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相互依存した兄弟のドラマ――『妹がゾンビなんですけど!』

またまたライトノベルいきます。

妹がゾンビなんですけど! (スマッシュ文庫)妹がゾンビなんですけど! (スマッシュ文庫)
(2011/04/15)
伊東 ちはや

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「妹もの」も「ゾンビもの」もよくある(流行の?)ジャンルで、「妹とゾンビが登場する話」ならいかにもありそうですが、妹“が”ゾンビとはなんというカオス…と思うでしょうか、呆れるでしょうか。
内容はタイトルの通りです。

大鳥風貴(おおとり ふうき)大鳥姫ノ花(おおとり ひのか)は一つ違いの兄妹。
主人公の兄・風貴は平凡、というか劣等生(ただし、女顔の美少年)なに対して姫ノ花は文武両道の秀才。
しかし、姫ノ花は冒頭から「私にはお兄ちゃん以外いらない!」(p.18)と言い放つくらい兄にべったりで、風貴の方もそれには戸惑いつつも、姫ノ花と死に別れるくらいなら自分も一緒に…と思うくらいに妹に依存しています。
両親が仕事で家を空けてばかりで、放置され気味で育ったことによるという設定で、その辺兄妹関係はしっかり描かれていますね。

さて、高校に進学して三ヶ月後、姫ノ花はあっさりと交通事故で死んでしまいます。しかし、その葬式に「魔女」を名乗る女が現れ、「この薬は死者を蘇らせるものよ」「よって代償は大きなものになる」「それでもいいというのなら、あなたの手で、姫ノ花ちゃんを蘇らせるといいわ」(pp.32-33)と風貴に告げます。まさかと思いつつ実行したところ、本当に姫ノ花は蘇ってしまうのですが、彼女はゾンビと化していて…

大部分はコメディで、「ヌルホテリア星人のようになれ!」とか、ゾンビ化した姫ノ花が身体から捕食香を発していて、それを嗅いだ人間たちは「私を食べて」と群がってくるので、逆に姫ノ花たちが逃げる破目になるとか、強烈にシュールなギャグもたまにありますが、そういう思い切り笑えるネタの密度は高くはありませんね。容態を監視するため、風貴が女装して姫ノ花の通う女子高に潜入(?)する辺りは、それほどコメディとして良いとも思えず、必然性も弱い気がしますし…

ただ、終盤、人を食うゾンビと化していく姫ノ花をふたたび殺すべきか選択を迫られる風貴の悲痛な心情は、姫ノ花の捕食香が見せる幻覚による幻想的な光景とも相俟って、ネタはオーソドックスながらそれなりに見ごたえがありました。
400ページ弱、2巻も300ページ超のボリュームながら冗長さを感じさせずすんなり読めるところから言っても、筆力はあるようですね。

ところで、姫ノ花の口調なんですが、

「だから、今日こそは成し遂げたいの! それが私の、!」
 (伊東ちはや『妹がゾンビなんですけど!』、PHP出版社、2011、p.66)


機種によって表示できなかったら申し訳ありませんが、ハートマーク入りです。スペードやクラブになることもあります。兄の前ではいつもこんな感じです。
風貴の前と外とで態度がガラッと変わることを強調する演出なのかも知れませんが…イライラするほどではないものの、好みが分かれそうなポイントではあります。

それと、空野セイラさんの存在ですね。風貴が姫ノ花の通う女子高に潜入した時に出会った女の子で、姫ノ花の友人でもあり、財務大臣の娘とかいう設定まであるんですが、名無しのモブでも構わない程度の出番しかありませんでした。
ただ、2巻では父親の権力を活かして多少の活躍を見せており、どうも最初からそういう予定だったようです。1巻で一応のまとまりを見せている話(しかもデビュー作でもあり、2巻以降が出た例のまだ少ない新規レーベルでもある)でこういうのは無駄と考えるべきかどうなのか…

が、現に2巻も出ました。

妹がゾンビなんですけど! 2 (スマッシュ文庫)妹がゾンビなんですけど! 2 (スマッシュ文庫)
(2011/11/29)
伊東 ちはや

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今回はゾンビを狙うアンドロイドが登場、そのアンドロイドの悲しき宿命を巡る話がメインです。
1巻以上に強烈なギャグも少なく、オチもシリアスで、正当なドラマとしてまとめてきた感じですね。
これまた話の方向が逸れていると考えるべきか難しいところですが、(家庭環境は改善されたとは言え)兄妹の関係は相変わらず。男のアンドロイドに興味を示す妹に対し風貴が「初めてもやもやした気分を持った」(2巻、p.324)という描写もあって、先が期待できるかも知れません。

後は、ゾンビ化した姫ノ花は夜に台所で生肉を貪ったり(ホラー映画で定番の場面)、刺されても死ななかったりと、ゾンビらしくグロテスクなところもあります。
異形・グロテスク系のヒロインが好きな方は是非。
                           (芸術学4年T.Y.)

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テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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