜美『あやかし天馬』2巻、集英社、2002、p.170)

この漫画の設定では「人間の悪事」を相手にするのではなく、「妖怪世界の司法官」なので、大分オリジナルに読み替えられていますが。

あやかし天馬 1 (ジャンプコミックス)あやかし天馬 1 (ジャンプコミックス)
(2002/04/04)
柴田 亜美

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『週刊少年ジャンプ』に連載中の『ぬらりひょんの孫』ではこんな感じ。
ちょうど現在放映中のアニメでは16話辺りで倒されたはずですが。

しょうけら(ぬらりひょんの孫)
 (椎橋寛『ぬらりひょんの孫』10巻、集英社、2010、p.110)

虫の妖怪(しし虫)ということで、思い切り昆虫系に変身(まあ「しし虫」の「虫」は本来、昆虫のような虫のことではないんでしょうけれど)。

しょうけら(ぬらりひょんの孫)2
 (『ぬらりひょんの孫』13巻、2010、p.54)

ぬらりひょんの孫 1 (ジャンプコミックス)ぬらりひょんの孫 1 (ジャンプコミックス)
(2008/08/04)
椎橋 寛

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ちなみにこの漫画の場合、しょうけらを退治するのが「青面金剛」であるという設定も伝承を踏まえていますね。他に、登場人物の一人、陰陽師の花開院竜二(けいかいん りゅうじ)のモデルも京極堂みたいですし、京極氏の影響は大きいですね。。

手元にある作品だけなので、探せばもっとあるかも知れませんが…しょうけらなんて妖怪が(設定まで含めて)これだけのマジョリティを獲得したのには、やはり『塗仏』の影響はあるでしょう。
                           (芸術学4年T.Y.)

【追記】
石燕の『画図百鬼夜行』においても先行する妖怪絵巻においても、しょうけらについて解説の詞書はありません。
そして、しょうけらは道教における三尸虫であり、庚申講を道教の影響下に成立した行事である、とする文献は後世の作で、それゆえ柳田國男流の民俗学はそれを認めてません。
ただ、『塗仏』の京極堂は、「どんでん返しは一度とは限らない」、つまり文献が後世の作だからといって庚申講の起源が道教になかったことにはならないとして、思い入れによって背後に日本古来の信仰を見たがる民俗学を批判し、しょうけら=三尸虫説を念入りに論じています。
これが学界の定説にまでなっているとは考えにくい――どころかそもそも、妖怪研究者などという人自体がそんなにいません。
だからなおさら、上述の漫画が一様に描いているしょうけら解釈の元ネタは、『塗仏』に間違いないと思われるのです。

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