オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
「がんばらない」という信条――『ささみさん@がんばらない』
今年もそろそろ…
まあしかし、昔の知り合いとはすっかり疎遠になていますし(上記のようなわけで私のせいでもありますが)、今の知り合いは住所を知らないことが多かったり、と……
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そう言えば以前、「サンタクロースv.s.なまはげ」なんて記事を書いていましたが、その後、民俗学者が同様の主張をしていたことを知りました。裏付けを得た思いです。
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ところで、さるところで欧文文献を前に「これは“”サンタクロースじゃないのか」「いや文脈から言って区別されている。これは聖ニコラウスと訳すべき」といった会話を聞いたことがありますが、トルコの聖人は「聖ニコラウス」、「サンタクロース」はアメリカ産の白髭の老人です。
美術書で「Saint Nicholas」なる聖人の伝説を描いた作品の話が出てきたら、それは《聖ニコラウス伝》です。翻訳者としてそこは譲れません(と、何やら勝手に専門家気取り)。
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さて、どこが本題なのかよく分からなくなってきていますが、どんどんやりたいのは山々ながら、いい文言が思い当たらず先送りにしていることの多い、ライトノベル紹介です。
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主人公の月詠鎖々美(つくよみ ささみ)は16歳、本来高校生ですが引きこもりです。
高校教師をしている兄・月詠神臣(つくよみ かみおみ)との二人暮しで、この神臣が鎖々美さんの面倒を見ています。
神臣が邪神(やがみ)三姉妹と仲良くしていたりするのを鎖々美さんが「お兄ちゃん監視ツール」で監視しており、そのために鎖々美さんのいない場面も全て鎖々美さんの一人称語り、という一風変わった形式で展開されるラブコメディ? のように最初に思われますが、途中から次第に異変が生じ……
まあ、
一部のひとにわかりやすく例えると『お兄ちゃん=涼宮ハルヒ』なのである。
(日日日『ささみさん@がんばらない』、小学館、2009、p.96)
という記述が雄弁に語っているような、日常の裏で人知れず怪事の起こるファンタジーです。
ちなみに、邪神三姉妹の名前は、
長女:つるぎ = 神臣の同僚の高校教師で32歳(という話)のはずが、外見は小学校低学年。職員室でもエロゲーをやっていたりとエロネタ・下ネタ担当。
次女:かがみ = 鎖々美さんと(本来は)同級生の16歳。いつも眠たそうにしている。
三女:たま = つるぎとは正反対で、9歳の小学生だけれど外見は大人の美女。中身は完全に子供。
と、三種の神器をモチーフとした名前です。これも、ファンタジーとしての本作の設定に関係しています。
オタクネタも多く、皆でネットゲームをやったり、そもそも世界がネットゲーム化したりと色々やります(このゲームがまた、装備品の衣服を外すと全裸になり、その場で「特殊イベント」としてストリップショーになったりと、妙な事態にばかり対応している無茶苦茶なゲームバランスだったりします)。
巻が進むにつれ、敵勢力も登場して、物語中に戦いの占める率も上がっていきます。
先に引用した設定についても真相は何度かどんでん返しがあり、鎖々美さんの状況もどんどん変化して、引きこもり脱却して学校に行くようになったり進級したり、力を失ったり、小学生の姿になった上で護法少女に変身して戦ったり、はては自ら神様になったりと波乱万丈です。
ただ、そんな中でも鎖々美さんは「がんばらない」を軸にして緩くやっているのは相変わらず。と言うか、むしろダメ人間度合いが上がっているような…
そう、「身の丈を超えたものを抱え込まない」という意味での「がんばらない」は、本作を貫くテーマ(のようなもの)です。
今月の新刊↓発売と同時に「アニメ化決定」のお知らせで、何やらアニメ化を聞きつけて出て来たような格好になってしまいましたが…
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マイナーな同レーベルの中でも必ずしも売れ線の作品とは思えませんが、はてさて…?
このレーベル、ガガガ文庫は読んだ人には好評な作品が多くて、『このライトノベルがすごい!』2012年号でも60位までに6作品がランクインという、マイナーさから考えると相当の健闘を見せましたが、中高生を対象とした「モニター」からの得票は全てゼロでした。まあ、一般書店には高確率で置いていないんだからどうにもなりませんね。
ちなみに、作者の日日日(あきら)氏は18歳で5つの新人賞を受賞してデビュー、現在ではライトノベルの各レーベルを次々と渡り歩いて、単行本にして年間10冊以上を量産しています。
(芸術学4年T.Y.) テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育
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