オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
主人公=マスコットというズレ――『犬とハサミは使いよう』
しかも、あるところでは明らかに新しくなっていました。懸賞金(最高500万円)もかかっていましたしね。
が、もう16年も経っていますし、顔も変わっているから厳しいんじゃないか…なんて話をしていたところで、年の終わりも近い31日晩に平田信逮捕のニュースが…
自主ということでした。麻原の死刑執行を遅らせるため(新たな公判のために証言が必要とあれば、麻原を慌てて処刑することはためらわれるだろう、と)という説も聞きましたが…
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ヨーロッパAMAZONのパッケージにはヨーロッパ各国のAMAZONの名が印刷してありますが…今日新しく届いたものを見たところ、
amazon.it
イタリアにもAMAZONが進出していたことを知りました。
そもそも、サイトをよく見れば他の国のAMAZONへのリンクもあるわけで、さらにスペイン(amazon.es)もあることが判明。
だいぶ便利になりましたね。
イタリア語およびスペイン語を学んでいる方は是非。
http://www.amazon.it/
http://www.amazon.es/
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さて、先日の「説明することとしないこと」の記事で、「架空戦記であれば、たとえば現代から戦国時代にタイムスリップした主人公が、あくまで現代から持ち込んだ兵器を用いて、物理法則に従って戦うのを描き、「なぜタイムスリップしたのか」などは問わない」という手法の話をしました。
以下のライトノベルも、読み始めると最初はそんな話に見えます。
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なお、本作は第12回えんため大賞優秀賞受賞作です。4巻の発売も決定していて、同期の新人の中では一番のヒットのようですね。
内容はというと…主人公の春海和人(はるみ かずひと)は一人暮らしの高校生で、四六時中本を読んで過ごしている読書バカですが、ある日強盗にあっさりと射殺されてしまいます。しかし、あの世には本がないことから奇跡の復活……ただし、犬(ミニチュアダックスフント)に生まれ変わって。
とは言え、犬では本が読めないと悶絶するのですが、そんな彼の声をなぜかテレパシーで聞くことができ、彼を飼うことになったのが黒服の女・夏野霧姫(なつの きりひめ)です。ことあるごとに和人をハサミで脅していたぶる危険人物ですが、実は和人も大ファンの人気作家・秋山忍(あきやま しのぶ)その人でもありました。
和人が犬に生まれ変わったことについては、執念で生還しようとして、捨てられていた犬の身体を摑んでしまったらしき描写はされていますが、それ以降は死後の世界など出てくることもなく、また霧姫に和人の声が伝わる理由もまったく不明のままです。
とりあえずそういう設定として、以降は超常現象の起こらない世界でミステリ風の話を展開していく……のかと最初は思われるのですが…(まず1巻の主題は、和人を殺した強盗捜しで、大枠としてはまとまったストーリーになっています)
しかし後半になると…ありえない技能や武器を振るって向かってくる敵、そして武術と、タイトルにもあるハサミを使って戦う霧姫、展開される超人バトル…
「え、そんなのがありうる世界観だったの!?」と度肝を抜かれます。例に漏れず和人もツッコミキャラなので、「ありえないだろ!」とツッコミますが、そもそも世界観レベルの異常さはツッコめば済むことなのかどうか……
2巻では和人の妹・円香(まどか)がどんでもないものを持ち出し、そんなものが家の中で使われていたのに「気づけよ俺」と言う始末。
とまあこのように、「真面目」と「不真面目」の境をラジカルに揺さぶってくる作品です。
ちなみに「ミステリ風」の方もかなりの無茶苦茶さで、大立ち回りの末に取り押さえた相手が犯人ではなかったり、いてもいなくてもどうでもいい黒幕(?)が正体告白してきたりと、まともな謎解きへの期待は見事に裏切られます。
全体としてはやはりコメディですね。ツッコミ役である主人公の立場が非常に弱い(霧姫以外には言葉も通じないし、霧姫もまともに話が通じないことが多い)こともあって、収拾の付きそうになり掛け合いが多いのが特徴ですが…
「じゃあ、質問をするわ」
『質問ですが……』
俺も聞きたいことは山ほどあるからな。
とにかく、この現状を正確に摑まなくては。
「ええ、アナタのやる事は簡単よ。私の質問にイエスかノーで答えればいいの」
『分かった』
「間違った回答の場合、マイナス一ポイントね。」
『……具体的には?』
おいおい雲行きが怪しくなってきたぞ。
「一ポイントごとに皮一枚」
『何の皮を!?』
「良い回答の場合、一ポイントあげるわ」
『質問に答えろ!! ……で、具体的には?』
「一ポイントごとに皮一枚を切られる権利をプレゼント!」
『あれ!? やっぱり死んだの!? ここ地獄なの!?』
(更伊俊介『犬とハサミは使いよう』、エンターブレイン、2011、pp.84-85)
ちなみに、パロディ系の小ネタも豊富です。
ところで、本作は『このライトノベルがすごい!』2012年号では、(新人賞作品の紹介の他に)「HERO」の項でも取り上げられていました。
すっかり学園ものが多くなって冒険もバトルもしないヒーローですが、彼らは進化を続け、遂に次なるステージへと突入! そう、更なるヘタレ方面に! えー説明すると、内面のヘタレが飽和してもう外見でもヘタレるしかなくなったためか、もはや人間をやめているヒーローが多数出てきました。
(『このライトノベルがすごい!』2012年号、宝島社、p.24)
実は和人が強盗に射殺された時、居合わせた霧姫を庇った格好になっていることもあって、ライトノベルの定番らしくヒロインたちが主人公に惚れる描写もありますが、主人公が犬なだけに「いいのか?」とシュールに感じるばかりです。
まあ要するに、主人公がマスコットであるというのが根源的なズレを象徴しているんでしょうね。
(芸術学4年T.Y.)
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