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救うためには倒すしかない――『仮面ライダーカブト』

出願先によって様々な形式の出願書類を記入するのも面倒な作業でして…何だかやけに複雑なものもあるのです。

 ~~~

何度か触れてきた(1, 2)『リトル・ピープルの時代』の特撮ヒーロー――とりわけ平成仮面ライダーに関する長大な分析も、『仮面ライダーカブト』('06年)にはほとんど触れていませんでした。

 2年にわたる試行錯誤を経て平成「仮面ライダー」シリーズ第7作『仮面ライダーカブト』では白倉伸一郎プロデューサーのもと3部作〔引用者註:『アギト』『龍騎』『555』の3作のこと〕の継承が図られることになる。総勢7名(劇場版を含めると10名)の仮面ライダーが、それぞれの目的のために抗争しながら地球外生物ワームを駆除していく――3部作で培われた要素を最大公約数的に踏襲した本作を経て、平成「仮面ライダー」シリーズは第2のターニング・ポイントである第8作『仮面ライダー電王』を迎える。
 (宇野常寛『リトル・ピープルの時代』、幻冬舎、2011、p.305)


これだけです。
つまり、“ヒーローのあり方”をラジカルに捉え直したものと宇野氏が評価する「3部作」を「最大公約数的に踏襲」しているという、まずまず肯定的な評価であるものの、改めて語ることは特にない、と。
実際、ライダーたちが互いに「抗争」するのは『龍騎』の、またその中の一部は複数の人間が同じライダーに変身するというのは『555』の主題です。また、『カブト』の主人公である天道総司(演:水嶋ヒロ)料理の名人で、家では毎日妹に料理をふるまっており、その味は敵のスパイをも改心させますし、料理で人の心を操る能力を持った敵と勝負したこともあります。しかし、こうした「食」を通した生活への内在というのも『アギト』の主題でした。

では、『カブト』独自の設定というと、敵である地球外生命体・ワームが人間に擬態するという設定と、戦闘のギミックであるクロックアップですね。
ワームは外見のみならず、その記憶と人格まで、完全に特定の人間をコピーします。すなわち、殺された人間の人格もワームにコピーされて生きているわけで、それを巡るドラマが何度も展開されました。終盤には重要登場人物がワームだと発覚したり、「もう一人の天道」も登場したりして、本物と偽物の入り乱れるパラノイア的状況が出現していました。
クロックアップは時間を加速できる能力で、周りのものが全て超スローモーションになる演出は見事。しかも後半に登場する上位能力「ハイパークロックアップ」過去にタイムスリップすることまで可能で、タイムパラドックス的な状況も示唆されていましたね。

ただ、この両者とも伏線としては放棄された感が著しいのも事実です。仮面ライダーダークカブトたるもう一人の天道もたんに「昔天道に擬態した偽物」扱いに留まりましたし、タイムパラドックスに関してはほぼ抹消されています。はっきりとタイムパラドックスを描いた劇場版『GOD SPEED LOVE』は本編とはパラレル扱いになり、本編における過去のことに関してはほとんど説明にならないような説明で終わりましたし…
この辺の放棄っぷりも、いまいち語りにくい一因かも知れません(宇野氏にとってどうだったかは分かりませんが)。

問題はワームに擬態された人間ですが…実はその扱いについては、序盤に答えが提示され、それは最後まで変わることはありません。
つまり、擬態された人間の人格は確かにワームの中に生きている一方で、人間を殺して成り代わるワームの人格も存在しており、通常はワームの人格が人間の人格を操っている格好になります。ですから、ワームに囚われている“擬態された人”の人格を助けるためにも、倒すべきである――これが答えです。人間の人格を生かして助ける方法は決して存在しません。
ただし、ワームであることが発覚しても生きることを認められた登場人物もいますが、その人物の場合、決して本物を殺してすりかわったのではない、というところがポイントです。人を殺すという罪を犯したかどうかは、人間とワームという種族の壁よりも絶対的な「善悪の基準」です。
この意味で、『カブト』は善悪をそれほどラジカルに問い直しているわけではなく、むしろ「悪」を自明視しています。その点も、「変身の再定義」「正義/悪の再設定」を読解の軸に置く宇野氏があまり語らない理由かも知れません(ちなみにこの二つの課題は、村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」にそれぞれ対応する、とされています)。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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