オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
心もまた模倣するもの…
「だったら、それを研究する分にはウチ〔本学〕が一番いいんだけどね」
しかし、自分と先生以外に分野を同じくする人が一人もいないというのはやはりマイナスなわけで…
哲学科のない大学で哲学を専攻するのは、やはり厳しいのです。
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あまり余裕もないので断片的になりますが、忘れない内に映画『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』の話でも。
以下ネタバレありです。
すでに触れた通り、『フォーゼ』パートは、弦太郎が「友達では満足できない相手」に出会う、つまり恋をする話です。
(なぜか)空から落ちてきた少女の名は(生徒手帳によれば)美咲撫子(みさき なでしこ)、ショックで言語障害を起こしているのか口を聞きませんが、敵に狙われている上、何とフォーゼと同様のシステムを使って「仮面ライダーなでしこ」にも変身します。
しかし彼女の正体は、不定形の宇宙生物「SOLU」、その姿もどこかにいる美咲撫子という少女をコピーしたものにすぎないのでした…。しかも、外見だけでなく原子変換レベルで何でもコピーできるらしく、フォーゼシステムも弦太郎の使ったのを見てコピーしたのですね。
さすがに弦太郎もショックを受けますが、ユウキたちに励まされ、「俺はちゃんと失恋もしてねえ!」と、財団Xに回収されるSOLUを取り戻そうとします。
この時、「SOLUに知能はない。〔人間的に見える行動も〕反射的に真似してるだけだ」と言う賢吾に対し、弦太郎は叫びます。
「俺が笑いかけたらお前も笑う。それも反射なのか? 違うだろう? 笑うのはダチだからだ!」
これはなかなか奥の深いことです。
赤ん坊でも大人に笑いかけられると、笑って返します。これはどういうレベルで共感が成り立っているのか、というのも考察の余地のある問題ですが、そもそも「感情」というもの自体、そうして人を模倣することで学ぶのだ、という考えもあります。
ならば人間も結局は同じことです。
第一、その構造や能力まで模倣できるなら、そして人間を模倣したなら、感情や知能をもまた、模倣できて自然ではないか?
実際、王道の展開ですが、撫子は反射のレベルを超えて弦太郎に向けて言葉を語り、感情をも示します。
賢吾の曰く、「奇跡なんてない。SOLUの進化が予想以上に速かっただけだ。…ただ、それを促したのは弦太郎だろうけどな」ということですが。
―――
そこでふと、ヒロインが「無貌の神」ニャルラトホテプで、やはり普段の地球人の姿は擬態というライトノベルがあったのを思い出します。
それに、彼女が常日頃口にする真尋への恋心というのも、どこまでが本当なのやら。自由自在に変化させる事ができるのは果たして姿だけなのだろうか。もしかしたら心もホイホイ変えられるのではないだろうか。姿形だけでなく記憶まで人間に擬態できる異星人が、擬態した人間の心に引っ張られてしまう物語もあるし。
(逢空万太『這いよれ!ニャル子さん』3巻、2009、ソフトバンククリエイティブ、p.37)
本作は非常にライダーネタが多く、引用部も最後の文章は『仮面ライダーカブト』ネタです。
本家のライダーに同様のネタが再びという面もありますが、『カブト』の場合、擬態能力を持つ異星人「ワーム」は敵だったこともあり、扱いは大きく異なります。
ここで逆に、「外面をいくら“心を持った”人間そっくりにしても内面が伴っているとは限らない」と考えるなら、それは「物質からなる身体と精神はいっさい関係がない」という古いタイプの心身二元論に戻ることになるのではないか? と問われることになります。
この問題を巡ってはまた、(どちらかというと英米の)現代哲学において色々と論争がありますが。
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文字通りにスライムのような「不定形」のヒロインと言うことでは、同じくクトゥルー物ライトノベルのこちら↓の方が近いかも知れませんが。
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(芸術学4年T.Y.) テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育
コメント
No title
No title
世の中そんなもんです。
ウィトゲンシュタインじゃありませんが、哲学は大学の教室でだけ勉強するものではない、ということを今にして気づかされています。
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続『仮面ライダーカブト』――罪と赦し
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ということでしょうか。